第123章 寝屋川市:ネヤガワノカミの願い
──平和的に叶えます。でも平和って、意外とドタバタです。
寝屋川市の静かな住宅街。その中に、まるで町内会の掲示板のように控えめに佇む祠がある。そこに祀られているのが、住宅地の守護神・ネヤガワノカミ。穏やかで控えめ、でも願いはしっかり受け取る。
この日も、朝の通学路にちょこんと座るその祠の前で、龍希が深いため息をついていた。
「神様……あのさ、うちのクラス、今度の町内清掃、またもめそうでさ……誰も“ごみ拾い係”やりたがらないんだよ」
「ふむ、揉めごとは、住宅地最大の敵じゃな」
ふわりと現れたネヤガワノカミは、控えめな笑顔でぽんぽんと肩を叩く。
「安心せい。平和的に解決するのが、わしの得意技じゃ」
「本当? でも平和的って、具体的にどうすれば……?」
「まずは“ごみ拾い”のイメージ改善じゃな。聞くだけで面倒そうじゃろ? ならばこう呼ぼう。“宝探しミッション”」
「……うわ、ちょっとワクワク感出た」
そこへ、無理に人前でがんばらないタイプの日葵がのそのそ登場。
「おはよう……神様、なんか妙案出てる?」
「日葵くんも参加決定じゃ。“宝探し”は一人より二人、二人より三人が盛り上がる」
「まぁ……“燃えるゴミを探せ!”って書いたら、子供たちは乗りそうだよね」
「そうそう、ゲーム感覚じゃ」
さらに、周囲の空気を敏感に察する敏暉もやってきた。
「神様、おはようございます……あれ? 今日はもう解決モード?」
「敏暉もナイス登場。そなたには“隠しアイテム”を配置してもらおう」
「隠し……?」
「住宅街のどこかに、特製の“ネヤガワノカミ公認・黄金のごみ袋シール”を隠すのじゃ。見つけた班には、アイス券進呈じゃ!」
「それ、ただの商店街のスタンプラリーでは……?」
「細かい理屈は不要。平和が保たれればよいのじゃ」
──そして当日。
住宅街の一斉清掃は、一転して大人も子供も大はしゃぎの“宝探し大会”に姿を変えた。
「燃えるゴミ発見ー!」
「こっちはプラごみだー!」
「シール出たー!アイス!アイス!」
いつもの無表情気味の日葵も、気づけば他の班と張り合い、敏暉は周囲の盛り上がりを的確にフォローしていた。龍希は最初から最後まで「これ平和なの!?」と笑いっぱなし。
最終的に住宅街はピカピカになり、清掃後のアイス引き換え所には長蛇の列ができた。
その様子を遠くから眺めながら、ネヤガワノカミは縁側に正座して茶をすする。
「ふむ、争いは避ける。だが競い合いは悪くない。住宅地とは、こういう平和のかたちじゃ」
夕方の住宅街に響くのは、アイスを頬張る子供たちの笑い声と、カランコロンと鳴る自転車のベルの音。
「神様、平和って案外……騒がしいんだね」
「うむ、それが一番よい形じゃ」
ネヤガワノカミは満足げに小さくうなずいた。
──今日もこの街の平和は、静かに、そして賑やかに守られている。
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