見出し画像

漫画家アシスタント物語 古い話で章 〈29〉 銭勘定じゃアニメは続かない!

 
《 写真上: 前回と同じウイタさんのデスクです。中央にあるトレース台を使ってアニメ原画が描かれます。あの「〇ケモン」を制作中なのかも? 》
         < この「古い話で章〈29〉」は、文庫本約7ページ分 >

 
 
「古い話で章」は、独立した「章」ですので、「諦めま章」の続きではありません。 無料で、各話、お楽しみいただけます!
 
ただし‥‥ 各話が連続していますので、
「古い話で章〈1〉」からお読みいただく方が、よろしいかと思います。
 
はじめての方は、
「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!

 
 
               その54

    《 漫画家アシスタントが・・・韓国アニメ界へ!? 》


アニメ画の仕事で最初にやるのは「 中割 」といって、原画と原画の間を数枚の絵で補う仕事です。

例えば、コップを持った人物( 原画1 )がそのコップを口に持って行く( 原画2 )シーンで、コップが口に運ばれるまでの数カットを、「 原画 」を確認しながら( トレースしながら )描いていく仕事、それが「 中割 」です。
 
ウイタさんは、韓国への出張を依頼された時( 20代の後半 )にこの仕事をマスターして原画を描くようになっていました。

もうすっかり一人前のアニメーターになっていたウイタさんは、韓国での技術指導者として派遣を依頼されたわけです。( 飛ばされた )

実際は、この事を条件に再就職が許されたようなものでしたが‥‥ ウイタさんは、不満を言うでもなく韓国へ旅立ちます‥‥‥‥
 
韓国では当時( 1980年代 )は、主にアメリカ製のアニメの下請けをしていました。
 
仕事は忙しく、バブル景気の頃ですから収入も多かったそうです。 そして、韓国の物価の安さもあって、経済的にはかなり余裕が出来ました。
 
数年の仕事で、ソウル市内に分譲マンションを買った時に日本の社長から‥‥

「 アニメやってる奴でマンション買えるなんて‥‥ たいしたもんだ! 」
‥‥と驚かれたそうです。
 
 
「 『 〇キラ 』を描いたよ 」
 
突然、ウイタさんが言いだした話に私は驚きました‥‥‥‥
 
「 え? 〇キラ‥‥? 」

「 そう 」

「 〇キラってあの『 ◎KIRA 』ですか? 」

「 そう 」

「 す‥‥凄いじゃないですか!! 」

「 出来は滅茶苦茶悪かったけどね 」
 
アニメにもいろいろあるわけですが、その中でも「 〇ヴァ 」や「 〇トレイバー 」などメカニックな作品はアニメーターにとっては高度な技術とスピードが要求される大変な仕事です。
 
その上、特に「 劇場版 」というやつはクォリティーが高く、たった一枚の原画に8時間かかってしまう事もあるほどの厳しい仕事なのだそうです。( 劇場版の原画は一枚3000円~4000円 )
 
それにしても‥‥‥‥
 
一部分に過ぎないとはいえ、なぜ劇場版『 ◎KIRA 』を下請けの‥‥‥‥ それも韓国の会社で‥‥‥‥

「 よっぽど忙しかったんだろうね‥‥‥‥‥‥ 約束よりも2週間も遅れて仕事が来てさ、それを『 あと2,3日で完成してくれ! 』って! 」
 
本来なら10日かかる仕事をたったの2,3日で仕上げなくてはならない‥‥‥‥ まったく無茶な話です‥‥‥‥。
 
 
「 ‥‥んなもん出来るわけないでしょ! 」

「 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 」

「 韓国人スタッフが3日間徹夜して必死で描いた絵をチェックも出来ないまま、大急ぎで日本へ送って‥‥‥‥ 」
 
依頼した日本の会社は、その出来の悪さにさんざんクレームをつけて来たそうですが‥‥‥‥
 
「 元々、2週間も遅れて仕事を送って来たんだから! 」
 
この最悪のシーンがそのまま劇場公開されるわけです‥‥‥‥‥‥
 
私は、そのシーンが是非見たいものだと思うのですが‥‥ 残念ながら、現在の映像( ビデオ版 )は、その部分が修正されていますので‥‥ 見ることは出来ません。
 
ウイタさんたちの血のにじむような3日間の結晶は、無残に完全破棄されて‥‥ 良かったのやら悪かったのやら‥‥‥‥‥‥
 
 
 
 


