詩: 風邪を引いたバイオリン
昨夜からずっと
ケースの中で
バイオリンが
かすれた音で咳き込んでいます
弓は心配そうに寄り添って
「無理に歌わなくていいのよ」 と
いつもの弦とは反対側の
背中をやさしくなでました
「乾燥は禁物だけど
日本の梅雨は湿っぽいから
急に暑くなったり
変化が大きいのは まいるわね」
弓は一瞬だけ毛先をふるわせて
迷うようにバイオリンを見つめました
そのあとで 磨き布の毛布をそっとかけ
静かにケースのふたを閉めました
「今日は一日、ゆっくりおやすみなさい」
梅雨の合間の青空がのぞく日
すっかり元気になったバイオリンが
嬉しそうにひとつ
ピチカートを響かせました
さあ お待たせ
バイオリンと弓
今度はどんな歌を
一緒に奏でましょうか
(玲 2026.5.21)
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