第五章『音楽会当日』(04)
【演奏が繋げたもの】
曲が進むほどに、誰もが笑顔になっていった。
一勤の電子キーボードは、LEDがリズムに合わせて光り、観客の子どもたちが「きれい!」と声を上げる。
チェンバロの横山荘子は演奏中にもかかわらず、一瞬だけ目を閉じ、音の余韻に微笑んでいた。
それを見た卓伸が思わず「いいな」と呟き、笑いながらフルートを続ける。
音の中には、彼らがこの一ヶ月間に込めたものがすべて詰まっていた。失敗も衝突も、黙っていた言葉も――全てが音になって流れていた。
最後の一音が教室に消える。
その瞬間、拍手が爆発した。先生方も、保護者も、目に涙を浮かべていた。
中にはスマホでそっと撮影していた父親が、演奏後に「ありがとう」と小さく呟いた。
桃音は指揮台で深く一礼し、顔を上げると、全員に目をやった。
誰もが、やり切った顔をしていた。
その夜、大翔は“修復オーケストラ記録帳”に最後の一文を記した。
『楽器を直したのは、きっと自分たちだった。
音が鳴るたびに、誰かの心もまた、少しだけ前へ進んでいた』
終
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