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【映画感想文】『スペルマゲドン』こんな映画が存在すること自体に感謝したくなる

2月17日……本日の日付であるが、これは一年で最悪な日にちである。何か最悪なことが起きたとかそういう訳ではなく、今年に入ってから、なんなら1年前からこの日は最悪だと原理的に決まっているのだ。
さて、そんな最悪な日はなぜ最悪な日なのか?それは僕の誕生日だからである。

さて、僕は毎年誕生日には映画に行くようにしているが(誕生日じゃなくても観るだろ)、そんな今年の誕生日に観るべき映画とは何なのか……?そう思いながら映画アプリを見ていたらこんな映画を見つけたそれが『スペルマゲドン』である。

この映画がどういう映画か説明しておくと、擬人化された精子が受精を目指す冒険を描くという前代未聞の3Dアニメ映画である。
あぁ、これがあったか。これでイイじゃん。これで。と思った訳である。(どこがイイんだよ)


そういう訳で観に行きましたよ『スペルマゲドン』!
いやーそれにしても驚きだよね。何にってそもそもこの映画の存在自体にだよ。
映画ニュースってのは色々ある。確度が高いものから低いものまでね。例えばイーストウッドの陪審員2番以降の新作が作られるなんてウワサもあったりした(後に否定)、ゴダールの新作が2本もカンヌに出品されるなんて話もあった。これは結果としてカンヌ出品はウソだったが、新作2本というかなりウソっぽい部分が本当だったので驚いた。
そんな中で発表された『スペルマゲドン』製作発表の報……いやいや、信じられなかったよね。監督も決まっててファーストルック画像もあったのに、どう観てもウソにしか思えなかった。いや公開されても実際に観るまでウソだと思っていた。


精子なんて映画界においては超アングラ映画でたまに少し映る程度の存在しか許されていなかったというのに、ソイツをよりによって主人公にしてうっかりディズニーと勘違いしてもおかしくないデザインでアニメ化しちゃうんだから。映画というのは個人の◯チガイがいるだけでは作れないという事を考えればこの映画を作ったノルウェー全体がキ◯ガイなんじゃないかと思ってしまうが。

しかも監督があのトミー・ウィルコラ!『処刑山』シリーズや『バイオレント・ナイト』などの最強映画を作ってきた最強映画監督である。あんなゴアゴア悪趣味映画を作った監督がこんなアニメ映画を作るなんて意外なような納得なような……なんにせよ、全てが異常事態であることは間違いないだろう。

そんな今作だが、まあ先にあまり良くないところを言ってしまえば正直ちょっと安っぽい映画である。
精子がディズニー風に擬人化されたビジュアルは面白いし、他のキャラもデザインは良い。
しかしこう…全体的に画面が安っぽい。ライティングや質感がなんかAI生成したような感じなのだ。
更に言えば監督が実写出身であるがゆえか、被写界深度が全体的に浅すぎるのもそのAIっぽさに拍車をかけている。ボカして誤魔化す……は典型的なAIアニメのやり口で、物理的なカメラを想起させる実写的演出との不幸な合致が起きているのだ。

ミュージカル場面もどうも奥行きを感じられないし、リズムも弱い感じはある。
というか全体的に映像が平板だ。これはそもそも企画の限界であって監督の責任とは限らない部分もあるが、この監督は狭い空間を十全に活かす演出は巧みだが、しかしゼロから世界を作り、そこで奥行きを作る…というのはなかなか難しかったようだ。もちろんそれには膨大なカネがかかる訳で仕方ないことではあるのだが。

とまあ色々語ってきたが、しかしその弱点を凌駕する面白さのある映画でもあった。
何が良かったか……と言われるともうかなり根源的な話になるのだが、このような映画が存在することそのものがもう良いのである。

例えば冒頭、精子である主人公がどんな精子で彼の住む世界がどんな金玉内空間なのかを説明する場面があるのだが……と、もうこの文字列だけで異常事態である。なんなんだよ、精子の人となりって。
セットアップとしても、キャラ性としても、アニメ映画としてはスタンダードなものだ。しかし「主人公が精子」というただ一点だけでもう全てが面白くて仕方ないのである。

当然、全編下ネタまみれだ。本当に内容としてはくだらないのだが、やっぱそのくだらなさが良い。何より「精子が〇〇する」というシチュエーションが面白いのでもうなんか全部が面白いんだよ。ズルだろ。

話としても本当に頭がおかしいとしか思えない内容だ。間違えてアナルに出された精子が、大腸菌の力も借りながら身体を冒険したのちなんとか尿道へ辿り着き、陰毛を伝って膣へと向かう……などと普通に話を説明しただけでなんらかの罪に問われそうな代物である。
ここら辺、アニメーション的には普通だし、アイデアとしてもこのコンセプトならそんな飛躍してもないものなのだが、もうやってることが全ておかしいのでそれが強烈な個性になってしまっている。だってシンプルに初めて観たもん、そんな映像。
それに加えてここら辺は、狭い空間を活かし切る監督の手腕が最悪の形で遺憾なく発揮された部分だと言えるだろう。

あとまあここの解説で分かるだろうが、性教育としては荒唐無稽であまり役に立つ映画ではないと言っておこう。
なにせムキムキの精子がアイアンマン的なスーツを着て、ゴムに穴を明け、殺精子剤を殺しまくるからである。はた迷惑な話だよ!
そこら辺、「はたらく細胞」みたいに普通にちゃんとした描写でやっても良かったんでは感もある。まあアナルからの大冒険の方が面白いから良いか(?)

とは言え、どんな対策をしても完璧ではないという教訓にはなるかもしれない。にしたってよ、アイアンマンは無いだろ。

あと付け加えるならば精子のゴア描写が豊富だったのも良かったな。ここら辺も監督の手腕だろう。にしてもなんだよ精子のゴア描写って……
サブキャラがなかなか魅力的なのも、まさにこの監督らしい良さだった。

そういう訳で、これがなかなか面白い映画だったと言えるだろう。いい誕生日だった。そうかな……?

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