それ、押したつもりなかった飲み物
昼下がりの公園。
気温28度。
少し歩いたあとで、喉がカラカラだった私は、
公園の入り口にある自動販売機に吸い寄せられた。
「冷たい麦茶……いや、レモンティーもいいな」
「気分的には、微炭酸のアレかな……」
考えながら、ボタンを押す。
チャリンチャリンとお釣りが戻る。
ガコン。
出てきた缶を見た瞬間──
「…………えっ? あんた誰?」
~第一章:押した記憶のないボタン~
自販機のドリンクラインナップには、
やたらカラフルな缶が並ぶ。
オレンジ、緑、青、銀、白。
その中にひときわ地味な、
「高麗人参ドリンク(微糖)」
みたいなやつが混じっている。
私「いやいや、押してないって。麦茶押したよね?」
→ よく見ると、隣接してる。ボタン間の余白ゼロ。
このとき私の頭をよぎったのはただ一つ──
「もっかい買おうかな……」
~第二章:捨てるには惜しく、飲むには微妙~
問題は、その“押したつもりなかった飲み物”が、
決して不味くはないという点。
不味くはない。
ただ、今の気分じゃないだけ。
私「……まぁ、いっか」
→ プシュッ
→ 一口飲む
→ 「あぁー……そうじゃないんだよなぁ……」
この“絶妙なズレ”が、地味にメンタルにくる。
~第三章:「思ってたのと違う」シリーズの洗礼~
・みるくコーヒーかと思ったらブラックだった
・ジュースかと思ったらスポーツドリンクだった
・ミルクティーだと思ったら無糖ストレートだった
・温かいと思ったらキンキンに冷えていた(逆も然り)
自販機の魅力は、気軽に買えることだが、
その裏に潜むのは、“意外性”という名の罠である。
~第四章:でもなぜか、誰にも文句を言えない~
「おい、間違えたぞ」と言いたい気持ちはある。
でも相手は機械。
ボタンは確実に反応しただろうし、表示も見えていた。
つまり──
誰にも文句言えない=自分が悪い。
この自己責任の空気感が、じわじわ効いてくる。
しかも近くに人がいたりすると、
(「あの人、高麗人参好きなんだ……」って思われてるかも)
と、謎の羞恥心が追加される。
~第五章:「次は失敗しない」と思ってまた失敗する~
翌日。
私はまた同じ自販機の前に立つ。
「昨日は失敗したから、今日は慎重にいこう」
→ ボタンをしっかり確認
→ 一歩下がって、全体を見る
→ 「よし、今度こそ麦茶!」
→ ガコン
出てきたのは──炭酸水(無味)。
「……ちょっと! 麦茶の上だったじゃん!!」
指がワンテンポずれてた。
~第六章:絶対に失敗しない方法を考える~
真面目に対策を考える。
① 事前にどのボタンか確認
② 飲みたいものを声に出す(恥ずかしい)
③ 一度深呼吸してから押す
④ 左手で押してみる(利き手だと勢いが出すぎる)
……そこまでして自販機と向き合う人間。
どうしてこうなった。
~第七章:そして、結局コンビニに行く~
自販機に敗北し、私は近くのコンビニに入った。
「やっぱりラベルを手に取って見られるって、いいよね……」
「冷たさも選べるし、種類も多いし……」
レジに持って行くと、
レジのお兄さんが微笑む。
「それ、新商品のやつですよ〜。試してみてくださいね」
あったけぇ……人間って……!
結論:
自販機は“気軽”だが“油断禁物”
押し間違いは“地味な絶望”を生む
飲みたい気分とのズレが一番つらい
機械に文句を言えないから、自分で納得するしかない
結局、“人間のレジ”が安心する
~最終章:また自販機に戻る日~
でも、不思議とまたやってしまう。
次の日、また暑さに負けて
公園の自販機の前に立つ。
「今日は大丈夫。しっかり見て押すから」
→ ガコン
出てきたのは、
まさかのホットココア(5月なのに)
私「季節感……?」
自販機、それは己の反射神経を試すマシーン。
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