第3話 池袋駅の駅神様
池袋駅の地下はまるで迷路だ。通路が右へ左へと分かれ、出口は一体いくつあるのか数える気すら失せる。
そんな迷宮の天井のどこかに、池袋駅の駅神様は腰を下ろしていた。
丸眼鏡をかけたインテリ風だが、実際は方向音痴。地図を片手に首をひねっている。
「ええと……サンシャインシティへは東口……いや、西口? んん……」
そこへ観光客らしきカップルが現れた。ガイドブックを開いては首をかしげ、あっちへふらふら、こっちへふらふら。
「……よし、助けるか」
駅神様はそっと息を吹きかける。すると、カップルの足元に一匹の鳩が舞い降りた。鳩はまるで案内人のようにスタスタと歩き出す。カップルは「ついて行こう!」と声を上げ、そのまま正しい出口へ導かれていった。
「ふふ、鳩くん、今日もありがとう」
駅神様がにっこりすると、今度は反対側の通路でサラリーマンが頭を抱えていた。
「池袋西口公園ってどっちだ……! 待ち合わせに遅れる!」
駅神様は慌てて地図を開いたが、線だらけの通路に目がくらむ。
「ま、またか……。ごめん、私も迷った」
結局、駅神様はそのサラリーマンのスマホをそっと震わせ、地図アプリを開かせる。サラリーマンは「あっ! ナビがあった」と声を上げ、ダッシュしていった。
駅神様は頭をぽりぽりとかきながら、ぽつりと呟いた。
「……人も神も、迷うときは迷う。池袋だもの」
そう言って、駅神様は今日も迷路の天井から人々を眺め続けるのであった。
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