第四章『心の成長』(04)
【物語る修理】
リコーダーを直していた小村美奈穂は、修理中も絶えず自分の話をしていた。今日は祖母の話、昨日は犬の話。
だがある日、隣でファゴットを修理していた野村伊覚耶がぽつりと言った。
「……それって、あなたの“音”みたいだね」
「え?何が?」と首を傾げる美奈穂に、伊覚耶は工具を置いて静かに微笑んだ。
「話すたびに、ちょっとだけ周りが笑う。安心して、作業できる。たぶん、それも修理の一部だよ」
その言葉に、美奈穂はふふっと笑って、「じゃあ、今日も話すね」とリコーダーの頭部を拭きながら語り続けた。
いいなと思ったら応援しよう!
楽しんでいただけることが一番の喜びです。いつもご覧いただき、ありがとうございます!これからも、皆さんと一緒に素敵な時間を共有できるように、より一層努力していきます。