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(02)幼馴染のRPG001

死ぬまでに書く小説(02/40)


 助けてください。


 次にどれを書くか迷っています。Noteで、あらすじと1話を書いて公開して『イイね』が多いものから順番に書こうかなと思っています。ご協力お願いします。


 小説は40篇あります、少しずつ公開していきます。


幼馴染のRPG 第001話

正式なタイトルは

『僕は幼馴染の最後に作ったRPG《ゲーム》世界に転生した。』


   

   あらすじ


 僕は、ケンカ別れした幼馴染が最後につくったRPGに転生した。淡い記憶と深い後悔のRPG転生物語。



  第001話


   ──

『憑かれてるのよ』

 僕は、高卒で、すぐゲームスクールに入学した。その頃ブームだったFFB『ファイナル=ファイト=ブルース』にハマっていた。僕はそれの『モドキ』を自分で作りたかったんだ──。

「そう。それに付き合わされる私の身にもなってよねー」

「うわっ。なんでお前が居るんだよー?」

 小中高といつも隣の席に居座る幼馴染いっかがそこに居た。長い黒髪をちょこっと右側で括ってサイドテールにしている。高校の制服以外では、黒地のサロペットばかり着ている変なやつだ。

 もう因縁と言うより怨念のようなものを感じる。

「僕って疲れてるのかな?」目をこすってみる。

「憑かれているんでしょうねぇ。私に……」

「自分から言うか──!」

「一生つきまとってやるから……ふふふ」

「それはギャグか? ギャグのつもりか?」

「いいえ、マジよ。ふふふ」

「どうせゲームなんてお前には作れないさー」

「アンタだってプログラムわかるの?」

「いや、イヤイヤ。今から習うんだ。いきなり出来るならゲームスクールなんか通う必要ないじゃないか?」

「それもそうねぇ」

 いっかはスッと手を差し出した。

「どっちがすごいゲーム作るか勝負しましょう!」


   ──

『ゲーム制作の日常』

 授業は、低級言語のアセンブラ、ベーシック、高級言語のC言語へと進む。

 高級言語と低級言語の違いは、価格の違いでないことだけはわかった。なぜなら授業料が同じだったからな。

  生徒の誰かが質問した。

「先生。手っ取り早く、ツクール君使わないんですか?」

「ツクール君、使ったらオレの給料が出ないじゃないか? 難しい言語教えるのは、教師の給料を払うためだぞー」

「現実に絶望した!」

「嘘だぞー。お前らが就職するゲーム会社がアセンブラとかC言語使ってゲーム作ってるからだぞー」

「エー、ドッチがホントー?」

「みんながでっかいPCでゲームを遊んでくれたらツクール君でも、まあOKなんだが。子供はナンテンドーリッチーで遊んでるよな?」

「センセイ、コレデスカー?」

「授業に持ってくんなよー。まあ、ゲームスクールならゲーム機の勉強の一環でいいかー? そーんなちっこいゲーム機には低級言語ってもんが必要なんだ。より機械に近い言語だからなー」


   ──

『エフェクト授業』

 授業はそんな感じで進んで行った。ひとつの言語でひとつのゲームを作る。

 僕が作りたいRPGが作れるようになるには、2年目の新型パソコンが必要だった。

 ゲームには、プログラミングの他にもイラストや音楽が必要だ。それも習った。本筋の授業が難解な言語の勉強だったので、イラストや音楽の授業は息抜きになった。

 だからハマったんだ。

 僕はイラストにハマった。特にエフェクト。綺麗な絵が新しい絵に切り替わる時、エフェクトというもんを使うんだ。簡単に言うと、紙芝居みたいに次の絵が右からスライドしてくる。四角いブロックで埋められる。難しいモノは、湯気みたいに浮き上がる。炎みたいに浮き上がる、メラメラと──。

 僕はこのエフェクトにハマった。もう無限にあるんだから。


  ──

『パソコン音楽 DTM』

「まさあき。またエフェクト? ゲーム作り進んでないじゃん?」

「お前も音楽ばかり作ってるよな?」

 まさあきというのは、僕の名前だ。幼馴染のいっかに、あまりにも呼ばれまくっていたので自己紹介を忘れていたんだ。僕は高校卒業後すぐゲームの専門学校に通い始めた。誰にもこの事は話してなかったんだけどな。幼馴染のいっかは、どういう訳か嗅ぎつけてついて来ちゃったんだ。

