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TBS『VIVANT』制作陣が語る、Google の AI と描くエンタメの未来

こんにちは。Google の AI「Gemini(ジェミニ)」の公式 note 編集部です。

2026 年放送予定の、TBS テレビの日曜劇場『VIVANT』続編において、映像に Google の動画生成 AI「Veo 3」で生成したコンテンツを採用することが決まりました。Google Cloud 主催「AI Agent Summit」にも登壇し、大きな反響を呼んでいます。

クリエイティブの最前線で、何が起きているのか。TBS テレビで『VIVANT』のプロデューサーを務める飯田和孝さんと、マーケティング&データ戦略局の宮崎慶太さんに、その葛藤や発見、そして未来への期待を伺いました。


AI は「脅威」だった

——単刀直入に、生成 AI が登場した時、クリエイターとしてどう感じましたか?
飯田さん: 正直に言うと、最初に感じたのは「脅威」でしたね。プロンプトを打ち込むだけで映像が作れてしまう。自分たちの仕事は、この先残っていくのかという危機感がありました。ある種、我々エンタメ業界にとっての敵だとさえ思っていました。

『VIVANT』プロデューサー・飯田和孝さん

——その「脅威」という認識が、今回 Veo 3 を導入する「パートナー」へと変わったきっかけは何だったのでしょう?
飯田さん: 2022 年の『マイファミリー』というドラマで、 LED パネルを使ったバーチャル プロダクションを導入した経験が大きいです。従来、車内での撮影は車を牽引しながら公道を走り、丸 2 日かかるのが当たり前でした。天候に左右され、雨が降れば中止。でもコストはかかる。それが、 LED パネルを使うことで、たった 4 時間で撮り終えることができたんです。

——天候や時間の制約から、一気に解放されたわけですね。
飯田さん: ええ。この「テクノロジーが表現の幅を広げ、作業を効率化してくれる」という体験が、「今回の生成 AI も、使い方次第で味方になるんじゃないか」という期待に繋がりました。時間とコストを削減できれば、より重要なことに人的リソースを割ける。そこに可能性を感じたんです。

「マジで助かる」——AI が解放するのは、創造性のための時間

——実際に AI 導入の話を現場、特にクリエイティブの中核である CG チームに持ちかけた時、反発はありませんでしたか?
宮崎さん: 正直、最初は「自分たちの仕事が奪われる」と嫌がられるかな、と思いました。でも、僕が直接 CG チームに説明に行き、実際に AI を使ってもらった時に返ってきた言葉は、まったく逆のものでした。「マジで助かる」と。

(右)マーケティング&データ戦略局・宮崎慶太さん

——「マジで助かる」。それはなぜでしょう?
宮崎さん: あのチームは本当に多忙を極めていて、パツパツなんです。ドラマ制作って、めちゃくちゃお金をかけて全力を注ぐべきシーンと、そこまでではないけど背景として必要なシーンがある。でも、かかる工数は同じだったりする。その「効率化を図りたい、単純だけど工数がかかる作業」を AI に任せられることで、「本当に力を入れたい核心部分の作業に集中できる」と、心から歓迎してくれたんです。

——なるほど。AI は仕事を奪うのではなく、クリエイターを「よりクリエイティブな仕事」に集中させてくれる、と。
宮崎さん: まさに。だから今、社内で AI の活用事例やプロンプトを共有する仕組みを作っています。ドラマ班の発見をバラエティ班が使う、といったことができれば、TBS 全体のクリエイティビティが向上する。導入も、まず前向きな人に使ってもらって成功体験を作り、その良さを実感してもらいながら広めていく。そうやって、ポジティブな流れを自然に大きくしていく戦略です。

AI はまだ驚きは生めないが、「先生」になる

——映像生成だけでなく、企画の壁打ち相手としても Gemini を活用してみているそうですね。
飯田さん: ええ、試しに Gemini に好きなドラマの要素を伝えて、企画案を出してもらったりします。出てきたものはすごく読み心地がいい。でも、現状のモデルは、僕にとっては正直「あ、これ見たことあるな」という驚きのないものでした。そのままではまだまだ企画として通らない。

