飛騨で、水はけをとことん考えた欧州型の作業道を見てきた
岐阜でフォレスターズ(株)が企画した「森の道づくりワークショップ」に参加してきた。
近自然の考え方で作った作業道の特徴は、なんとなくは知っていたけれど、実際にどんなものなのかを直接見てみたかった。土中の水の動きからみて、どんな工夫がされているのかにも興味があった。
また、登山道整備にも参考になるのでは、との期待もあった。
欧州式作業道づくりは、どのくらいの密度の路網にするか、コストはどうかけていくかなどの経済や効率の考え方にも特徴があるが、今回は、道そのものの作り方について書く。
また、水の動きについてはわたしの解釈なので、今回案内していただいた中谷さんの言葉そのままではない点も、つけ加えておく。
近自然森づくりの道の特徴
「近自然森づくり」で重要なのが、道づくり。従来の作業道の作り方とは違う点がいくつかある。
「作業道」とは、植林している山林に、木材を運び出す目的で新たに作る道のことを指す。
通常は、ユンボ(=重機。油圧式ショベル)で斜面の一部を切り取り、平らに均し踏み固める。さらに切り取って平らに均して踏む工程を何度か繰り返して、幅を広げていく。

林野庁・急傾斜地における森林作業道の作設より抜粋
欧州型作業道のポイントは、大きく3つ。
❶ しっかり転圧
❷ 屋根型の路盤、V字の溝
❸ 水をゆっくり排水する
① しっかり転圧
路盤をしっかりと圧をかけて踏み固めることが、大きな特徴。
見学した道は、道路工事で見かける転圧ローラーで、しっかり踏み固めていた。
一般的な作業道づくりでは、油圧式ショベルのクローラーで何度も行き来して踏んでいくのだが、それでは圧が足りないそうだ。実は、重さと接地面積で踏圧を計算すると、人もユンボも、約30kPaとなり、ほぼ変わらない。

それでは転圧が十分にできず、路盤の硬さが足りないため、水がしみこんでしまう。通行量の多いところでは轍に沿って凹んでいくので、そこに水がたまったり、水の通り道になる。水がひんぱんに停滞したり通過すると、ぬかるんだり、土が流れ出て徐々に洗掘が進んでいく。
転圧が足りない道の例。ゆるいと土の間へ水が入り込んで、土が動きやすくなる。水気のあるところでは、ぬかるんでしまう。

舗装道路を作るときに見かける「転圧ローラー」で転圧すると、しっかり踏み固まる。ひと手間余計にかかるが、道づくりの時点でコストがかかっても、のちのち直す手間がなくなるので、長い目で見るとコストダウンとなるそうだ。

② 屋根型の路盤、V字の溝
屋根型、またはカマボコ型の路面
欧州型の作業道でもっとも知られているのが、道の形状。路盤の中央が盛り上がった屋根型、もしくはカマボコ型にしている。
この形状だと、水が路盤の左右にすぐに排水されるので、水はけがよくなる。平らだと水が路盤に停滞しやすく、しみこんでしまうため。

実はこの屋根型(カマボコ型)の形状の道は、神社の参道でもよく見られる。「参道の真ん中を歩かない」という神社のしきたりは、もしかすると踏圧を左右に分散させるためなのではないかと思っている。

「神様の通り道だから真ん中を歩かない」。信仰の形をかりて
踏圧を中央に集中しないように道の形状を保っているのでは?
屋根型の道の問題点は、平坦な道よりも難しく、作るのには技術が必要。
V字の側溝と排水
道の斜面側は、V字の三角溝。
U字や平らな箱型よりも、つまりにくく水が停滞しにくい。
実質的な道幅が広がり、脱輪もしないので、ストレスなく通行できる。

ただし、重機でこの形状の路盤と溝を作るには、特殊な重機と技術が必要である。
そういえば、9月に訪ねた山形の未舗装路も、側溝はV字型だった。

斜面側の溝によって、上からの水が地面にぶつかって流速が落ちる。水が分散されてさらにゆるまり、斜面を崩しにくくする。路面に土が流れにくくなるので、段差の効果が長持ちする。


