企画から動画まで。Google の生成 AI クリエイティブ制作術 ~AI Agent Summit '25 Fall~
こんにちは、Google の AI「Gemini(ジェミニ)」公式 note 編集部です。
「イベントの企画がなかなかまとまらない……」
「プレゼン資料に合う、"いい感じ"のビジュアルが見つからない……」
「動画を作りたいけれど、外注する時間も予算もない……」
マーケティングや広報に携わる方なら、一度はこんな悩みにぶつかったことがあるのではないでしょうか。
先日開催された、Google Cloud のビジネスユーザー向け生成 AI イベント 「AI Agent Summit '25」。実は、会場で流れていたキービジュアルやカウントダウン動画の多くは、Google の生成 AI を駆使して制作されたものなんです。
この記事では、その制作の舞台裏を、実際に使ったプロンプトやツールとあわせてご紹介します。「AI でここまでできるのか!」と感じてもらえる実例と、すぐに活かせるヒントが詰まっています。ぜひ最後までお付き合いください。
クリエイティブ生成の全体像
「AI Agent Summit '25 Fall」のクリエイティブ制作では、Google の生成 AI ツールを本格活用する試みが行われました。企画から完成まで、次のような制作フローで進められています。

全体の流れとしては、まず企画意図や「こんな感じにしたい」という漠然としたイメージを Gemini にインプットし、それを具体的なクリエイティブの方向性に整理していきます。そして固まったコンセプトを基に、Imagen や Veo へのプロンプトを作成し、アウトプットを生成する。
このワークフローによって、頭の中のアイデアが次々と形になっていく、新しいクリエイティブ制作を実現することができました。
【準備】まずは大量処理の仕組みづくりから
最初に取り組んだのは、Imagen や Veo の API を使った大量生成の自動化です。
Imagen や Veo の API を活用し、複数のプロンプトを一括で実行し、生成された画像や動画を自動で保存するプログラムを組みました。これにより、アイデア出しと並行してビジュアルの選択肢をどんどん増やすことが可能に。「このパターンも良いけど、あっちも試してみよう」という、本来クリエイターが最も時間をかけるべき試行錯誤に集中できる環境が整いました。
※API の具体的な活用方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【企画】Gemini で漠然とした思いを具体化する
このプロジェクトでは、Gemini を企画段階から活用しています。「前回と違うテイストにしたい」「もっと涼しげな感じがいいかも」といった曖昧なイメージを、対話を通じて具体的なクリエイティブの方向性へと落とし込むことができます。
例えば、こんな風に会話を始めることができます。
ユーザー:
ビジネスユーザー向けの生成 AI イベントのコンセプトとキービジュアルを企画しています。前回は暖色系でエネルギッシュな感じだったので、今回は涼しげで知的な印象にしたいんです。何かアイデアはありますか?
Gemini:
承知しました。いくつか提案します。
案 A: 『Vortex(渦)』AI との対話が生み出す知性の渦と、そこから生まれる無限の可能性を表現
案 B: 『Crystalline Intelligence』結晶のような透明感と構造美で AI の精緻さを描く
...(後略)
ユーザー:
案 A の『渦』というコンセプトが気に入りました。これをキービジュアルにするなら、どんなパターンが考えられますか?
対話を重ねることで、コンセプトや世界観が具体化されていきます。最終的にコンセプトが固まったら、「このコンセプトで、Imagen に最適なプロンプトを英語で作成して。」と指示することで、精度の高いプロンプトをスムーズに用意できました。
イベント企画の核となる「何を伝えたいか」は人間が考え、その思いを形にする部分で Gemini が伴走する——この役割分担が、今回のプロジェクトの特徴です。
【生成】Imagen / Veo / Lyria で実際に生成する
ここからは、Gemini のサポートで作成したプロンプトを基に、各ツールで実際にクリエイティブを生成していくプロセスをご紹介します。
1. キービジュアル(Imagen)
AI Agent Summit '25 Fall の顔となるキービジュアルは、画像生成 AI「Imagen」で作成しました。
前回のイベントとは違う、涼しげで知的な印象を目指し、辿り着いたコンセプトが「Vortex(渦)」です。AI との対話が生み出す知性の渦と、そこから生まれる無限の可能性を、渦を巻く液体が時間を止めたかのような、ダイナミックなガラス彫刻で表現しています。

A hyper-realistic 3D render of a dynamic vortex-like sculpture, as if capturing swirling liquid frozen in time. The object is made of polished, translucent glass with crystalline facets. Bright, even studio lighting from all directions highlights the intricate internal refractions and caustics. Isolated on a solid pure white background. The color palette is a cool gradient of deep blue, purple, and bright cyan highlights.