ウイタさんのトレース台を撮影したものです。原画の用紙には、キャラクターが色指定と共に描かれています。そのタッチは正確で洗練されてます。思わず「凄い」って、興奮しちゃいますが‥‥本人は、「こんなのに驚くのかい?」‥‥と、いたってクールです‥‥‥‥2015年5月、撮影

 
               その55

    《 漫画家アシスタントが・・・銭勘定を反省!? 》

 
アニメの原画は一枚の単価が決まっているので、手早くより多く枚数を制作した方が稼げます。

中には、下書きもなしに描いてしまう猛者もいるわけです。

雇われ仕事もいつしか独立し‥‥‥‥ フリーのアニメーターになったウイタさんは、決して早く仕事の出来る人ではなかったので、収入は伸びず苦労したようです。

世の中がバブルだろうと、ヒットアニメが世の中を騒がせようと、ギャラが増えず、生活できず‥‥‥‥ 結局、辞めていく若者が沢山いる業界なのです。
 
 
「 自分の描いたアニメなんて観た事ないね 」
 
元々、アニメに憧れや夢を持って入って来たわけではないので、完成したアニメを鑑賞する事などなかったウイタさんです。
 
「 本当は、ちゃんと完成したフィルムを見て確認するべきなんだと思うよ、それがプロってもんなんだと思う‥‥‥‥ 」
 
そう言って、自分の姿勢を反省するウイタさんは、苦そうにコーヒーを飲みます‥‥‥‥
 
「 元々、アニメーターになりたかったわけじゃないしね‥‥ 」
 
20代は漫画家への道を夢中で歩んでいた‥‥ それなのに、アニメを描いている自分‥‥‥‥
 
心底、『 アニメ馬鹿 』には、なり切れなかったのかも知れません。

「 でも、仕事はしっかり時間をかけて丁寧にやる‥‥ それだから評価がもらえていると思う‥‥ ただ、採算度外視で一日で3千円、4千円なんて日もあるけどね 」( 苦笑 )
 
ウイタさんがフリーになって、もう24年になります。
 
私は、お代わりのカルピス( ドリンクバー )を飲みながらウイタさんに質問します‥‥
 
「 フリーって、会社にいる時よりも稼げるんですか? 」

「 そうだね‥‥ 1カット1500円が、フリーだと2000円‥‥ ただ、電気代とか光熱費は自分で出さなきゃいけないけど 」
 
ここで‥‥‥‥

最近のアニメ事情を少し‥‥‥‥

「 今では‥‥ アニメも韓国や中国に、依頼しているケースが多いそうですが‥‥ 」
 
「 とっくの昔から下請けに出しているよ 」
 
「 つまり、『 メード・イン・チャイナ 』とか『 メード・イン・コリア 』のアニメが日本で上映されているわけですね」
 
「 そうだね、技術的にも優れた人が多いよ。 中国は人材が豊富だから当然、上手い人も多いんだよね‥‥ ただ‥‥ 」
 
「 ただ‥‥? 」
 
「 ただ‥‥‥‥ 国民性というか‥‥‥‥ 20年も前からやっているのに優秀な監督は出て来ない‥‥『 メイド・イン・〇〇 』で凄い作品ってあんまり無いでしょ? 」
 
「 そうですね‥‥ 確かに‥‥ 聞きませんね 」

「 最初から『 金 』の計算をしているからね‥‥ 韓国なんてものすごく昔からやってるんだけど‥‥ 上手い人は沢山いるけど、すぐ『 金 』計算しちゃうから‥‥ 」
 
「 ‥‥‥‥ 」
 
「 手数料がいくら、給料がいくら‥‥ ってね‥‥‥‥ 」
 
「 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 」
 
「 アニメの仕事は、最初から『 金 』の計算してたら出来ないし‥‥ 続かないよね‥‥‥‥ 」

 
 

さて‥‥

次回の「 古い話で章〈30〉」が、この「 章 」の最終回になります。

そして、その次からは「 漫画家アシスタント物語 」の最後の「 章 」が始まります‥‥ 
  
いよいよ‥‥ 終わりの始まりです。

 
 
 
 
     「 漫画家アシスタント物語 古い話で章〈30〉」へつづく・・・・
                 「古い話で章〈28〉」へもどる‥‥
                        「もくじ」 へ‥‥
 
 
 
 
 
 

 ⇩⇩ 輝くバラの画家、村田先生が童話作品で創作大賞に挑戦! ⇩⇩

 
 

    ⇩ ⇩ ⇩  私の応募作品もよろしく!  ⇩ ⇩ ⇩

 
 
 
 
 


いいなと思ったら応援しよう!

yes 年金生活者にとって、とても嬉しいご支援! 感謝申し上げます!