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教授と毛蟹。

大学4年生の時、工学部の卒論で北海道・札幌の冬の除雪に関する調査を行った。町内会の一角、地域住民を対象に、冬と夏の除雪に対する負担度(苦労度)を調査し、クロス集計して出すという内容だった。

しかし、当時の自分はやり方が全く分からず、ゼミの部屋で「どうしよう、どうしよう」とただ焦っていた。その日も夜遅くまで徹夜で残っていた。

そのゼミの教授は、自分が高校生の時に体験入学で出会い、「この人、すごいな」と憧れてずっとお世話になっていた先生だった。その教授が、焦っている自分をチラッと見て「お前、このままだと卒業できないぞ」と言った。

どうしようかと落ち込んでいたら、ある日「お前、ちょっと俺の部屋に来い」と言われた。
教授の部屋に行ってみると、本と資料が山積みで、机には灰皿が置かれ、タバコをスパスパと吸っているような、とにかく小説家の部屋みたいな感じ。タバコを部屋ですってるのがバレないように本棚で死角を作って工夫をしてる部屋だった。

そこで先生とマンツーマンでの指導が始まった。
「お前、まずはアンケートを取りに行け」
「こうやってやるんだ。ここのデータとここのデータを掛け合わせてクロス集計するから、こういうデータが出て比較できるんだ」
そうやって、原理原則から何から、1から100まで、1週間ほどつきっきりで全て教えてもらった。

その時の忘れられないエピソードがある。
教授が「ここのデータとここのデータを組み合わせたら、こういう結果が出る。だから、この地域の住民は除雪に対してこれだけ困っているんだ」と説明してくれた。

それを聞いた自分は、ついこう言ってしまった。
「先生、このアンケートやクロス集計のデータを使って応用したらお金かせげるじゃないですか」

すると教授は、「お前みたいなやつがいるから、学問がバカになっていくんだ」と呆れ笑いながら言った。

自分は昔からお金を稼ぐのが得意な方だった。先生もそれを察していたのかもしれない。論文が完成する間際、先生はこう言った。
「お前に全部教えてやったんだから、出世したら毛蟹な」

お前もおこぼれをもらおうとしてるんじゃないか。という話。

なのだが。これで思い出したのが、Netflixの映画『浅草キッド』のワンシーンだ。

大泉洋演じる深見千三郎と、柳楽優弥演じる若き日のビートたけしのシーン。
たけしが売れてお金を稼げるようになり、ジリ貧の深見のところへ行って「お小遣いです」と言って封筒を渡す。
深見は「お前、師匠に向かって小遣いを渡すやつがあるか!」と怒ってため息をつくのだが、その長い間の直後に封筒の中身を覗いて「ひぃ、ふぅ、みぃ…」とお札を数え始める。すかさず、たけしが「数えてんじゃねえか、ジジイ!」と突っ込む。

このやり取りが大好きで、あの時の先生との関係にどこか重なる部分がある。

自分はあの先生のことがすごく好きだし、またいつか会って、今度は味噌がぎっしり詰まった毛蟹をしっかり送りたいなと思っている。

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