もちろん、最初から一発でこの画像ができたわけではありません。例えば、初期案では背景に余計なものが映り込んでしまいました。そこで、プロンプトに "Isolated on a solid pure white background(純白の背景に分離)" という一文を加えることで、被写体がくっきりと際立つようになりました。また、「涼しい感じ」というコンセプトを反映させるため、"The color palette is a cool gradient of…" と具体的な色を指定する微調整も行っています。
2. オープニング動画(Veo)
イベントの幕開けを飾る動画として、今回は 30 秒の「カウントダウン動画」と、セッションの合間に流す「幕間動画」の 2 種を制作しました。この記事では、特に印象的だったカウントダウン動画の制作秘話をご紹介します。
この動画は、Veo の Text-to-Video 機能で生成しました。AI の持つ多様性や拡張性を表現するため、さまざまなモチーフで「数字」を表現する映像を作っていったのです。例えば、カウントダウンの「15」や「3」の部分は、以下のようなプロンプトから生成しました。
「15」のカット
ガラスのバナナをスライスする、という突飛なアイデアも、Veo ならまるで現実の映像のように描けます。
Ultra-realistic macro ASMR video: On a dark, polished slate surface sits a vibrant-yellow, translucent glass banana—perfectly ripe in appearance, but clearly a solid piece of glass. A woman’s right hand with short French-manicured nails steadies the banana while a matte-black chef’s knife slowly slices a cross-section. The freshly cut surface of the slice now faces the camera, revealing an intricate, embedded pattern that forms the number '15' within the glass. The hard metallic “clink” and subsequent “clatter” of steel cutting glass are amplified. Lighting is neutral 5500 K daylight; captured with a 35 mm full-frame macro lens at F 1.8 for an extremely shallow depth of field. A white soft-box highlight gleams across the curved surface, and only a softly blurred white chef’s coat fills the background. No text or logos, shot in 4K 60 fps on a locked-off camera. In the final second, the freshly cut slice glides slightly toward the camera, letting golden glints shimmer inside the glass number '15'.
「3」のカット
Veo のプロンプトは、構図・光・カメラの動きまで具体的に指示できるため、映像監督のような感覚で演出を組み立てることができました。
Dynamic POV shot as if riding on the jet's wing, bursting through a massive cloud layer at high speed. The number "3" is revealed as a giant sculptural form made of illuminated clouds and sunlight, perfectly shaped and clearly legible. The camera executes a thrilling barrel-roll motion around the number as we pierce through it. Dramatic shafts of sunlight create god rays through the cloud formation. The sound is the rush of air and the doppler effect of speed. Cool blue and white tones transition to warm gold as we emerge above the clouds. The motion is exhilarating and smooth, with the "3" dissolving into mist particles as we pass through.