——それでも、対話を続ける価値があると。
飯田さん: あります。その Gemini との対話の「過程」で、キャラクターを違う方向に動かしてみようとか、違う構成を思いついたりする。そして、それ以上に大きな価値を感じているのは、AI が「先生」になってくれる点です。

——先生、ですか?
飯田さん: Gemini は、僕が「なんとなくこうしたい」と感じていた感覚的なものを、スッと理論立てて言語化してくれるんです。日本のエンタメ業界は、海外と違って演技や演出を学問として学ぶ文化が弱く、「背中を見て覚えろ」という感覚の世界。先輩たちも感覚だから、言語化して教えられない。

でも Gemini は、「このストーリーの流れ上、ここにはこの要素があるべきだ」という理論を教えてくれる。今まで感覚でやっていた部分を、理論で補強してくれるんです。これは、海外のクリエイターなら当たり前に持っている視点かもしれません。僕らにとっては、最高の先生です。

『VIVANT』プロデューサー・飯田和孝さん

 「カスピ海の匂い」は、AI にはわからない

——AI が普及し、誰もがある程度のクオリティのものを生み出せるようになった時、プロのクリエイターの価値はどこにあるとお考えですか?
飯田さん: 最終的に、ぐるっと一周して「個人」がめちゃくちゃ際立つと思っています。AI が生成するものが民主化されていく中で、価値を持つのは「個性」であり、「自分の言葉」、そして「自分の経験値」です。

——経験値、ですか。
飯田さん: ええ。例えば、AI を使えば、行ったことのない国のリアルな映像だって作れてしまう。「海外によく行ってるんですね」と言われて、「いや、全部 AI ですよ」なんて会話が当たり前になるかもしれない。でも、まだ AI にはわからないことがある。

例えば、カスピ海の「匂い」です。カスピ海って、少し草っぽいような独特の匂いがするんです。でも、そこへ実際に行ったことがないと、その感覚はわからない。人の心を本当に揺さぶるのは、五感で触れた手触りや、予期せぬ出会いといった、その人にしか語れないリアルな体験です。そういう部分が、クリエイターの価値として、より際立ってくるんだと思います。

 AI は、スマホと同じ「エンパワーメント ツール」

——未来のクリエイターは AI とどう向き合っていくべきでしょうか。
飯田さん: 「AI に使われるな」ということですね。大事なのは、自分をエンパワーメントしてくれるツールをどう使いこなすか。少し前まではそれがスマホだった。今は AI になった。ただそれだけのことです。

宮崎さん: TBS としては、テレビ離れが進む中で、とにかく「コンテンツの力」を強めるしかない。そのためにも、AI で業務を徹底的に効率化して、クリエイターが「脳を使う時間」、つまり「作る時間」に集中できる環境を作っていきたい。それが我々の戦略です。

——今後の生成 AI 技術への期待はありますか?
宮崎さん: 画質ですね。4K で出力できるようになったら、ワークフローは劇的に変わる。そうなった瞬間、飯田さんは多分、SF ドラマを作り始めますよ(笑)。

おわりに

Google の生成 AI は、クリエイターの仕事を奪う「脅威」ではない。むしろ、クリエイターを単調な作業から解放し、本当に頭を使うべきコアな仕事に集中させてくれる「パートナー」だ。
『VIVANT』の制作現場から聞こえてきたのは、そんな未来への確信に満ちた声でした。Gemini や Veo といった Google の生成 AI が、エンタメとビジネスを面白くしていく未来。もうすぐそこまで来ています!

この記事が、みなさんのチームでもご自身の「ちょっと先の未来」を試すきっかけになれば嬉しいです。今回の挑戦に共感いただけたら、ぜひ「スキ」で応援してくださいね!

さらに、今回の事例を支えた技術や、より高度なエンタープライズ向けの AI 活用にご興味のある方は、こちらの Vertex AI 公式ドキュメントもご覧ください。