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「お盆休みが存在しない世界で──ボラと存在をめぐる思索」

盆休みが終わったらしい。
けれど僕にとっては、そんなものはまるで他人事だ。僕の働く業種は年中無休。そもそも「土日祝に休む」という感覚すら薄れている。

そんな今日。世間では“悪夢の月曜日”と呼ばれる盆明けの朝、僕にとってはたまたま巡ってきた休日だった。せっかくだから、とフェリーに乗り、住む島から15分ほどで行ける小さな離島へ向かうことにした。

ところが、港に着くと意外な光景が広がっていた。フェリー乗り場は人であふれ、チケット売り場には長い列。定員150人と書かれた離島行きのフェリーは満席だった。出港時間ギリギリに乗り込めたものの、空席は二階の屋外デッキだけだった。

「どこが連休明けの朝なんだ」と、思わず小さく愚痴を漏らした。

名所の桟橋に着くと、大勢の人で賑わっていた。足元の海をのぞけば、イッテンフエダイやイナクー、ルリスズメダイ、アミメフエダイなど、色とりどりの魚たちが泳いでいる。僕はほとんど名前が分かるが、観光客にとっては「何の魚だろう?」と首をかしげる存在だ。

ところが、そこへ群れをなしてボラが現れると、子どもから大人まで一斉に「あ、ボラだ!」と声を上げた。ボラの知名度の高さには、思わず笑ってしまう。



世間では盆が明け、日常が戻ったらしい。株式市場も最高値を更新したとニュースが伝えていた。けれど僕にとって、今日はただの休みなのだ。お盆休みという概念そのものが存在していないかのように過ごしている。

ボラを眺めながら、周りを人間を見渡す。ここに集まっている人たちは、いったい何者なのだろう。僕と同じように平日休みの労働者だろうか。それとも、働かなくても良い大金持ちだろうか。
そんな妄想を続けていると、思考がぐるぐる回り「存在とは?」みたいな哲学らしき問いにまで迷い込んでしまう。……我ながら、何の話をしているのか分からなくなってきた。

日常のライフスタイルが違えば、見えている世界もまるで別物だ。世間では「悪夢の月曜日」と嘆いているはずなのに、今日一日、僕の目に映ったのは楽しそうな観光客とリゾート気分の人々ばかりだ。お盆明けの“ゾンビのような顔”を一度も見なかった。

現実のはずなのに、僕の目に映るこの光景はどこか空想めいていて、自分の存在すら少し揺らいで感じる。僕は存在しているのか?世間は存在しているのか?──問いを重ねるうちに、むしろ「何もない」という感覚こそが最もリアルに思えてきた。








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