 そのいっかは、パソコンの音楽にハマった。生徒の半分がハマったらしい。

 いっかは、僕が気まぐれに作ったキーボードを押すと音階を奏でるプログラムに夢中だった。録音もできるんだぜ。

 いっかは、さっそく家でも『DAWソフト』を買ったそうだ。『DAWソフト』とはパソコンで本格的に音楽を作れるソフトのことだ。


「いっかはミュージシャンになるのか?」

「『ミクミク』も買ったよ」ミクミクはPCが歌うソフトだ。

「自分で歌わないの?」

「歌手にはならないかな。まさあきは、歌手の奥さん嫌でしょ?」

「うーんー。歌手より声優の奥さんが良い」

「シリーと結婚しとけ!」


   ──

『初めての共同作業ねっ』

 2年目に入ると、僕たちは本格的なゲーム制作に進んだ。最新のパソコンでゲームを作る授業だ。僕はもちろんFFB『ファイナル=ファイト=ブルース』を作る。モドキだけどな。この頃になると、絵の得意なヤツ。音楽の得意なヤツと個性が出てくる。そいつに発注するんだ。僕はもちろんエフェクト。プログラムも勉強したぞ。シナリオを書くツールも作った。

 一方、苦手なのは音楽だった。


「ねえ、誰か音楽つくってー」

「それならいっかが良いんじゃないか? (小さい声で)彼女だし?」

「ええ、テレルな──」

「誰が奥さんじゃー!」

「その依頼、受けてやろう」

「別に依頼してないしっ」

「よろー、初めての共同作業ねっ」

「そういうの言うなしっ!」


   ──

『卒業課題制作』 

 ゲーム制作も終盤になり、今年も終わりを迎える。

 僕のゲームは、いっかにナイショで最後のエンディングを作成中だ。この頃、音楽担当のいっかが、僕の家に入り浸っていた。

 僕はこのゲームのエンディングにいっかへのプロポーズの言葉を刻みたかったんだ。だから、いっかに見つかるわけにはいかなかった。


「いっか、ちょっと買い物行ってきてー」

「はーい」


 その隙を別のクラスメイトに狙われた。めちゃハメられた。後で浮気疑惑のきっかけとなった。いっかが家を出ると現れて僕の前で甘えてきた。


「ねぇねぇ、まさあきくーん、エフェクト作ってー彼女にはナイショでさー」

「敵とー接触するとー戦闘シーンが挿入されるのー。まさあきくーんには、ここでエフェクト挿入して欲しいなー」

「こんな感じ?」

「そこっそこそこ。いい感じーに入った! わたしたち相性ピッタリねー」


 おわかりかも知れないが──。


 この子は、音声職人と呼ばれる、音声コラージュの天才だった。買い物から帰ったいっかと遭遇。僕といちゃついて居るところを見せつけた。そして──いつの間に加工したのか録音された音声をいっかに聴かせた。


『ねぇねぇ、まさあきくーん、彼女にはナイショでさー挿入されるのー。まさあきくーん。ここ挿入して欲しなーこんな感じ? そこっそこそこ。いい感じーで入った! わたしたち(ピー)ピッタリねー』


 いっかは僕の言葉を聞いていない。もう言い逃れようがなかった。

 いっかは買い物をぶちまけると出ていった。


 以来、いっかとは卒業までひと言も話さなかった。


   ──

『卒業とゲーム交換と再会の約束』

 いっかは卒業課題のゲームを最後まで作らなかった。

 僕だけが卒業した。

 ゲームスクール卒業の日、いっかは「もう作ることはないのだから」と言って卒業制作の作りかけのゲームをくれた。それはシャレたCDパッケージに入っていた。僕の憧れだったゲーム。FFB『ファイナル=ファイト=ブルース』そっくりのパッケージだった。

