【bon45:埼玉県_秩父音頭と“矛盾だらけの完璧”】
埼玉県・秩父。
山々に囲まれたこの町に降り立った一行の第一声は――
「……あっつ!! なにこれ、盆地のサウナ!?」
啓の叫びに、周囲のセミが「あ゛あ゛あ゛〜」と答えた。
蝉の声も体温高め。秩父の夏は情熱的だ。
そんな中、町の広場では「秩父音頭保存会」の準備が始まっていた。
「えー、本日は秩父音頭の練習会にようこそ〜!
初心者の方も、見てるだけの方も、どうぞ輪の中へ!」
軽やかなマイクの声。
その中に、すでに輪に入ってる瑛明の姿が。
「もういる! そしてなんかめっちゃ溶け込んでる!」
はづきが小声で驚くと、真優加が説明した。
「瑛明くん、人を引き立てるのが生きがいだから……
たぶん今、“他人の踊りが映えるポジション”を探してる最中」
そんな彼に、保存会の一人が声をかける。
「お兄ちゃん、ええ感じやな! その“控えめステップ”、逆に目立っとるで!」
「控えめにしてるのに!?」
誠心がやや不満気に、ちょっとだけ前に出る。
「僕も踊ります。未来を見据えて行動します」
「いや、誰も“将来設計型の踊り”求めてないから!」
葉二偉がツッコミそうになったが、
誠心の踊りは不思議なバランスで輪の流れに融合していた。
“個性と調和”の融合。
それがこの町のリスペクトの形だった。
保存会のリーダー格・おばあちゃんが、テンポよく手拍子を入れながら言った。
「この音頭はね、“みんな違ってみんな盆”なのよ〜」
「個性を否定しない文化ですね」と真優加が頷くと、
葉二偉が少しだけ目を伏せてつぶやいた。
「……内なる闇を抱えてても、踊っていい?」
「闇があるほうが味が出るって、わしらの代表が言うとったよ!」
あっさり肯定されてしまい、葉二偉が小さくうなずいた。
そのうち、輪の中に見覚えのない青年が入り込んできた。
「おいおい、あの子誰? 服装が……あれ戦隊モノのTシャツじゃない?」
確かに、明らかに盆踊りモードではない。
だが――
「おーい! そのステップ、面白いな! “秩父ニューウェーブ”じゃん!」
保存会メンバーが速攻で受け入れた。
「この町、包容力すごくない?」と美琴がポツリ。
その横で、勇者・雄大が感心したように言った。
「……なるほどな。間違っても怒られない。
むしろ、面白かったら“新しい型”として残る文化なんだ」
拓朗がそれを聞いて、首をかしげた。
「それってつまり、全部アリってこと?」
「いや、全部アリじゃない。“全部を活かす”んだ」
と、保存会の会長(75)がさらっと答えて去っていった。
秩父音頭、それは“未完成な自分ごと受け入れる練習”だった。
だからこそ、完璧を求めすぎず、ズレも失敗も自然に笑い合える。
輪になって踊ること自体が、すでにリスペクトの形なのだ。
夜風に団扇が揺れ、町の提灯がちかちかと優しくまたたく中――
勇者・雄大が言った。
「おい、これ、ラスボスの倒し方より大事じゃないか?」
誰も否定しなかった。
(bon45:End)
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