『ジャグリング無双!〜伝説のボーリングピンを継ぐ者〜』
世の中には“どうしてそれを極めた”と言いたくなる人がいる。たとえば、ジャグリングを極めし男、陣内ルイ。
高校の文化祭で「じゃがいも3つを宙に浮かせて調理して同時に出す芸」を披露してからというもの、彼は“空中調理人”の異名を持ち、出禁になった学園も少なくない。
そんな彼が、今日も朝から公園で練習していた。
「いける! 今度こそ“8個ボーリングピン逆立ち回転式ジャグル”が完成する!」
空中を猛スピードで回る8本のボーリングピン。そのうち一本が彼の頭に当たり、地面に突っ伏す。
「……いけなかったな……」
そこへ現れたのは、町の劇団「チーム・ミミズ」の団長・樽井。
「ルイくん! 君を探してたんだよ! 助けてくれ!」
「また公演がキャンセルされたんですか?」
「いや今回は違う! 明日の市民祭で急きょ“ジャグリング大決戦”なる謎の競技が開催されることになってさ! うちの劇団が出場しないとスポンサーが降りるって!」
「ジャグリングでスポンサーってどういう関係です?」
「それが…協賛の果物屋が“みかんを5個同時に投げる男”に惚れ込んじゃって…! 優勝条件が“ジャグリングで最も観客の心をつかんだ者”になった!」
「急すぎるルール!ていうかそれ、芸術点高すぎます!」
それでもルイは引き受けた。なぜなら彼のポリシーはこうだ――
“空中に投げたものに悔いはない”
そして迎えた本番、ステージには様々な“ジャグラー”が集まった。
・唐揚げをジャグリングして皿に盛るおじさん
・キュウリを両手に持ってリズムを刻む青年
・なぜか常に泣きながら焼き芋を回すOL
「この町、ジャグリングの才能が変な方向に進化してる…!」
ルイは登場前、深呼吸をしていた。背後では団長・樽井が緊張で鼻笛を鳴らしている。
「ルイ! 頼むぞ…うちは団員の半分がアドリブで転ぶだけの芝居しかできないんだ!」
「安心してください。僕もアドリブは、ピンを落とす方です」
ステージに立ったルイは、静かにジャグリングを始めた。まずは3本のピン、そこから4、5、6…観客が「おお!」とどよめいたその時、
「それでは追加ルール! 本日限定、最後は“感動で泣けるジャグリング”を披露してもらいます!」
場内が騒然となる。
「……感動で泣けるジャグリング!?」
ピンを持ったまま静止するルイ。目が泳ぐ。そして、閃いた。
「ピンの代わりに……母の形見のブロッコリー、父のボウリング靴、妹のスマホスタンドを使う!」
「いや、それ泣くのお前だけじゃない!?しかも妹のスタンド勝手に持ってきたの!?」
それでも始めた、ルイの“家族構成ジャグリング”。まさかの私物の回転に、観客の感情は完全に混乱。
「ブロッコリーが空を舞うたびに、おふくろの味が目に浮かぶ……」
「ボウリング靴が回るたびに、父の帰宅が遅かった理由が明らかになる気がする……」
「スマホスタンド……妹がYouTuberになりたがってた……」
なぜか全員が涙した。
そして大喝采。ルイは見事、優勝を果たす。
「お前、本当に感動させるとは……!」
団長が涙を拭くと、ルイは深く頷いた。
「ジャグリングとは、空中に想いを投げる行為です」
「いや、今うまいこと言おうとしたろ!?」
こうして、町の“感動系ジャグラー”として名を馳せたルイは、今日も公園で練習を続けている。
その手には、なぜか6つのレンコン。
「次は……根菜系ジャグルで世界を取る!」
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