カウントダウン動画で意識されたのは、トーンを統一するのではなく、むしろ表現の多様性です。AI の持つ可能性を表現するために、撮影の角度、画風、モチーフなどをあえてバラバラにすることで、多彩なアウトプットが生まれる様子を描きました。
とはいえ、一つ一つのカットで狙い通りの表現を出すには、細かな調整が欠かせません。たとえば、「15」のカットでは "金属がガラスを切る音" が物足りない仕上がりでした。そこで、プロンプトに "hyper-detailed ASMR sound of knife slicing glass" といった要素を追加し、音の気持ちよさが際立つようにしました。「3」のカットでは、雲の形が数字として読めないことが課題だったので、 "clearly legible sculptural form" や "god rays through the cloud formation" などの記述を細かく足し、光の方向と立体感を制御することで数字がしっかり読めるように調整されました。
※プロンプトの工夫について、より詳しく知りたい方はこちらの記事もぜひご覧ください。
【生成】Lyria での生成
映像だけでなく、今回のイベントでは音の部分にも生成 AI が使われていました。会場で流れた音声のいくつかは、音楽プロデューサーの SEKITOVA さん を中心に、音楽生成 AI「Lyria」と「Lyria Realtime」を活用して制作されました。
SEKITOVA さんが注目したのは、「AI にどのように“音の指示”を伝えるべきか」。
プロンプトの粒度、指示の方向性、AI の理解範囲を検証するところから始まりました。
メジャーなジャンルは生成しやすいけれど、音楽自体が記号的であるぶん著作権保護の制約が出やすい。
一方でマイナーなジャンルは学習データが少なく、そもそも出力が安定しない。
だから、形式が定まっていて、でもオリジナリティの余白が残る領域を狙ってプロンプトを調整しました。
SEKITOVA さんは、プロンプトの設計において「自分がどう思うか」よりも「その音楽が社会でどう呼ばれているか」を重視したと言います。Lyria は人間のように音楽的思考をするわけではなく、言葉の集まりが指し示す “抽象的な領域” を再構成する。その特性を理解したうえで、具体的な指示がどの抽象概念に結びつくかを慎重に見極めたのです。
“爆発的だけどスロー” みたいな相反指示は通らない。
でも、“100BPM で包み込むようなグルーヴ” ならある程度は理解してくれる。
それによって狙っている楽曲の雰囲気を引き出すことを優先的に考えました。
この取り組みを通じて見えてきたのは、Lyria が音楽を “考える” AI ではなく、人間の意図を翻訳する媒介だということ。AI が生む音をどう導くかは、使い手の概念整理力にかかっている。それゆえ、「生成の容易さと品質保証を混同してはいけない」とも SEKITOVA さんは語ります。
AI 生成によって、これまでプロの視点が担っていた“品質保証”の機能が失われるリスクがある。
この”品質”とは、単なるクオリティという意味合いだけでなく制作過程から公開後に至るまで、AI 生成物が与えうる社会的影響への責任担保までが含まれると考えます。
現時点では、AI 生成物の上位にプロジェクト管理者の視点や制度を常に置いて”品質”を担保することが必要で、その積み重ねが本当の意味で音楽制作の民主化に繋がっていくのでは。
一方で、イベント内で紹介された音楽生成アプリは、エンジニアのサントリーさん(@soundtricker) が開発したもの。Lyria を使い、ユーザーが「夜のドライブに合う曲」など曖昧なリクエストをするだけで音楽が生成される PoC アプリとして制作されました。
細かい音楽用語を知らなくても、“いい感じの曲”をお願いすれば出してくれる。
AI が人に合わせてくれる感覚が、まさに AI エージェントらしさですね。
このアプリは、音楽生成の民主化という点で大きな一歩です。ただし、SEKITOVA さんが指摘するように、こうした生成の “手軽さ” は、クオリティ管理やブランド安全性の課題とも表裏一体です。だからこそ、ビジネス利用においては、プロフェッショナルによる監修と組み合わせて活用することが重要になります。
映像(Veo)とビジュアル(Imagen)に加え、音(Lyria)までが生成 AI によって作られた今回のイベント。
それぞれが異なる役割を果たしながら、ひとつの世界観を形にしていました。
まとめ:Google の生成 AI でクリエイティブはネクスト ステージへ
今回の事例を通じて、専門的なスキルがなくても、アイデアと思いさえあれば高品質なクリエイティブを作れるということが実証されました。
重要なのは、AI は「人に取って代わる」のではなく、人の創造性を拡張してくれるということです。企画の核となる「何を伝えたいか」「どんな思いを込めるか」は、やはり人間にしかできません。そして、その思いを具体的な形にするプロセスで、Gemini がプロンプト作成をサポートし、Imagen や Veo が高品質なビジュアルを生成してくれる。この Human-in-the-Loop な制作フローが、これからのクリエイティブのスタンダードになっていくと考えられます。
何より、制作プロセスが劇的に短縮されたことで、「何を、どう伝えるか」という、より本質的な戦略部分に集中できるようになります。
この記事が、あなたの「つくりたい」という想いを実現するきっかけになれば幸いです。もし「役に立った!」と感じたら、ぜひ「スキ」で応援をお願いします!
