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「瞽女の足跡 その五」終了のご報告

2025年12月6日(土)
両国門天ホールにて開催されました、

越後瞽女唄「さずきもん」東京公演
「瞽女の足跡 その五」

無事に終了しました。

公演チラシ(表)
公演チラシ(裏)


普段は単独での活動が多い中、
同じ師匠の下で学び、
瞽女唄を愛するメンバーが集まっての公演は貴重で、

この機会だからこそ伝えられる、
萱森先生の瞽女唄に対する思いや考え方。

その結果生まれた、
個性豊かな「さずきもん」たちの唄を
皆さんにお届けするべく、
私なりに構成や解説の内容も考えました。

井浦さんの門付け唄「かわいがらんせ」で開幕。
土臭さ、荒々しさは天下一品。
喋りも佇まいもすっかりベテランの風格です。

今回の見どころのひとつは
「口説き」の聴き比べ。

「口説き」は心中事件や世間の出来事を題材にした語り唄で、
長い物語から小話のようなものもで幅広くあり、
江戸時代に流行した
瞽女唄の中心的なジャンルの一つです。

津軽じょんがら節の元になったとも言われています。

福岡から初参戦の大重さんには
長岡瞽女・小林ハルさんの唄を参考にした
「正月祝い口説き」

熟練メンバーの井浦さんには
同じ長岡瞽女の土田ミスさんの唄を参考にした
「へそ穴口説き」をそれぞれ詠んでもらいました。

内容も、
お祝いお祈りの唄と、
へその穴が他の体の穴を羨んで口説く、
所謂「春歌」のジャンルとで大きく違い、

特にミスさんの口説きは
三味線を極端に低い音で調弦するので、
ハルさんの口説きとは
似ているようで全く違う印象なのです。

すっかりベテランとなった井浦さんと、
人前で演奏する経験の浅い大重さんの
コントラストは、
熟練の師匠や姉さんの中に
弟子入りしたばかりの幼子がいた
当時の瞽女さんたちのありようを見るようで
味わい深く、

それなのに二人とも、
荒々しく土臭く、
上手に歌うことを拒否するように
言葉をただ繰り出していく感じは共通していて、

萱森先生が小林ハルさんや他の瞽女さんから得た
瞽女唄の印象、特徴をしっかり体現しているところは、
萱森先生の指導の賜物でもあり、
二人が本当に素直に真っすぐにお稽古に向き合っている姿が
思い浮かばれました。

そして、「口説き」番外編ともいうべき
私のオリジナル曲「猫好き口説き」
私のストーリーに加え、
猫好きの井浦さんが作ってくれた続きのストーリーと、
大重さんには四つ竹で盛り上げてもらい、
ご紹介させていただきました。

福岡から初参戦の大重さん。
少しはにかみながらの自己紹介が初々しくてほっこり。
ただ真っすぐに言葉を発するような唄いまわしは、正に瞽女唄でした。

そして、今回のもう一つの見どころは
新作祭文松坂「耳なし芳一」でした。

主催の稲葉さんの後押しもあり、
昨年から新作の祭文松坂に挑戦しているのですが、

「耳なし芳一」の作者、
小泉八雲ことラフカディオ・ハーンさん
瞽女唄に対して素敵な言葉を残していてくださっていて、
ずっと気になっていたのと、
ちょうど朝ドラの「ばけばけ」の放送が重なったことから、
この作品を選びました。

そして、怪談という物語の性質から、
特に後半部分の節回しを
今まで使ったことのない
「長岡瞽女屋の節回し」で詠んでみたい!!
という衝動に駆られ、
自分なりに稽古をしたのち、
先月、約1年半ぶりに
萱森先生にお稽古を見てもらう為に新潟まで行きました。

この「長岡瞽女屋の節回し」
10年以上前にお稽古だけはしたことがあったのですが、
お稽古ののち、
それまで使っていた「新津組の節回し」の調子が
おかしくなったという経験があり、
ずっと避けていたのです。

でもこれを機に
久しぶりに萱森先生にお稽古を見てもらい、
「耳なし芳一」についても
言葉の表現など助言や提案をしてもらい、
より感覚的な文句に仕上げることができたし、
「長岡瞽女屋の節回し」も自信を持つことができました。

