第151章 和泉市:イズミノカミの古墳とマイペース戦争
和泉の朝は、土と芝とカラスの鳴き声で始まる。
田園と住宅が混在する土地の中に、突如として姿を現すのが古墳群。円形あり、方形あり、鍵穴型あり。だがそんな歴史的風景の中で、一人だけやけにのんびりした神様が今日も転がっていた。
「は〜〜……風がええなぁ……」
それが、イズミノカミ。和泉市を守る、古墳と歴史を愛する神様である。
彼のスタイルは「とにかくマイペース」。願いも叶えるが、スピード感は重視していない。「結果さえよけりゃ、ええやろ」が信条である。
だがこの日、彼に突きつけられたのは「スピード勝負」の願いだった。
【願い】
「息子の自由研究がまったく進んでません。どうか助けてください(母・疲労困憊)」
「ふむ……ええよ。まずは昼寝から始めよか」
──開始5秒で寝る神様。母の願いは、遠い。
午前11時。
ようやく目覚めたイズミノカミは、現場へと向かう。
対象の小学生・コウタくん(小学4年)は、和泉市立図書館の一角で原稿用紙を前に悶絶していた。
「『和泉の古墳について調べよう』って書いたのに……もう3時間なにも書けてない……!」
「よう頑張ってるやん、えらいえらい」
「だ、誰!?」
「古墳系神様、イズミノカミ。安心せえ、今日は“ちゃちゃっと自由研究”をテーマにしたいからな」
「ちゃちゃっと!? できるの!?」
「うん。テーマ変更や。“古墳のまわりで昼寝してみた”でどう?」
「えぇぇぇぇぇ」
午後1時。イズミノカミはコウタくんを古墳公園に連れ出した。
「なにしてんの……?」
「君、今“実地調査中”や。ほら、この墳丘の傾斜……寝心地最高やろ?」
「……たしかに、ふかふか……」
「昼寝の所要時間、約20分。起床時の気分、“まぁまぁよい”。ほら、書けること増えたで」
「なるほど……こういうアプローチもありか……!」
コウタくん、なぜか感動。
神様の誘導により、「古墳と人間の昼寝適正」なる実験テーマが完成した。
午後3時。
コウタくんがレポートを書き始めたその隣で、神は笛の練習を始めた。
「ピィ〜〜〜〜〜〜〜」
「うるさい!集中できない!!」
「おっと、すまんすまん……古墳の“謎の穴”から出土した笛やねん。調査協力中やで」
「せめて音量しぼって!」
「神笛、ボリューム調整機能ないんやわ〜〜」
うるさくて集中力が削がれるが、なぜか“静かじゃない古墳調査”という副テーマが加わり、レポートが厚くなっていく。
「不便すら材料にする、それが学びや」
「……かっこいいこと言ってるけど、地味に迷惑だよ!」
夕方。
レポートは完成。「古墳で昼寝をしてみた結果、人はやや前向きになる(調査人数:1名)」という、わりと独創的な一作ができあがった。
「これは……思ってたんと違うけど、なんか達成感ある……!」
「やろ?それが“古墳的成長”ってもんや」
その瞬間、母親からメッセージが届く。
《提出できそうですか!? こっちは胃痛が限界です!!!》
「だ、大丈夫だって返して……」
「わしのスタンプでええか?」
「神スタンプ!? あるの!?」
《💤🪨✨「古墳にすべてを委ねよ」》
「ややこしいから普通に返信してぇぇぇぇ!」
夜。
イズミノカミは再び古墳のふもとで寝転びながら、今日のまとめを書いていた。
《本日のご利益:
・自由研究達成(方向性:斜め上)
・親の胃痛 → 未解決
・笛の音量問題 → 神器のため仕様》
「……まぁ、全体としてはうまくいった部類やな……」
そう言って、彼はまたすぅっと目を閉じた。
風に吹かれた笛が、どこかの穴から「ピィ〜〜〜〜」と響いた。
──明日もたぶん、彼はマイペース。
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