「ゲームのエンディングは作ってないんだ。まあ、あんな事、あったから、でも、私の気持ちも、考えてくれると、良いかなって、思った。ウン」


 いっかのぎこちない笑い。

 交換するために用意した僕のゲームは、タイトルの無いSDカードだった。


「──僕のはシューティングゲームだ。エンディングまでたどり着いてみろ。お前はシューティングが苦手だから一生見られないだろうがな──」

「あれ? FFB『ファイナル=ファイト=ブルース』は?」

「──あきらめた。優秀な音楽担当が降りたからな──あきらめた……」

「──」
「──」


 お互い何か言いたかったがナニも言えない。


「……ゲームクリアしてみるよ。もちろん。エンディングあるんでしょ? まさあきの事だから『私へのメッセージ』あるんでしょ?」

「ああ」

「やった、クリアしてみる。そしたら会いに行く! ──どんな事が書いてあっても──絶対会いに行くから。死んでも会いに行くから──」

「──ああ待ってる。って死んだら会えないだろー? ははは」


 不機嫌だったいっかの横顔は、今は上機嫌になって笑っていた。一生忘れることができない笑顔だった。


 僕のゲームのエンディングは、彼女へのプロポーズの言葉が延々と流れるものだった。パソコンの電源が切れるまで止まらない。終了ボタンもないものだった。


   ──
『ドアメッセージ』

 家に帰ると、僕は幼馴染の作ったゲームをプレイしてみる事にした。家族に邪魔されないように、部屋のドアには『ゲーム制作佳境につき絶対に、あ・け・る・な! 話しかけるな!』とドアメッセージを吊るしておくとしよう。昔一度、ゲーム制作中に入ってきた親と大喧嘩したことにがあったんだ。だからこの『ドアメッセージ』があった時は、親は入って来ないし、絶対に声をかけない。

「──さて静かになったな」

 いっかのゲームはCD-ROM版の綺麗に印刷されたものだ。丁寧に扱おう。保存場所は、僕の憧れのゲーム FFB のとなりだ。


「おおーまんまFFB『ファイナル=ファイト=ブルース』作り込み過ぎじゃん♫」

「選択肢まで一緒じゃん♪」


 ゲームを始める前に質問です。

 ある日、身なりの整った男が、見すぼらしい男をいじめていました。あなたはどちらの味方をしますか?


1.見すぼらしい男
2.身なりの整った男


「1だ。この後、見すぼらしい男は、魔法使いのおじいさんになって魔法を授けてくれるんだ」

「はは、まんまFFB『ファイナル=ファイト=ブルース』じゃん」


 そして最後の質問は、いっかが僕だけに向けた、僕だけが答えられる質問だった。

 最後の質問です。まさあき、私のこと好き?

 この質問はこの後も何度も入力する事になる。なんどもなんども試す事になる。ぐすっ。どちらの選択肢も試してみた。


Yes「だと思った」
No「わたしは好きだな」


 そしてやっぱり続きは決まっていて──


「だから私は、このゲームの続きを、あなたと一緒に作りたいな──ずっと」

「──だったら学校通っている時言えよな──」僕はつぶやく。


   ──

 ゲーム本編が始まった。重厚な音楽は、まんまFFB『ファイナル=ファイト=ブルース』だった。

 グラフィックも音楽もパソコンならコピーすることが出来る。出来ないのはエフェクト。それも僕のエフェクトである程度カバー出来た。完璧なゲームのコピーだ。


「出来るだけそっくりになるように、私、頑張ったんだから」


 いっかの声が、そう言っているように聞こえる。

 モンスターもまんまFFB『ファイナル=ファイト=ブルース』で違いがあるとすれば勇者の名前だ。


「『バカあきさま』ってなんだよ? 敵の攻撃を食らった時なんか『バカあきさま』は20のダメージを食らった!』って、心に2倍のダメージ食らったわ……ははは」


   ──

 最初の仲間が現れた、と言っても今は敵なんだが……。

 こいつは盗賊で主人公のお金を盗むんだ。うまく捕まえないと主人公は無一文になるんだ。捕まえるまで盗み続けて序盤は苦労させられたっけ。


「クソー、コントローラの反応ワルくね? それともワザと反応ワルくしてるのか?」


 盗賊はなかなか捕まらなかった。そうこうしている内に現実世界では朝になっていた。

 いっかも僕のゲームを頑張ってやっている頃だろうか。「シューティングゲームか──しまったな──シューティングはRPGほど時間がかからないんだよ。と言ってもシューティングゲーム苦手のいっかの事だ、まだ一面もクリアしてないだろうけれど。ゲームのエンディングを見た、いっかの驚く顔が目に浮かぶぜぃ──」


 僕は一度風呂に入って、指先を温めてから、入念に準備運動した。そして再びチャレンジだ。そう言えば、この頃、家族に会ってないな? どうでも良いことだけど……。


「よーし。盗賊の逃げるパターンが見えてきたぞ。よしっ、そこで先回りして……捕まえた!」

「きゃぁぁあ」突然スピーカーからいっかの悲鳴が聞こえてきた。

「びっくりしたー! いっかのヤツ、自分の音声を録音してやがった。と言うか盗賊は女か?」

 原作では盗賊はニヒルなおっさんだったんだが。ここでニューキャラ登場かー?

