第21話「神話か科学か?それが問題だ」
大学の見学を終えた翌日——
アルキメデスは、校庭の隅でひとりベンチに座りながら、ノートを開いていた。
その手元には、研究所でもらったノートと、
図書館で借りた『ギリシャ神話』と『科学の歴史』。
—
「神々が雷を操る時代から、電気を計測する時代へ……」
—
そこにやってきたのは、科学好きの吉澤。
「まだ何か気になってるの?」
「うむ。どうやら、わしの時代における“神話”と、
現代の“科学”は、似ているようで決定的に違う」
—
「神話は、なぜを“神の意志”とする。
科学は、“因果”によって説明する……
では、“なぜ人は信じるのか”という問いには、どちらが応えるのか?」
—
「……めっちゃ哲学的じゃん」
—
そのとき、松井が割り込んでくる。
「じゃあさ、“祈ったら風が止む”って信じるのと、
“高気圧が近づいてる”って知るの、どっちが安心する?」
—
アルキメデスはしばらく考え——
そして、ゆっくりと笑った。
「両方とも、人の心に寄り添う答えであるな」
「わしは長らく、真理とは“理”のみで捉えるべきだと思っていた。
だがこの時代では、“信じる力”が“観測の仕方”すら変えるようだな……」
—
吉澤が、ふと尋ねる。
「じゃあさ、アルキメデスさん。神話と科学、どっちが正しいの?」
—
その問いに、アルキメデスは迷わず答えた。
「どちらも、“人が世界を理解しようとする試み”に変わりはない。
違いがあるとすれば、それは“立脚点”だ。
神話は“心の拠り所”であり、科学は“確かめる術”だ」
—
「……かっこいいこと言うなぁ」
—
その日の午後、アルキメデスは図書室のホワイトボードにこう書いた。
「科学とは、神話の隙間を埋める“人の知恵”である」
—
そしてその下に、自分で描いた雷神ゼウスと電気の配線図。
—
理科部の部員がその絵を見て言った。
「……新ジャンル、“理系神話”じゃん」
—
その夜のノートには、こう記されていた。
《神話と科学》
・どちらも、世界を理解する“道”である
・科学が答えられぬ問いを、神話が照らすこともある
・人の心は、どちらも必要とする
・わしは、どちらにも魅せられている
(第21話 完)
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