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タージマハルより、山奥のヤクに感動した話

私は、ちょっとだけ変わった旅が好きなんだと思う。
もちろん、有名な観光地はたくさん行った。
インドではタージマハルを見たし、トルコではブルーモスク、ニューヨークでは自由の女神、カンボジアではアンコール・ワットにも行った。
南アフリカでは喜望峰にも立った。
どれも「一生に一度は見たい」と言われる場所ばかり。
でも、もし「今までの旅で一番感動した場所は?」と聞かれたら、私の答えはたぶん違う。
インドの Manali(マナリ) から Leh(レー) までバイクで走った数日間だ。
前の日から酸素の薄さで体調を崩し、高山病のような状態になっていた。
朝、目が覚めてテントから外へ出る。
目の前には、どこまでも続く大草原。
その中をヤクたちがのんびり歩き、草を食べていた。
少し離れた場所には、ヤクと共に暮らす人たちの姿もあった。
風の音しか聞こえない。
あの朝の景色は、今でも忘れられない。
正直に言うと、私の中ではタージマハルより心が動いた。(笑)
もちろん、タージマハルを否定したいわけじゃない。
私が行った日はあいにくの雨で、人もものすごく多かった。
ゆっくり景色を味わうというより、人混みの中を歩いて終わってしまったような感覚だった。
もし青空の日に訪れていたら、また違う印象だったのかもしれない。
旅って、その場所だけじゃなく、その時の天気や空気、自分の心の状態まで全部ひっくるめて思い出になるんだと思う。
もう一つ、今でも忘れられない出来事がある。
南アフリカの小さなレストランで食事をしていた時のこと。
一組の若い男女が店に入ってきた。
男の子が民族ドラム(?)で、リズムの音楽を流し始め、女の子が踊る。
いわゆる、レストランを回りながらパフォーマンスをしてチップをもらう人たちだった。
舞台なんてない。
私たちが食事をしている、そのすぐ横の床がステージになった。
豪華な照明もない。
特別な衣装でもない。
でも、その踊りには圧倒された。
女の子の身体は、まるでゴムまりみたいだった。
軽やかなのに力強い。
音楽に合わせて弾み、しなやかに動き、そのエネルギーが次々とあふれ出してくる。
目で見るダンスじゃなかった。
お腹に響くダンスだった。
ドラムのリズムと一緒に、その力強さが身体の奥まで伝わってくる。
気がつくと鳥肌が立っていた。
あれからもう数十年経つけれど、もしもう一度あのレストランへ行けるなら、私は迷わずあの二人のダンスをもう一度見たい。
旅って、こういう偶然の出会いがあるから面白いんだと思った。
そして気がついた。
私はずっと観光地を見に旅をしていたんじゃない。
その土地で暮らす人たちの日常や、小さな感動に出会うために旅をしていたのかもしれない。


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