地図は、人との出会いからできている。
「地図は、どうやって作っているんですか?」
そう聞かれることがあります。
実は、パソコンに向かっている時間よりも、地域を歩き、人と話している時間の方がずっと長いんです。
その土地の魅力は、インターネットだけでは見つけられません。
だから私は、できるだけ地域の方とお話をするようにしています。

その中でも忘れられないのが、六島での出来事です。
島を歩いていると、自動販売機も見当たらず、少し困っていました。
すると、地域の方が声を掛けてくださり、
「よかったら、お茶でも飲んでいき。」
と、自宅へ招いてくださいました。
お茶をいただきながら、六島の名産である乾燥ひじきのお話を聞きました。
「家ごとに作り方が少しずつ違うんよ。」
「硬さも、味も、それぞれ違うんじゃ。」
同じ六島のひじきでも、それぞれの家に、それぞれの味がある。
そんな話は、ガイドブックには載っていません。
その後、六島灯台へ向かいました。

途中には、手作りのブランコやベンチがあります。
何気なくブランコに座ってみると、
目の前には、海と水仙畑が一面に広がっていました。
ベンチから見える景色も、本当に美しく、
「この景色を見てほしい。」
そんな思いで、この場所が作られたのではないかと感じました。
私は、こういう出会いを地図に載せたいと思っています。
場所だけではなく、
そこに暮らす人の温かさ。
何気ない会話。
地域の人だからこそ知っている景色。
そういうものがあって初めて、その町の魅力が伝わるのではないでしょうか。

都会では、知らない人に家へ招かれたり、みかんを持たせてもらったりすることは、驚く出来事かもしれません。
でも、勇気を出して一歩踏み出すと、そこには温かく迎えてくれる人たちがいます。
私が作っているのは、地図だけではありません。
人との出会いを集めた、一冊の物語なのかもしれません。
次回は、実際に地図が完成するまでの制作風景や、デザイナーとしてどんなことを考えながら仕上げているのか、その裏側をご紹介したいと思います。
次回も、一緒に笠岡を歩きましょう。
