【医療】病院SE必見!令和8年度診療報酬改定で「具体的にやるべきこと」の実務対応ステップ
こんにちは、猫@医療情報技師ですᐕ)ノ
今回の令和8年度診療報酬改定、内容を細かく見れば見るほど「ICTツールを入れました」という報告だけでは点数が守れないことが分かってきました。
厚生労働省は
「どう使っているか」
「どう管理しているか」
という運用面を非常に重視しています。
私たち病院SE(医療情報技師)が、現場で具体的に何を進めればよいのか、中医協の公式情報をステップバイステップで確認していきましょう!
病院SEが関わる令和8年度診療報酬改定のおさらい
1月23日に、中央社会保険医療協議会(中医協)の発表がありました。
1. AI・RPA活用による医師事務作業補助の評価見直し
生成AIによる文書作成補助やRPAを導入し、医師事務作業補助者の業務効率化を図る場合、配置基準を1人あたり1.2〜1.3人として換算できる規定が設けられた。
2. ICT機器活用による看護業務効率化と配置基準の柔軟化
「見守り」「記録補助」「情報共有」の3つのICTを全て導入し、かつ超過勤務を客観的に把握している場合、看護配置基準を1割以内の範囲で減少させることが可能となった。
3. 医療DX推進体制整備と電子的情報連携の強化
「電子的診療情報連携体制整備加算」等が新設され、診察室等での情報閲覧環境や電子処方箋、WebサイトへのDX状況掲載が要件化された。
4. サイバーセキュリティ対策とBCP(業務継続計画)の要件化
診療録管理体制加算の要件として、非常時(システム障害等)のBCP策定、見直し、およびそれに基づいた「訓練の実施」が必須となった。
5. 訪問看護におけるICT活用と電子的記録の義務化
他機関の診療情報をICTで常時確認できる体制(訪問看護医療情報連携加算)や、包括型評価における計画書・記録書の「電子的方法による記録」が義務化・新設された。
猫@医療情報技師が病院SEが着手する実務を解説
それでは、病院SEが具体的に着手すべき実務を、5つの項目ごとにステップバイステップで深掘りしていきたいと思います。

❶【医師事務作業補助】AI・RPA活用による配置基準緩和への対応
医師事務作業補助者を1.2〜1.3人として換算するためのAI活用環境の構築手順です。
●ステップ1:生成AIおよびRPAによる自動化機能の実装
医師事務の負担軽減に資する以下の機能をシステム化します。
生成AI:Azure OpenAI Service等のセキュアな環境を介し、診療経過から退院時要約、診断書、紹介状の原案を自動作成するボタンをカルテ内に配置します。
RPA:救急医療情報システムや感染症サーベイランス等の行政報告用システムに対し、カルテデータを自動転記するロボットを稼働させます。
●ステップ2:患者向け説明用動画視聴環境の整備
インフォームド・コンセントや感染、医療安全等に関する10種類以上の患者向け説明動画を、病棟のiPad等のタブレット端末を用いて、医師事務作業補助者が常時、即座に提示・活用できるシステム環境を整備します。
●ステップ3:ガイドライン準拠確認とセキュリティ設定
採用するAI製品が「AI事業者ガイドライン」を遵守していることをベンダーに証明させるとともに、医療情報が適切に保護されるネットワーク設定(VPN等)を行います。
●ステップ4:全補助者へのAI研修受講とアカウント管理
全ての医師事務作業補助者に対し、AIの操作および適切利用に関する研修を実施し、受講ログを電子保存します。また、各員が常時AIツールを使用できるよう個別のIDを発行します。
●ステップ5:年1回の事務作業時間および負担感の評価
ICT導入前後での医師の事務作業時間や負担感の変化を、システム利用状況から算出・集計し、衛生委員会等で確認する体制を維持します。
❷【看護業務の効率化】ICT活用による配置基準柔軟化への対応
看護職員の配置基準を1割緩和(90%維持)するための体制整備手順です。
●ステップ1:ICT「3種の神器」の同時導入と配備
病棟に「見守り」「記録」「情報共有」の3つの機能を網羅する機器を配備します。
見守り:ネットワークカメラや離床センサーを病室に設置し、ナースステーションのモニターや看護師が携行するiPhone・iPad等のモバイル端末で、遠隔から患者の行動を常時確認できる環境を構築します。
記録補助:専用マイクやスマートフォンを用いた音声入力による記録作成、および電子カルテのデータから退院時サマリー等を自動生成する機能を実装します。
情報共有:インカム(ハンズフリー通話機器)や業務用スマートフォンを病棟の医師と看護師に配備し、リアルタイムでの多人数間通話や情報共有を可能にします。(一部だけでなく、チーム全体が機能を享受出来ること)
●ステップ2:PCログを用いた超過勤務時間の自動集計ロジック構築
看護職員の残業時間を客観的に把握する仕組みを作ります。
ロジック:タイムカードではなく、電子カルテ用PCやモバイル端末の「ログイン・ログアウト時刻」をサーバーから自動抽出し、1人1月当たりの平均超過勤務時間を算出するプログラムを整備します。