ここが斜面のままだと、雨滴によって斜面から土が流れ出しやすくなり、斜めの面が形作られると、ますます水が走って道を崩していく。

水がとどまらず、地表面を水が動くので、ぬかるみやすくもなる。
ちなみに山で歩くだけの道を作る時にも、かまぼこ型+V字の溝を意識して作っている。
③ とにかく水をゆっくりにする
三つ目の特徴は、路面の上に水を通さない「暗渠(あんきょ)排水」。道の地下に管を通し、排水をする。
暗渠排水は、以下のようなメリットがある。道の開設時に多少コストがかかっても、使い勝手のいい道になる。
・路盤全体が平らになり、重機が安定する。路面上のどこでも作業しやすい。
・凹みがなくなるので、減速することなく走りやすい。
・水を路盤上で流さないので、洗掘されない
暗渠排水は、コストがかかるだけでなく、詰まると機能しなくなってしまうので、日本ではあまり取り入れられてこなかった。
しかし、水切りの溝を掘ったり、ゴム板を斜めに設置したりする方法には、多くのデメリットもある。
・水が集まって強く流れるので、路面を崩しやすい。
・凹みができるので、減速する必要がある。
・凹んだ部分は重機などが安定しないので、作業の効率が下がる。
欧州型の作業道では、漂流物がつまりにくい形状であり、大水のあとのメンテナンスのしやすさゆえに、暗渠排水一択なのだそうだ。
暗渠排水が詰まらないためには、とにかく水の動きをゆっくりにすることだ。水の勢いをいかに無くすかが、ポイントだった。
そもそも管が詰まるのは、水が速く動くから。
水が勢いよく流れると、詰まりやすい。
速い流れの中では、水と漂流物が混ざりやすくなる。移動する漂流物の量も多くなる。
その状態で一気に小さな穴に向かっていくと、穴の入り口に漂流物が張り付いてしまう。入り口が渋滞するので、あとから来た漂流物がさらに積み重なっていく。漂流物が堆積していくと水の通り道がなくなるので、周辺に水があふれてしまう。
逆に流れをゆっくりにすると、水よりも軽い漂流物は浮き、底部で水が流れていく。また、水が一定して動き続けるので、水の通り道が塞がりにくい。
流れが進む方向に硬いものをぶつける。
直接流れが管に向かわないように、管の入り口と流れの本流を違えると、水の勢いがおさまる。
管の出口の傾斜をゆるくすると、出口でも水の勢いがなくなるので、集まるほど詰まりやすい。
ゆるやかに流れるほど引っかかりにくく、つまりにくくもなる。
暗渠の管は、ほぼ水平(ー1°の傾斜)にする
(この現場では、そうはなっていない)

(右)1°の逆傾斜(山側が下がっている傾斜)が理想
勢いをつけるほど、漂流物が吞口に集中しやすく、つまりやすい。水平に近い角度になると、水がゆっくり流れるので、漂流物は浮き、水だけが管の下を流れていく。
吞口を本流から外す

勢いがゆるんだあと、暗渠排水用の吞口に水が流れ込む構造。
流れの本流と呑み口をオフセットにすると、壁に当たって水が減速するので、つまりにくい。また、漂流物は当たった壁付近にとどまるので、穴を塞ぎにくい。
大雨のあとのメンテナンスをしやすいように、予め考えておくことも必要だ。
溝や暗渠の呑み口など土砂が溜まりやすいところは、重機で土砂を掻き出せるように考えておく。
たとえば、吞口の周辺はバケットを入れられる大きさにしておく。どの位置から作業するのか、重機の位置まで想定しておく。
吞口付近で逆流を作らないように、V字にする

(右)吞口の壁が斜めになっていると、漂流物がまっすぐ向きに向かいやすい
ほかに、管の下側を埋める工夫もあった。管の中を生物が行き来しやすくなる効果もある。
吐水側で斜面を削らないような工夫
管からの出口も、水の勢いがつきやすい。吐水側が水圧で勢いがつかないようにも工夫されていた。
・水の出口が傾斜している場合、石段を組んで水の勢いを弱める

原点回帰:屋根型道に学ぶ丈夫で安価な道づくりより抜粋
まとめ
欧州型作業道を実際に見て感じたのが、「いかに水の勢いを弱めるか」と「とにかく路盤を硬く、硬く」の三つだった。
「近自然」は、ひんぱんに使うところは使いやすくし、そうでないところはできるだけ自然に沿わせるという考え方だと思ってる。
だから欧州型作業道は、踏む場所なのか、踏まない場所なのかのメリハリがあるのだと感じた。路盤を硬くすることも暗渠排水も、自然の形を大きく変える造作ではある。しかし長期的にみると、メンテナンスの手間が少なく、管理しやすい道になると感じた。
線形も一定で、排水箇所が等間隔で配置されており、従来の作業道ほど地形に影響されずに整備できるように見えた。
また水切りは、開渠(路上に水を流す)排水をしない徹底ぶり。路盤を固めて水をしみ込ませない点は、人間本位な部分が現れている。
対して日本の従来のやり方は、道は柔らかく地形をとことん読んで線形を考える。路面の上で水切りをするので、水のコントロールが難しい。
地形を読み、土を読み取る経験値が非常に重要だと感じた。
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今回お世話になった、フォレスターズ(株)。
日本各地の市町村の森林管理を支える民間の専門家集団。資格を持つ森林総合監理士がチームを組み、地域の「森づくり構想」の立案から、制度運用支援、林務担当者の育成までを包括的にサポートしています。50年、100年先の未来を見据えた持続可能な森林管理を、行政だけでなく民間の立場から伴走する体制が特徴です。
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土中の水の動き。その原理原則をワークショップで学びませんか。土中の水がどう動いているかは、山の道づくりにも役立ちます。
