30代、ほぼ無職でもうすぐ終わる
私が『専業主婦』と呼ばれるポジションで生きるようになって、もうすぐ6年が過ぎようとしている。専業と言えるほど主婦業を頑張っているかと問われれば、胸を張って答えは「NO」だ。
「無職です」と言う方が、しっくりくる。
夫の転勤先で暮らすため、結婚して、新卒で入ってからずっと勤めていた会社を辞めた。今どき世にも珍しい寿退社を、まさか自分がするとは驚いた。
新天地では、しばらく無職を謳歌した後、長男を妊娠するまで派遣社員として働いた。そして私の職歴は、そこからパタリと途絶えた。
その間、AI が飛躍的な進化と普及を遂げ、無職は怯えた。『AI に仕事を奪われるのでは?』とAI に相談し、慰められ、安心を手に入れた。
平日時々休日も会社へと向かい、パソコンの前に座って納期とにらめっこしていた私は、もういない。
いるのは、平日時々休日も公園へと向かい、足元はパンプスからスニーカーへと履き替え、砂場と滑り台を行ったり来たりする私だけだ。
育休から仕事に復帰した友人達は、皆で打合せしたのか?はたまたテンプレートがあるかのように、同じセリフを言う。
「大人と喋るって楽しい」
「子供と離れる時間があるから優しくなれる」
私は昔から結構うっかりして生きている。小学生の時、ランドセルを忘れて家を出た事がある。母が慌てて渡しに来るまで気づかなかったらしい。『らしい』と言うのも、私は忘れた事さえ忘れていて、大人になって、忘れない母からこのエピソードを聞かされ驚いたのだ。
もし私が友人達のように、子育てしながら働くことになったら…間違いなく子供達の大事な成長の瞬間も、うっかり見過ごすだろう。
それは、もの凄くもったいない気がする。
正直に言うと、ずっと子供と一緒の時間が続き、1人になりたい時もある。…めちゃくちゃある。話を聞かない子供達を目の前に、あっという間に散らかるリビングの中心で「ぁぁぁあ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」と、言葉にならない『あ"』を叫ぶ日もある。(怖ッ)
しかし、だからと言って今の自分が友人達のように子育てしながら働けるのか?と考えた時、今より日常の『あ"』が増える未来しか見えない。共働き家庭が当たり前のようになっている今、本当に皆すごい事をやっているなぁと無職は思う。働きながら子育てする事は、決して当たり前ではない。偉業である。
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私も夫も日常生活において、『笑顔』が多いタイプだと思う。
笑顔には様々な種類がある。
楽しくて笑う笑顔、
他者と上手くやる為の笑顔、
自分を守る為の笑顔。
私は夫の笑顔が好きだ。一緒にガハハハと笑えば、それだけで楽しい気持ちになれる。
夫は新卒で入った会社に勤務し続け、ずっと営業職。上司の前で笑い、同僚の前で笑い、お客様の前で笑う。
そして、愛想笑いが続くと、こめかみが痛くなる。
人間の体というのは不思議なもので、嘘発見器が体に組み込まれているかのように、無理をすると拒否反応が出るようだ。
自分を、家族を守るため、こめかみを抑え、今日も夫は外で笑顔でいてくれている。
今、もしも夫に転職したいと言われたら?夫の会社が倒産したら?夫が働けなくなったら?
私はきっと、慌てふためくだろう。
こういう時、無職は無力である。
物価高騰が続き、お金の価値が下がり続けている今、専業主婦家庭は少数民族であり、ほぼ絶滅危惧種だ。
そして、私が今、絶滅危惧種でいられるのは、夫が必死に稼いで、我が家が今にも倒れそうなジェンガのごとく、ギリギリのバランスで成り立っているからだ。
再来年の春には、次男(2歳)の入園と長男(5歳)の入学が控えている。そして、私はその年40歳になる。それまでは、何とかまだ無職で、子供達と家で笑っていたいと思っている。
夫よ、ありがとう。
そして、あと少し頑張ってくれ。
私の30代、ほぼ無職で終わりたい。
