『星空コンサル大作戦』
深夜の田舎町。
川のせせらぎ、虫の音、そして――
「うわぁ!また失敗したあああああああ!」
星を撮ろうとして自分の鼻の穴をアップで撮った、天体オタクの椎名が発狂した。
僕はその様子を見ながら、むしゃむしゃとカップ焼きそばをすする。
「……三日連続、鼻の拡大写真て逆に才能だよな」
「笑いごとじゃないよ蓮見くん!明日“七夕星空マーケティング実践講座”があるんだよ!」
「何それ怪しい」
「いやマジで真面目なイベント!地元の町おこしの一環なんだよ!」
そう、僕らの住む「星見沢町」は、天の川がよく見えることで知られる小さな町。しかし近年、観光客は減り、空き家と空き星ばかり。
そこで椎名が提案したのが――
「星空×コンサル!“天の川の見方を指南するマーケター”として売り出す!」
いやもう、意味がわからない。
次の日、町役場の公民館にて。
“椎名星太郎の星空コンサル講座〜見えない星も売ります〜”と書かれた謎の横断幕の下、椎名が星型のサングラスをかけて登場した。
「皆さん、星を見て何を感じますか!?」
沈黙。
「それはですね、“可能性”なんです!」
客席の半分が帰りかけたが、町長(唯一の参加者のひとり)が拍手したので、なんとなく会は続行された。
「さて、こちらに“天の川マップ2025”をご用意しました!」
椎名が配ったのは、手描きの地図。川の流れが唐突に“笑顔”の形をしている謎のアート。
「えーと、この“天の口”って何?」
「川の入り口です。見上げた時に星が“しゃべってる”感じがしてエモくない?」
「エモいって言いたいだけじゃん」
途中から、町の名物“星見せんべい”の試食コーナーが始まり、参加者は急増した。
しかし。
「このせんべい、どこが“星”なの?」
「焦げてるところが星っぽいでしょ?味はふつうにしょうゆ」
「星要素が“焦げ”ってヤバくない?」
「むしろ“燃えてる”感がある!」
「それたぶん、苦情くるやつ」
クライマックスは“実際に天の川を見に行こう!”ツアー。
参加者たちは山道を登る。蚊に刺され、足を滑らせ、誰かの足音がタヌキと間違われて一騒動。
ようやく見晴らしの良い丘に到着。
椎名が腕を広げた。
「ここが!天の川スポットNo.1、“星空の広場”です!」
――だが、その瞬間。
空に黒雲が立ち込め、まさかの雷雨到来。
全員、ズブ濡れで退散。
翌日。
町役場には苦情のFAXが山のように届いた。
「星が見えない」「せんべいが湿気ていた」「講師がサングラスで目を合わせない」
椎名は机に突っ伏した。
「……俺、コンサル向いてないのかも」
「今さらかよ」
「でも、一人だけ褒めてくれた人がいた」
彼は一枚の手紙を差し出した。そこには、こう書かれていた。
昨夜、雷に打たれて転んだ拍子に空を見上げたら、
一瞬だけ星が見えました。あれは一生忘れません。
また、企画してください。星空、好きになりました。
僕は思わず噴き出した。
「それ、事故のついでじゃん!」
「でも、伝わったんだよ!俺の星愛が!」
「違う意味で一生忘れられないだろうな……」
数週間後。
椎名は“星空応援団長”として町の公式マスコットキャラになっていた。
ただし、正式名称は――
『ゴー☆グル星人(非公認)』
何もかも、ズレている。けど、星だけはちゃんと見てる。
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