第87巻 茨木市:イバラキノカミの願い
大阪府茨木市。
梅田にも京都にも出やすくて便利。けれど、地元にいるとなんとなく“ほどほど感”が心地よい。
そんな茨木には、「願いを素早く叶える」元気な神様がひそかに暮らしている。
名は――イバラキノカミ。
とにかく動きが速く、反応も早い。
悩みを口にした瞬間、すでに対応されているという謎の“タイムラグゼロ”神である。
さて、今回の主人公は、茨木市役所に勤める公務員、勇樹。
彼は典型的な「慣例重視タイプ」であり、
ファイルのインデックスにこだわりすぎて2課の佐々木に怒られることもしばしば。
「はぁ……たまには“ひらめき”とかで動いてみたいわ……」
ある日の昼休み、ふとつぶやいたその瞬間――
「おっけー、わかったっ!」
耳元で軽快な声が響いた。
「誰!?」
振り返ると、ショートパンツにランニングシューズ、頭に“いばらき”のハチマキを巻いた少年(?)が、全力で走りながら空を飛んでいた。
「イバラキノカミっすー! いま願い聞いたんで! もう対応したんで!」
「対応って、何を!?」
「市役所の自販機、2台ほど“自由選択モード”に変えといたんで!」
「関係ないっ!!」
だが、その後。
不思議なことに、勇樹のまわりで直感的な出来事が次々起こるようになる。
・朝の会議で、何も考えずに発言したらなぜか拍手される
・入力ミスした書類が“理想的な提案書”に自動補正されていた
・ランチで迷って選んだメニューが、課長の好物と完全一致し、「最近センスあるな!」と褒められる
「あれ……もしかして俺、今ノッてる……?」
そんな彼のもとに、ふわっとイバラキノカミ再来。
「でしょ? もう“ひらめきモード”入ってるから! 今ならジャンケンでも3連勝くらい余裕!」
「神様って、そんな軽快な存在だったの!?」
ところがある日、問題が起きる。
勇樹、勢いで“新システム導入案”を即決し、上司に提案。
そのシステム、予算3倍、導入5年先、誰も使わないという“三重苦”案件だった。
「あ……やっちゃった……直感が暴走した……」
落ち込む勇樹のもとに、イバラキノカミが現れる。
「ドンマイ! でも次、いける!」
「軽っ!!」
「ていうか、それ出したせいで、逆に“今の案の良さ”が浮き彫りになったから、むしろ感謝されてたよ!」
「副産物!? それ副産物扱いなの!?」
結果的に、勇樹の“爆速ひらめき人生”はなんだかんだで周囲の評価を上げ、
「意外とチャレンジ派」という新ジャンルで市報のインタビューを受けることとなった。
掲載タイトルは――
「直感力で茨木を変える!」(※本人は困惑)
イバラキノカミは、今日も走っている。
神社の境内を、商店街を、そして市役所の裏口を。
誰かが願ったその瞬間、
何かが、もう“実行済み”になっているかもしれない。
願いが来たら、反射的に叶える。
それがイバラキノカミの流儀。
──完──
いいなと思ったら応援しよう!
楽しんでいただけることが一番の喜びです。いつもご覧いただき、ありがとうございます!これからも、皆さんと一緒に素敵な時間を共有できるように、より一層努力していきます。