第22話「歴史博物館に、わしの胸像!?」
秋のある日——
2年B組は校外学習で、県立の歴史博物館を訪れた。
「なあなあアルキメデス、今日は“昔の偉い人”の展示があるってさ」
「む……“偉人”とは誰のことだ? ソクラテスか? ピタゴラスか?」
—
バスの中でも落ち着かず、興奮気味のアルキメデス。
だが彼自身、「自分の名前が出てくる」可能性には気づいていなかった。
—
館内はひんやりとして静か。
一行は順路に沿って進み、やがて“古代ギリシャ”のコーナーに入る。
—
そこにあったのは——
「アルキメデスの胸像(複製)」
そしてその横にはパネルが立てられていた。
「古代ギリシャの天才数学者・物理学者。浮力の法則“アルキメデスの原理”を発見したことで知られる……」
—
「…………」
—
一瞬、時間が止まったように思えた。
「……それ、アンタじゃね?」
松井がぽつりと言う。
—
アルキメデスは、無言で胸像の前に立ち尽くしていた。
大理石を模したレプリカの顔。
険しい眉。深いしわ。少しクセのある髭。
——そして、何より見覚えのある、自分そっくりの表情。
—
「わし……か……?」
—
展示パネルの下に、小さな言葉が添えられていた。
“彼の知は、今なお世界を支えている”
—
アルキメデスの目から、すっとひとすじの涙が流れた。
—
「……こんなにも……この名が、大切に残されていたとは……」
—
周囲の生徒たちも静かに見守っていた。
「なんか……ちょっと感動したわ」
「本物のアルキメデスが見たら、びっくりだろうな〜」
「いや……見てる気がするぞ」
—
その日、アルキメデスは展示室の隅でしばらく座り込み、
ノートに何かを静かに書き続けていた。
—
《過去と未来の間に》
・人は、記憶されることにより、生き続ける
・わしの名は、ただの文字ではなく、“橋”であった
・時を越えて、誰かの中に残ること
・それは、最も静かで、確かな“永遠”だ
(第22話 完)
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