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なぜプロジェクトは止まるのか?~仕事のタッチタイムに注目する~

先日、高速道路入口で、カーナビを見ながら、「?」と思いつつも一歩立ち止まれず、「きっとこっち方面だ」と思い込んだ結果、高速道路入口で反対方面に向かってしまい(逆走ではありません)、ものすごい勢いでゴールから遠ざかり、さらには戻ってくるのに大渋滞に巻き込まれるという散々な目に遭った北本です。

逆流と滞留でとても流れの悪い移動をしたわけですが、流れというと、道路以外にも、血液然り、トイレの水然りなど、滞りが生じるとロクなことが起きないものが多いものです。


止まっていた道路事業がようやく完成

前々職では工事の施工管理を、前職では工事の計画や用地買収をしていた私ですが、先日、約15年前に住んでいた街を訪れると、長年止まっていた道路事業がようやく終了し、街並みが一変していました。「用地買収がスムーズに進んだんだ!」と思った私ですが、公共事業に詳しくない人からすると、「時間かかりすぎ!」と、感じるかと思います。
そんな用地買収を伴う公共事業について考えてみると、これほど仕事の総時間の中に占めるタッチタイム(価値を生んでいる時間)の割合がわずかな仕事は珍しいかもしれません。
しかし、それもしかたがないことです。用地買収は行政が強制的に買収するのではなく、一軒一軒交渉を重ねる任意契約によって進められます。加えて、親族間の財産の話も絡んでくるため、全員との合意形成には長い時間を要します。土地収用という強制力のある手段もありますが、そうそう簡単には行使されないのが一般的です。

私が初めて担当した用地買収の仕事では、約10軒の住宅裏にある共有名義の通路で、相続の発生により約50名の権利者から同意を得る必要があり、とても苦労したのを覚えています。

そんな用地買収の仕事ですが、住民目線で考えてみると、結果として、最初に立ち退いた人からすれば、「もっと長く住めたのに」と思う人もいるでしょうし、最後まで残った人からすれば、ご近所さんが少しずつ減っていき、周りがフェンスで囲まれるという、つらい状況になると思います。
行政側も、土地の管理コストや、事業完成による効果発現の遅れにより、税金の無駄使いとなります。

常識を疑うことで見える可能性

ではもし、用地買収を工事直前の短期間に集中できたらどうでしょうか。
住民の負担、税金の無駄使いを圧倒的に減らせます。
「用地買収には時間がかかる」「協力的な人から順番に立ち退いてもらうしかない」というのは、もしかすると思い込みかもしれません。
むしろ、合意がもらえそうにない人にも納得してもらうまで、じっくりと時間をかけるほうが、最終的には早く終わるかもしれません。
どんな仕事にも、タッチタイム以外の無駄な時間は必ずあるはずで、多くの業界で、仕事の総時間に占めるタッチタイムは1割以下だと言われています。
タッチタイムをさらに効率化するのは大変なことですが、無駄な待ち時間や手戻りの時間を減らすことは比較的簡単ではないでしょうか。もしそれができれば、タッチタイムの割合が増え、生産性が向上することになります。

交渉を短期間で終わらせる鍵

相手との交渉が制約となる仕事の場合、いかに交渉を短期間で済ませられるかがカギになります。
そのためには、相手の立場になり切って相手の気持ちを考え、何をどう伝えれば納得してもらえるのか、交渉の事前準備がとても重要です。
 
以下は、相手の立場になって考えるための4象限考察です。
人は変化を求められた時に、プラス/マイナスを考えるはずです。
相手の立場に立って、変わる場合のプラスとマイナスだけでなく、変わらない場合、つまりいまのままでいることのプラスとマイナスまで考えれば、相手に何を伝えるべきかを準備できるのではないでしょうか。

例えば、私が担当した約50名の権利者がいる土地の買収では、「仲の悪い親族と同じ土地の権利を持っており、そのことには、いっさい関わりたくない」と、話を全く聞いてもらえない状態の人がいました。しかし、時間をかけて何度も話をしているうちに、このままでは、仲の悪い親族と同じ土地を共有している状態がいつまでも続いてしまうという、変化しないマイナスを解消したいという方向性が見えてきました。最終的には、お互い顔を見ずに登記を整理できる良い機会になるという変化するプラスの気持ちが大きくなり、なんとか協力をいただくことができました。

もし、あの頃に変化の4象限の考え方を知っていれば、「ちゃんと説明すれば納得いただけるだろう」という思い込みがあるままに交渉を進めるのではなく、相手の立場になって相手の困りごとをちゃんと考えることができたかもしれません。数年をかけた用地買収の仕事を、短期間で完了できたのではないかと思います。
 

執筆者プロフィール 
北本篤志(きたもとあつし)

大手ゼネコン、地方自治体に勤務していた元土木技術者。長年未解決でややこしい問題が多い公共事業にはTOCが特効薬だと感じ、2023年にゴールドラットジャパンに入社。趣味はスケボー、スキー、個人発明。三児の父として子育てにも思考プロセスを活用中!