「胸をもんだ。結婚して!」


 小学生の頃のいっかの言葉が思い出される。あの頃は、エッチなこと=赤ちゃんが出来るだったからな。

小学生の頃、ぶつかった拍子に、いっかの胸を揉んだとき「結婚して」と言われたな。

 音楽も結婚行進曲っポイいっかのオリジナル曲だった。


「結婚して」


『ハイ』と『イヤ』の選択肢が現れる。


「イヤっと」

「シクシクなんでそんなこと言うの? シクシクシク」

「やっぱりイヤっと」

「シクシクなんでそんなこと言うの? シクシクシク」

「NES『ネバーエンディングストーリーズ』じゃん。ハイっと」


注)まるで映画のタイトルのような、NES『ネバーエンディングストーリーズ』は、僕のお気に入りゲームのひとつだ。開発中にメインのシナリオライターが失踪したため分岐シナリオが作れず、パーティメンバーが途中で一人でも死んだら、その章の最初から始めなければならない鬱ゲームだと呼ばれた。僕は好きなんだけどね──誰も死なないRPG。

そしてゲームは続く。


「これで私たち夫婦ねっ」

「なんと結婚しちゃったじゃんゲームの中だけど……」


 ココで『このキャラの名前を入力して下さい』の画面が表示された。


「ナンにしようか? 『ドロボー』っと……」

「シクシクなんでそんな名前つけるの? シクシクシク」

「ぎゃーまた、NES『ネバーエンディングストーリーズ』」


 色んな名前を試したため、ここだけで6時間かかってしまった。まさかこんな所で時間取られるとは思わなかった。

 名前の入力はフェイク。

 初めから入力する名前は決まっていた。

 入力する名前は、ズバリ『いっか』ソレ意外受けつけなかった。


「僕のことの覚えていてくれてたんだ。ありがとう! バカあきさま」


 最初から主人公の名前は『バカあきさま』だし、仲間の名前は『いっか』なんだ。

 フルパーティには、あと3名。全員名前は『いっか』に決まっている。

 キャラのアイコンはドット絵なので、それぞれのいっかの区別は、ちょっとだけ変わった色の違いだけだ。髪の色が、赤色、青色、黄色とかそんな感じだ。パソコン画面で、ドットキャラがピコピコ忙しく動いている。
 クラスの中でドットキャラ職人は生まれなかった。だから素人の作った『いっか』たちの区別なんて殆どつかない。

「いっか・いっか・いっか・いっか・バカあきさまのパーティで完成か? お前のしたかったことはコレか?」


  ふたり目の仲間が現れた。


「他の女の名前なんて使わないでって? オイ、パーティーメンバーの名前全員『いっか』にするつもりなのか? 誰が誰のセリフかわかんねー。めっちゃ混乱するだろーがぁ」


   ──

『いっか・いっか・いっか・いっか・バカあきさまのパーティ』


 僕はいっかと一緒に子供の頃描いた抜け道のマークを覚えていた。

 だから簡単にエンディングを迎えられた。

 最後の魔王もいっかだった。

 敵も味方もいっかだらけだった。

『いっかの攻撃』

『いっかがダメージを食らった』

『いっかの攻撃』

『いっかがダメージを食らった』

 たまに『バカあきさまの攻撃』

 以下略のネバーエンディング。


 あとで気づいたんだが、敵のいっかが一度も僕(バカあきさま)に攻撃しなかった。それが地味に痛かった。


   ──

『魔王いっかは死んだ』


 エンディングは、まだ途中だと言っていた通り、ゲームは急に終わった。パソコンの画面が突然ブラックスクリーンになった。

 僕はしばらくその画面を見つめていた。うっすら自分の顔が映っている。僕の顔は泣いていた。何で泣いたんだろうな? わっかんねー。

 しばらく画面を見つめていた。

「魔王いっかを倒したんだよな? どこか行ってない所があったのかな? エンディングは無いよ! と言いつつ──あるんじゃないのか?」

再び、ブラックスクリーン。

「冗談だろーいっか。何も残さないなんて、いっからしくないじゃないか?」


 せっかく魔王を倒したけど気になって、また、セーブデーターを読み込んだ。何度もやり直した。何度もなんども……。そうしている内に朝がやって来た。

 仕方ないな「──僕も手伝うから最後まで作れ!」といっかに言ってやるつもりだった。


 なのに、なんで?


 いっかは死んだ。


 いいかよく聞け!


