見出し画像

桂諷会『鎌腹』 野村万作師は年齢を超える

どうも私香です。11月23日の桂諷会リポート第二弾。今日は94歳のレジェンド・野村万作師による「鎌腹」がすごかった!というお話しです。

ーーー

「鎌腹」をひと息で。
働かない夫を、鎌を持って追い回す妻。仲裁が入り鎌はなんとか取り上げるものの、今度は妻から罵られ「そんなに言うなら自ら死ぬ」と宣言する。もちろん本当に死ねるわけもなく、そのためらいと右往左往を情に触れながら描く。

ーーー

この演目は、ほとんどシテ(太郎冠者)の一人芝居のような構成。
万作師の94歳という年齢を、いつでも意識しているわけではありませんが、妻に追われて登場する冒頭の“逃げ足”があまりに軽快で、「94歳だったよなぁ」と、あらためて年齢を脳内で確認してしまいました。
ちなみに妻役は萬斎師。そのエネルギーの強さに負けないパワーを持っているのです。

鎌は長い布で棒にぐるぐるに巻かれているのですが、万作師はそれをするりと解き、次はそれを柱に巻き付け、また解き、また棒に巻き直す。その「巻く・解く」の所作が、驚くほど淀みない。床に置いた棒を拾う所作も美しく、しゃがんでは立ち、立ってはしゃがみ…それを繰り返す。「よっこいしょ」なんて感じがない。

確かに息が少し上がる瞬間はありました。けれど、動く速さ、長い布の扱い、立ち居の滑らかさは、年齢を感じさせません。

少し前、別の演目で万作師を観た時(演目名は失念)、隣の席の方が「えっ…いや、すごい、えぇぇ94…」と独り言のように呟いていました。気持ちよくわかりました。舞台に引き込まれると、年齢のことは忘れてしまいますが、「鎌腹」冒頭のように、ふと我に帰り、思わず声が漏れてしまうような驚きは確かにあります。

身の回りにも90代の方はいますが、ここまでの機敏さと器用さを保っている方は、なかなかいません。
正直、私が同じことをできるかと考えると…その自信さえ怪しい(笑)

ほんとうに驚異の存在、野村万作師です。

ではでは。
ーーー

門外漢の能楽つれづれマガジン↓

いいなと思ったら応援しよう!