「新津組の節回し」がどうなっているかは不安ですが…)

そんなこんなで迎えた本番。
前半は渡辺キクさんという瞽女さんが使っていた
「片貝組の節回し」で。
こちらはテンポよく物語を展開しやすい節回しで、
より軽い感覚で物語世界に入りやすく、
比較的得意に感じている節回しです。

とはいえ、
本番というプレッシャーはあり、
焦るそうになる気持ちを制御しつつも
最後まで順調に詠み終え、

そして、問題の後半戦。

言葉を最後まで丁寧に紡ぐことに集中しながら
順調に詠み進めていたはずが…

客席からだろうか…
「ピシッ」かなんかの音がして、
もしかして、
舞台セットとして張られた結界が破られた音?

と思った瞬間から、
三味線の勘所が合わなくなり、
調弦を直そうとしてもうまくいかず…

なんか変だぞ?
と心の半分では焦っているのに
物語には集中している不思議な感覚…
体がどんどん熱くなり汗がじわじわ沸いてきて…

その感覚が亡霊が近づいてきて
耳を引っ掴まれる感覚と重なって、
詠み終わったら茫然息切れ状態でした。

何かが起きる両国門天ホールです。

どうしたものかと焦る自分と物語に熱中する自分。
二人の自分を行き来して大忙しでした(◎_◎;)

今回の語りは「良い感覚」もありつつ、
結界が破れなければ、
また違った感覚になっていたのかも…
とか、
理想とする語りにはまだ届かない
「もっといけそう」という感覚も残ったので、

またどこかで披露できるように、
自分の中で物語を成長させたいという思いが募りました。

お客様からは

「耳なし芳一」は圧巻だった。
物語の緊張感に引き込まれた。
CDにしてほしい。

など、
好意的な感想をたくさんいただいたので、
CD化、考えます。

結界をイメージしたという舞台セット。
物語りを詠んでいる最中は本気で破れたかと思っていました(◎_◎;)・・・

そして、最後は山形県の民謡
「花笠音頭」をお客様も全員で唄ってもらいました!!
手拍子も起こって盛り上がり、
みんな唄ってくれて嬉しかったー\(^o^)/


今回も、面白い会になりました。

主催の稲葉さんには
私のやりたいことを自由にさせてもらって、
本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

この面白さ、
もっともっとたくさんの人に知ってほしい!!
そんな思いが募りました。

主催の稲葉さんはじめ、
スタッフとしてご協力くださった皆様。
遠くから参加してくれた
さずきもんメンバーの井浦さん、大重さん。
ご指導くださった萱森先生。
来てくださったお客様。
気に掛けてくださった皆様にも
心より感謝申し上げます。


来年は
2026年12月12日(土)開催の予定です。

「猫好き口説き」で3人共演。
楽しかったー(o^―^o)

【演目】

門付け唄「かわいがらんせ」 井浦さん
祭文松坂「耳なし芳一」1段目(片貝組の節回し) 小関
正月祝い口説き 大重さん
へそ穴口説き 井浦さん

休憩

祭文松坂「耳なし芳一」2段目(長岡瞽女屋の節回し) 小関
猫好き口説き 小関/井浦さん/四つ竹:大重さん
花笠音頭 全員

公演プログラム(表)
公演プログラム(裏)


最後にラフカディオ・ハーンさんの
瞽女唄を聴いてのお言葉を書き記します。

・私はこれほど美しい歌を聴いたことがありません。
 その女の声の中には人生の一切の悲しみと美が
 また一切の苦と喜びが振動しておりました。

[文化人類学者/国立民族学博物館教授:広瀬浩二郎氏より]

・目に見えないものを追い求める気持ちとでも言ったらよかろうか。
 きっと歌い手の声の中に
 ひとつの民族の経験の総量よりもさらにもっと何か大きなもの、
 たとえば、
 人間生活のごとく広大で
 永遠に変わることのない何ものかに訴える力があったからだと
 私は確信する

[越後瞽女唄演奏者:萱森直子先生のメモより]

スタッフの皆さんと。
ありがとうございました<(_ _)>

※撮影:栗原隆一

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