 魔王いっかじゃない。


 現実のいっかが死んだんだ。


 僕は無限のダメージを心に受けた。


 見つかった時、いっかは、冷たいアスファルトの上に仰向けで倒れていたそうだ。

 いっかのお母さんから聞いた。

 いっかのお母さんと出会ったのは偶然で、ゲームプレイに疲れて朝のコンビニに向かっている時に出会った。いつも、いっかと姉妹みたいな陽気な人なのに、なぜか喪服を着て無表情だった。僕を見ると事務的にこう言った。


「あの子なら死んだわよ。あなたの家族にも伝えたけど、伝わらなかったみたいね?」


 通夜のあと、いっかのお母さんに引き止められた。いっかは外出する時、パソコンの電源をつけっぱなしにして飛び出していったそうだ。それから今まで消していない。だからいっかの部屋のパソコンの電源を僕に切ってもらいたいそうだ。

 いっかの部屋に入ると、僕のゲームのエンディング画面が延々と流れていた。嬉しくも恥ずかしいプロポーズの言葉だ。

 いっか、かわいい、ダイスキだ。一生僕とつきあってくれ──そんな歯の浮く台詞の数々。

 僕は、F4キーを押して自分のゲームを終了した。

 ゲーム画面が終了すると、いっかのパソコン画面に戻るわけで──そこには、いっかの日記帳アプリが開いていた。最近は来ていないが『浮気発覚』以前の僕のお世話記録だった。朝何時に起こしに行った。から始まり、お昼は何食べた、僕が何したから私は何をした。夜は僕がお休みを言ってくれた。うれしい。で締めくくられていた。


『浮気発覚』以降の日記は記されていない。いっかは、その後の日々をどうやって過ごしていたんだろう?

 いっかのお母さんに挨拶をしていたらすでに深夜の闇に足を踏み入れていた。夜風にあたって、やっと冷静になった。


 なあ、つまりこれはこういうことなんだろう? お前は僕のプロポーズの言葉に気が動転して、周りが見えなくなり、僕の家まで思い切り走った。赤信号でも気にせず渡って、結果、車に轢かれてしまったんだ。あっけない最後──僕は待っているって言ったんだよ。お前は会いに行くって言ったんだ。僕に会ってないじゃん──ッくぅ。


 ちぎしょう!


 その頃、僕は、意地張って、お前のゲームをやっていたんだ。こんな事になるなら、意地を張らず、早くお前に会いに行って謝れば良かった──。

 もうゲームの中でしか、いっかに会うことは出来ない。

 いっかのお母さんによれば、いっかの死に顔は、まるで寝むるようで穏やかだったらしい。


「そうか満足したんだ。良かった。よかったな──」


 自宅に帰り、僕は、いっかのゲームの続きをやった。続き? ゲームは何度もエンディングを迎えている。いったい何を探しているんだ?

 いっかはなにを残して逝ったんだ?

 もしゲームが完成していたら、お前はどんなメセージを残したんだ?


「なあ、いっか。ゲームは好きか? それとも僕に付き合っていただけか? お前は一体なにをしたかったんだ?」

「──わからないんだよ」

「──今すぐ蘇って教えに来てくれよ。頼むからさ──」

「いっそ僕の方から迎えに行こうか?」 

「──いっか──」


 僕はいっかの残していったゲームを何度も何度もやった。

 抜け道をみつけては新しいマップを埋めていった。


   ──
『徘徊』

 あれから半年が過ぎた。

 結局、ゲームの中には、いっかの声は見つからなかった。

 僕は、いっかのゲームパッケージを握ったまま徘徊はいかいするようになった。

 いっかと通った通学路やデートコースなど、いっかとの思い出をなぞるように彷徨った。

 強盗にあった。パッケージはホンモノのゲームに似せたものだった。奪われた。「なんだこりゃ?」 「ゲーム?」 「高く売れるんじゃないか?」 だが、すぐ取り返した。僕はもう離さない。殴る蹴るの暴行を受けた。その間、ゲームパッケージだけを見つめていた。その先にいっかを見つめていた。目が見えなくなるまで殴られた。


 そして僕は死んだ。


 そして──

 僕は『幼馴染いっかの最後に作ったゲーム世界に転生した』のだった。


  ──第001話完──



現実世界のキャラクター

まさあき:一人称は僕。ゲーム大好き。自分もゲームを作る仕事に就きたい専門学生。

いっか:幼馴染の押しかけ彼女、主人公のゲーム専門学校にもついてきた。人称は私。名前の由来は「まあいいか──」から。

ピアノ:紫の髪の専門学生。音声加工の仕事人と呼ばれている。型(コス)はアヤナミ。精神(ソウル)はミサトさんを崇めるコスプレイヤー。彼氏の名前はケンバン。



 感想もお待ちしていまーす。

 別の話を見に行く。


死ぬまでに書く小説(40)


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