●ステップ3:超過勤務「月平均10時間以下」の監視体制運用
算出された超過勤務時間が非常勤を含め「月平均10時間以下」に収まっているかを毎月確認出来るようログイン・ログアウトの時間を把握可能な環境を構築すること。また、導入から増加傾向がないように管理するため、基準を超えそうな場合にアラートを出す管理画面等構築させるなど工夫が必要。
●ステップ4:プライバシー配慮と電子同意管理の実装
カメラ等の設置に際し、患者・家族への説明と同意取得の有無を、電子カルテ上のフラグや特記欄で一元管理し、現場が即座に確認できる環境を整えます。
●ステップ5:年1回の業務負担軽減効果の定量的評価
ICT導入による業務量や時間の変化について、システム利用ログやアンケートデータを用いて年1回以上の評価を実施し、衛生委員会等へ報告する資料を作成します。
❸【医療DX・電子処方箋】診療情報連携体制の整備
質の高い診療情報を活用するためのインフラ整備と、情報公開の手順です。
●ステップ1:診察室等への情報閲覧インフラの全室配備
医師が診察中に、オンライン資格確認等から得た薬剤情報や特定健診情報を即座に参照できるよう、全ての診察室、手術室、処置室のPC端末で閲覧・活用できる環境を整備します。
●ステップ2:電子処方箋発行・登録システムの稼働
HPKIカードリーダー等の認証環境を整備し、電磁的記録としての処方箋発行、または調剤情報の登録を行える体制を本稼働させます。
●ステップ3:電子処方箋管理サービスによる重複投薬チェック実装
処方入力時にシステムが自動で外部サービスへ照会し、向精神薬を適正に使用出来るよう、有効成分の重複や不適切な飲み合わせ(併用禁忌)がある場合に、強制的にアラートを表示するロジックを設定します。
●ステップ4:救急時医療情報閲覧機能のセットアップ
救急外来等の端末において、マイナポータル経由で意識障害患者等の情報を取得できる機能を有効化し、必要なアカウント権限を整備します。
●ステップ5:WebサイトへのDX取組状況の掲載管理
「医療DX推進の体制」や「電子処方箋の発行体制」等を、自院の公式サイトの見やすい場所に掲載し、管理者が定期的に内容の更新・維持を管理します。
❹【サイバーセキュリティ・BCP】非常時の診療継続体制
診療録管理体制加算の必須要件化に伴う、システム継続のための手順です。
●ステップ1:システム障害・攻撃特化型「IT-BCP」の策定
サイバー攻撃等によるシステム停止時の「復旧手順」や「紙運用への切り替えフロー」を網羅した、情報システム専用のBCPを最新ガイドラインに沿って改訂します。
●ステップ2:非常時用バックアップ参照環境と資材の配備
サーバー停止時でも過去の情報を参照できるネットワークから切り離されたオフライン端末(ノートPC等)を各拠点に配備し、併せて紙の代行伝票や処方箋セットを物理的に備蓄します。
●ステップ3:実戦的なIT防災訓練の主導
年1回以上、システム全停止を想定した訓練(紙運用への切り替えから復旧後のデータ再投入まで)を多職種参加型で実施し、その実施記録や写真等の証跡を保存します。
●ステップ4:セキュリティ対策の最新化とログ保存設定
ウイルス対策ソフトの最新化を確認するとともに、診療録管理体制加算の要件を満たすよう、長期間のアクセスログ保存設定がなされているかシステム構成を再点検します。
❺【訪問看護】ICT活用と情報の常時確認体制
訪問先から情報を活用し、計画的な管理を行うための手順です。
●ステップ1:他機関情報の「常時確認」プラットフォーム構築
訪問看護師が携行するiPhoneやiPad等のモバイル端末から、連携先の医師や薬剤師が記録した診療情報を、VPN接続やクラウドサービス等を用いて外出先からいつでも安全に確認できる環境を整備します。
●ステップ2:完全ペーパーレス記録システムへの移行
訪問看護計画書や報告書を、紙への転記なしでタブレット等のモバイル端末から直接入力・電子保存・送信できる「電子的方法による記録」環境へ完全に移行させます。
●ステップ3:オンライン診療補助(D to P with N)用機材のキッティング
看護師が同行して医師とオンラインで繋ぐため、高画質カメラ搭載のiPhone/iPad、セキュリティ対策が講じられたビデオ通話システム(通信の暗号化、ログの管理、サーバーの場所、法人契約等)、安定したモバイル回線をセットアップします。
●ステップ4:Webサイトへの連携体制掲載と更新
「ICTを用いた情報連携体制を構築している」旨を訪問看護ステーションのWebサイトに掲載し、その掲載画面を施設基準届出のエビデンスとして管理します。
最後に
ここで示したステップは、令和8年度の診療報酬改定において、病院SEが技術的な側面から施設基準を満たすための実施内容をイメージしたものです。
これらのステップを通じて、診療報酬の算定要件を単なる書類上の手続きに留めず、実際のシステム運用と密接に連動した「仕組み」として病院内に定着させることが、病院SEに期待される役割となりますので、皆さん頑張りましょうヾ(*´∀`*)ノ
