『たけしと全自動おじさん』
町内でも有名な“聞き分けのない男の子”たけし(小学3年)は、今日も朝から絶好調であった。
「おかーさーん!なんで牛乳は白いの!?水と混ぜたら透明になる!?ならない!?教えてよー!」
「……お母さんは白衣の科学者じゃないの」
玄関で寝転がりながら、ついでに妹のランドセルに魚肉ソーセージを詰める。妹は泣いた。母はため息をついた。
「たけし、いい加減にしないと“全自動おじさん”呼ぶわよ」
「はーん?出たその設定。“何でも勝手にやっちゃう大人”でしょ。どうせママの脅しかたが進化しただけじゃん」
「……言ったわね」
その午後。放課後の公園に現れた。
――白シャツにネクタイ、紺色のチノパン。片手には買い物カゴ。もう片方には電動ドライバー。
その人物は、にっこり笑って名乗った。
「こんにちは。全自動おじさんです」
「ほんとに来たーーーーっ!?怖ッ!!」
そのおじさん、たけしの横に座るや否や、静かにポケットから何かを取り出した。
それは“自動スケジュール管理表”。A3用紙にして6枚綴り。未来のたけしの生活が、分刻みで記されていた。
「17:00 帰宅。17:01 ランドセル置く。17:02 靴を揃える。17:03 “ごめんなさい”と一回言う」
「いやこっわ!なんでオレの反省予定まで決められてんの!?」
「全自動ですから」
その日から、たけしの周りで不可解な“自動化”が起こり始めた。
● 鉛筆が1.5cm削られた状態で朝の机に置かれている
● 宿題が“答えだけ先に間違って書かれている”という謎のトラップ
● カレーのルーが絶妙に足りない
● ゲームが「自動セーブ地獄」でプレイ時間10秒に固定
「これはもはや嫌がらせレベルのオートメーション!」
翌週、ついに耐えかねたたけしは、町内の駄菓子屋で“秘密会議”を開いた。
「全自動おじさんを止める方法を考える!出席者は…オレと…オレだけ!!」
独り言が高度になってきたたけしだったが、その夜、事件が起きた。
たけしが自室で作戦ノートを開いていたそのとき、部屋のドアが自動でゆっくり開いた。
現れたのは――
「こんにちは。全自動おじさんです。お布団、自動で敷いておきました。おやすみなさい」
「いや!今日くらい自分でやらせてよおおお!!自立心が育たないィィィ!」
だが、ある晩。ついにたけしは“勝利”を手にする。
「ただいまー……」
と、元気なく帰宅すると、全自動おじさんが玄関で待っていた。
「どうしたのですか、元気がありませんね」
「……今日、テストで0点だった。ママ怒るだろうなって」
「……そうですか」
その夜、たけしの机の上には、全自動おじさんからの手紙が一枚。
《たけし君へ
自動的に何でもしてあげるのは簡単です。
でも、本当に大事なのは「自分でやってみよう」と思えること。
0点を取ったことより、それを人に話せた君の方が、すごいと思います。
明日から“半自動おじさん”になります。自分でやりたいことがあったら、どうぞ止めてください。》
次の日、たけしは初めて、自分で机を片付けた。
消しゴムが出てきた。おやつの煎餅も出てきた。そして……テストの答案用紙。
「よし、まずは“20点を目指す”って書いとくか。手書きで。ちゃんと」
彼の心に、小さな“自動成長プログラム”がインストールされた瞬間だった。
いいなと思ったら応援しよう!
楽しんでいただけることが一番の喜びです。いつもご覧いただき、ありがとうございます!これからも、皆さんと一緒に素敵な時間を共有できるように、より一層努力していきます。