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『おかえりジョニー』に寄せて

MUSIC inn Fujiedaでレコーディングした楽曲『おかえりジョニー』がリリースされました。ミュージックビデオも公開になりました。

 用地や物件を探すところから始まって、建設工事における資金の問題や、NPOの設立と運営の課題、とになくいろいろな難所を乗り越えて、ようやくスタジオのオープンにたどり着くことができそうで、安堵しています。

4人でこうしてギュッと集まって、MUSIC inn Fujiedaの音響テストも兼ねて、僕のデモをアジカン・バージョンに仕上げるところから『おかえりジョニー』の作業は始まりました。
これは『おかえりジョニー』のレコーディング本番の模様です。潔がドラムテックの北村君とタンバリンを試しているところです。楽曲の冒頭、右側からその音が聞こえます。
思い起こせば、元々の土蔵はこんな雰囲気でした。これは2階ですね。この2階も元来はなかったそうで、130年の土蔵の歴史のなかでどこかで造り足されたものだろうとのことでした。天井中央の太い梁は今も天井で土蔵を支えています。
土蔵を切って、持ち上げて、基礎を作り直すなんてことを誰が想像したでしょうか。「建てた方が安い」という言葉を恨めしく感じたこともありましたが、やり切って良かったなと音響&建築スタッフ一同思っています。
そんなスタジオに、僕はNPOの理事として、アジカンのレコーディングを誘致しました。きっちり利用料もいただきました。オープン前で収入のない時期だったので、運営的には大変に助かりました。そして、30年来の友人たちが仲間と作ったスタジオを使って、「いい音だ!」と言ってくれたことがとても嬉しかったです。
作業の最中にスタッフが「なんか田村さんとかいう人が外に来ていますが…」と怪訝な顔でスタジオに入ってきました。どこの田村さんかなと思って外に出ると、なんとスピッツの田村さん!!田村さんは藤枝市出身で、MUSIC inn Fujiedaにはいくつかのベースアンプ(ヤバいやつ)を無償貸与してくださいました。(みんな壊すなよ!)

 ここ数年の仲間たちや支援者との協働と苦労だけでなく、自分の青春時代の何もかもが流れ込んでひとつの川になっているかのようで、感動という言葉では収まりきらない、なんとも言えない気持ちでいっぱいです。

 このスタジオが多くのミュージシャンやバンドマンの助けになることを願います。オープンは3/22ですが、既に半年先までの予約が始まっています。レコーディング未経験だという方も、MUSIC inn Fujiedaなら安心して初めてのレコーディングに臨めると思います。気軽に相談ください。

BOSSのエレクトペダルもほぼ全種類無料で使えます。『おかえりジョニー』でももちろん使わせてもらいました。ローランド最高。BOSS最高。神ですね。

 ここからは少しだけ楽曲の解説を。

 エリーとジョニーが出てくるので、これはサザンオールスターズだなと思った方が多いと思います。そういう投稿もいくつか見かけました。それは間違いではありません。ただ、ジョニーという登場人物を想起したのは、くるりの『ハイウェイ』という曲が出発点です。

 大言壮語というか、若者らしい支離滅裂な言葉とイメージを抱えて故郷を飛び出すジョニー。それはかつての僕だし、あの日の誰かや、今日のあなたかもしれない。僕はもうアラフィフというか、ほぼフィフ(喜多さんが言ってた)になって、生まれ育った静岡に戻ってスタジオを作っている。そんななか、ふと、ジョニーが故郷に戻る歌を書いてみたくなったのです。

 くるりからの影響というのは、言語化するのが難しくて、端的に言えば拗れていたというか、ここからはどうしても一人称が「俺」に変化しますが、俺はとにかく、同世代のトップランナーであるくるりを意識しながら、そこからなるべく遠ざかるように音楽を作ってきたと思います。それは拗れた自意識によるものですけれど、端的に「くるりのパクリだ」と言われることが心の底から不本意だったんです。くるりにも失礼だと思っていました。

 リトルレノンをプロデュースしてもらったことも大きいのですが、ここ数年、岸田君とは交流が続いていて、今回のスタジオ建設にあたっては随分と親身になって励ましてもらいました。自分が好きなくるりの曲や演奏のこととか、音楽のこととか、ここには書けないどうしようもないこととか、ゆっくり話をしたり、一緒に町をフィールドワークしたり、酒を飲んだり、ドライブしたり、そうしているうちに、今だったら素直にくるりへのリスペクトを曲のなかにいれられるなって思ったんです。ずっとそうしたかったのかもしれません。

 ジョニーのことは真っ先に岸田君に話しました。

くるりの佐藤君と岸田君がMUSIC inn Fujiedaに来てくれました。感激。

 歌詞を書いているうちに、この時代にあって、飛び出すのはもうジョニーではなくて、女性のほうがいいだろうって思いました。名前はどうしよう。そう思って考えているうちに浮かんだのがエリーで、それはもちろんもうひとりのジョニーというか、サザンオールスターズの桑田さんから連想したものです。そして、ひとりの視点からこの歌をうたうのは違うなと思って、クラムボンの原田さんに連絡しました。

 楽曲は鼻歌から起こしました。もうギターで作るとコードが手癖にしかならず、それがシグネチャーでもあるので避ける術もそんなになく(なぜならばそのコード進行が身体化するくらい好きだから)、しかしコードに縛られるのは嫌なので意図的にメロディーから作ることが増えました。鼻歌は自由でいいです。編曲していく上では、The Beatlesの『In My Life』という曲に想いを重ねました。「There are places I remember」ですね。郷愁の歌でもあります。

 しかし、『おかえりジョニー』はドラムの音がいいですよね。ドラムセットは屋敷豪太さんが貸与してくださったSONORのビンテージです。MUSIC inn Fujiedaでは、オプションになりますがこちらのセットも使用できます。

こちらは京都の土蔵を改築した屋敷豪太さんのスタジオを見学に行ったときの写真です。素敵なスタジオで、大変な勇気をもらいました。思えば、豪太さんと僕たちを繋いでくれたのは岸田君でした。

 楽器や演奏が良いのもありますが、ドラムの音が良く録れるのは、音響チームと建設に携わった皆さんの技術と努力の結晶です。スタジオは建てるまでどんな音がなるか分かりませんが、なるべく良い響きの実現に向けて、多くの知識と経験を寄せてもらいました。それこそが技術ですよね。ギリギリ綱渡りのような修正と判断の連続でしたけれど、こうして素晴らしいサウンドに結実したことを嬉しく思います。アジカンのリハーサルスタジオの3倍くらいの音の密度に感じましたから、どこから誰が来ても、この響きだけは胸を張って「最高ですよ」と言えます。

 長くなりました。

MUSIC inn Fujiedaの築130年の土蔵を改築したスタジオで、この先100年も、素晴らしい音楽が記録されることを切に願います。各地方にも、同じ志のスタジオがありますから、そうしたレコーディングスタジオの発展も願ってやみません。都会の巨大な商用スタジオにも必要性がありますから、どうか潰さないでください。音楽文化が豊かでありますように。

この間は藤枝の高校(今回は2校)で2回目のバンドワークショップを行いました。楽器の音と周波数について説明しているところです。高校生のなかから、凄腕のエンジニアが生まれてほしいです。近隣の高校生は、見学など気軽に相談してください。

 というわけで、MUSIC inn Fujiedaをぜひ使ってみてください。3/22のオープンの日は見学ができるようにしようと考えています。施設内に移転してくるSO GOOD books&stylesも22日にオープンしますので、よろしくお願いします。

後藤正文


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