【bon31:群馬県_八木節と“勝負を挑みがちな奴ら”】
「エンヤーコラセー ドッコイセー♪」
祭囃子が響き渡るのは、群馬の熱い夜。
提灯がきらめき、勇壮な八木節に合わせて、太鼓の打ち手が魂を込める。
そして踊りの輪の中心には――またしても、雄大。
「おい拓朗! 今こそ勝負だ!」
「はあ!? 何の勝負!?」
完全に空気を読まない男、雄大は言い放った。
「八木節のこの力強さ! これはもう……ダンスバトルしかねえ!」
「なんでそうなる!? 群馬の人たち“八木節=格闘技”じゃないからね!?」
周囲が「また始まったぞ……」という顔で静まり返る中、
登場したのは和彦。
目前の課題を黙って解決する実行派。
「……なら俺がやろう」
「おぉぉぉぉ!? まさかの参戦!?」
その横から、優しく登場するのが知早紀。
失敗談から学ぶタイプで、今回も例によって手にスマホのメモ帳を構えていた。
「前に私も“八木節で片足ケンケン盆踊り”やって転びましたから……気をつけてくださいね」
「その情報どう扱えばいいの!?」
「エンヤーコラセーッ!」
太鼓がドン!と打たれた瞬間、雄大と和彦、なぜか両者構えた。
「踊りだって、心のぶつかり合いだろ!?」
「違う、文化の共有だよ!」
しかしもう誰も止められない。
見守る小百合が、例によって頭を抱えながら呟く。
「これ、群馬の人にほんっと謝った方がいい……」
一方、冷静に後ろで状況を見ていたのが英志。
他人の感情を吸収しやすいが、今は完全に“見て見ぬふり”モードに突入。
「……なんかもう、ツッコむよりも空気を吸ってるだけでしんどいな……」
そんな空気の中、伊代がスッと輪の中に立ち入った。
彼女は、自分の目標に真摯に取り組む人物。
今回の目標は明確だった。
「全員、輪に戻って、“普通に踊る”。以上」
鋭い言葉に、場の空気が一瞬凍る。
「……はい」
「……うす」
踊りバトル、まさかの“体育会系先輩”の一喝で即終了。
そして再び、「ドッコイセー!」の掛け声が響く。
輪は戻り、太鼓の音も整い、空気が一つになっていく。
踊りの途中、雄大が小さく呟く。
「……最初からこうすりゃよかったな……」
拓朗がこそっと隣で返す。
「でもまあ、お前のおかげで……盛り上がったのは、確かだな」
「マジで!? じゃあまた次も勝負――」
「黙れ!」
全員から同時にツッコまれた。
群馬の空に、「エンヤーコラセー!」の声が気持ちよく響いた。
(bon31:End)
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