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【映画感想文】『ARCO/アルコ』「飛翔」が巧みに活かされた良作SFアニメ映画

僕は割りかし幅広く映画を観にいくタイプであるが、その中でもこれは確実に観にいくというものが海外のアニメ映画だ。
そしてそんな海外アニメ映画でも特に信頼しているブランドというようなものがある。それはアヌシー国際アニメーション映画祭。
フランスはアヌシーにて開催されるこの映画祭はアニメ映画祭の中でも特に有名な映画祭で、実際ここで上映され、何か賞を受賞するような映画というものはなかなか良い映画が多い。

ここで最高賞を取った映画が『ファンタスティックMr.FOX』『コララインとボタンの魔女』『メアリー&マックス』そして『かたつむりのメモワール』……これでも、この映画祭で最高賞を取った傑作の一部でしかない。
『マクダルのお話』や『シーター、ブルースを歌う』など、この映画祭が無ければ絶対に観なかったであろう傑作も多い。

そして今回観たフランスのSFアニメ映画『ARCO/アルコ』に関しても、まさにこの映画祭で最高賞を受賞した一本なのであった。

舞台は西暦2932年。そんな遥か先の未来ではタイムトラベル技術が発達しており、人々は様々な時代へ行き、研究を行うなどをしていた。
そんな中、少年のアルコは家族のタイムトラベル道具をこっそりと盗み、時間旅行を試みるが失敗。2075年の世界に不時着してしまう。
そこで孤独に生きる少女、イリスと出会い、紛失したタイムトラベルの道具を探すのだが…

と、このあらすじから分かる通り、話は割と王道なSFジュブナイルである……が、今作の大きな特徴はこんなあらすじから想像するようなビジュアルから文字通り大きく飛躍したものとなっている所だろう。
というのも今作、そのタイムトラベルというものが「飛翔」というものによって行われるのだ。

このあらすじだけ見れば、なんらかの機械によってタイムトラベルが行われる…と想像する人が多いのではないだろうか?しかし今作はとあるマントを身につけ、スーパーマンよろしく空を飛ぶ事によってタイムトラベルが行われるのだ。
BTTFがそうであったように、アイコニックなタイムトラベルの手法を今作なりに開発しているのである。

当然、それは単に物珍しいだけのものではない。そこにはビジュアル的な作話方が存在するのだ。

今作では空を飛ぶ人間の軌跡が虹のように見えるという設定がある。まずこれが単純に美しい詩的なイメージで良い。
更に言えば、単なる虹かと思えば実は…という捻りある演出が生まれ、それが日常が変化するというワクワク感を与える。
そしてそれがラストにも反復される…と映画の作りとしてうまいのだ。

そして何より飛翔というイメージが映画全体に大きな意味をもたらしているのだ。
2932年に生きる主人公のアルコは弱さを持つ少年でありながら、同時に2075年の人間にとってはある種の象徴でもある。それを虹や飛翔というイメージで表現しているのだ。

というのも今作における2075年というのはなかなかナチュラルに厳しい世界観なのである。
観る前はなんで2025年とかじゃないんだろう?と思っていたのだが…この2075年というのがまさに今現在抱える環境問題の延長線上にある世界観なのである。

台風や山火事など常に何かしらの異常気象が起きており、その一つ一つが非常に深刻。家の周りにある半透明のドームが無ければ全く生活も出来ない…そんな世界であることが本当にサラリと描かれる。この塩梅がうまい。
更に主人公に関して言えばなかなか両親とも会えず子守ロボットとしか話し相手がいない…とそういう孤独も重なっている。そこに現れる虹が象徴としてあるという訳だ。

そんな中で主人公の物語も描かれていく訳だが、これもまた飛翔をテーマにしたなかなか王道なもので良い。

映像面としてはSFとして見た際の今作のガジェットなどのデザインがなかなかにキッチュである。なにせタイムトラベル道具が全身タイツだからね。
アニメーションに関しては安っぽいところが一切無く、確かな良さがある。ヌルヌル動くし、変な演出やカメラも無い。最近のフランスのアニメはすごいのだ。
特にやはり良いのが飛翔のイメージ。具体的に言えばロングで見た際の動きの感触だ。この飛翔感が素晴らしい。

しかしそれにしても今作はなかなかにシビアさと優しさを併せ持っている映画である。
あの3人組が悪党では無く、どこか夢を求めているだけというのがまず良い。
更に言えば今作ではアルコもイリスも双方がそれぞれの冒険を行う訳だが…その冒険に関する代償がマジで痛いものだし、そして同時にすごい温かみを感じさせてもくれる。
この厳しさと優しさに泣けるのだ。

今作で描かれているのは、この終わっている世界への無力感、そこからくる逃避願望なのだろう。しかし、未来というのは単に無関係な「ここではないどこか」ではない。地続きな、我々が作りあげていくものなのだ。その責任を忘れてはならない…と、そういう映画なのだと思ったね。
(僕はてっきりあの未来世界にシニカルな意味合いがあるんだと思っていたのでやや困惑したが)(僕の性格が悪すぎるだけな可能性大。子供向けアニメなんだぞ)

まあそういう訳でいいアニメ映画だった。やはりアヌシーは参考になりますわ

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