🚬禁煙チャレンジ・パニック🚬
月曜朝七時、サラリーマン佐々木浩二(四十歳)は、自宅のベランダで最後の一本を吸い終えた。
「今日から……禁煙だ!」
妻に何度も言われ、健康診断の医師にも脅され、ようやく決心したのだ。
出勤途中、駅の喫煙所に立ち寄りそうになるが踏みとどまる。
「ダメだダメだ……今日は吸わない……!」
だが、職場に着いた瞬間、強烈な眠気とイライラに襲われた。
会議中、後輩が言う。
「佐々木さん、今日顔色悪いっすね」
「だ、大丈夫だ……禁煙中なんだ」
「え、マジすか! じゃあ昼に吸いましょうよ、一緒に」
「いやいやいや! 誘うな!」
昼休み、弁当を食べたあと無意識にポケットを探っていた。
「あ、タバコがない……」
代わりに持ち歩いていた飴を口に放り込み、何とかしのぐ。
午後の商談。客先の応接室に入ると、相手の机にタバコの箱。
(うわぁぁぁ誘惑!)
話をしている間、頭の半分は「吸いたい」でいっぱいだ。
「佐々木さん、資料のこの部分ですが――」
「え? あ、はい、吸いたい……いや違う!」
相手が苦笑する。
「禁煙中ですか?」
「ばれました?」
「僕も去年やめました。ガムとナッツで乗り切りましたよ」
「ナッツか……」
帰り道、コンビニ前の喫煙所でサラリーマンたちが一服している。
(吸いたい……でもここで負けたら全部無駄だ)
浩二はポケットの飴を噛み砕き、コンビニでナッツを大量購入した。
翌日。机の上にガムとナッツと飴が山積みになり、同僚に笑われた。
「佐々木さん、それ禁煙じゃなくて間食地獄ですよ」
「いいんだ、吸うよりマシだ!」
だが二週間後、体重が三キロ増えていた。
「あら浩二、ズボンきつくない?」と妻。
「禁煙の代償だ……」
「じゃあ次はダイエットね」
「えぇぇ……」
禁煙は成功した。しかし、その代わり浩二は“間食マスター”という新しい称号を得てしまったのである。
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