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まばたく月

それは、まるでカメラのシャッター
レンズは24ミリのを並べて2つ
最奥に鎮座する灰色の記憶領域
写し撮るのは、世界と人生

それは、まるで健啖家の大きな口
一日平均1万7000回の咀嚼
嚥下するのは、絡めた景色と感情
眼窩の底に広がる心を満たす

今日もシャッターは絶え間ない
思い出を残すのに余念がない
すぐに劣化してしまうから
写真の色は褪せてゆくばかり

今日も健啖家は忙しない
食べないと生きた気がしないから
思い出の腹持ちは悪いから
消化されて消えてゆくばかり

他の誰かも、そうなのだろうか
もっと素敵な写真を残せているのか
もっと良い思い出を食べているのか
溜息と天を仰ぐ夜明け頃

そして、目が合った
「何を小さなことを悩んでいるのか」
一月に渡るまばたきの終わりに
そう、呆れたように瞑目する月と

目を閉じることを忘れていた
滲んでいく空が教えてくれる
何の意味も無いことだった
瞬きの数を競おうなんて

私はちっぽけだ
残せるものは、きっと少ない
それでも、言葉で残したいものは沢山ある
最初から、誰かと競う暇など無かったわけだ

「ありがとう」
淡い暁に沈んでいく月へ
しばらくアナタは背を向けて
また、一月を費やして瞬くのだろう

その間にも、私は残すよ
褪せていくものを惜しみながら
忘れていくことを嘆きながら
何度も忙しなく瞬きながら




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