議員を『正しく知る』ということ ── 大田区政務活動費不正から考える議員との関わり方
こんにちは。日本GR協会 事務局です。
代表理事の吉田雄人がメールマガジンでお届けしている考察を、 noteでもご紹介する「吉田雄人のGR徒然」。第2回をお届けします。
今回のテーマは、2026年7月に大田区が元区議会副議長を刑事告訴した、 政務活動費の不正受給事件です。 10年間にわたって続いたこの不正の裏には、 制度そのものが抱える構造的な問題がありました。
そして、この事件は「議員とどう関わるか」を考えるうえで、 GRの実務にも通じる示唆をくれます。 前回の八代市の事件が「見返りを差し出す側」の話だったとすれば、 今回は「見返りを受け取る側」の話。 GRのもう一つの一線について、代表・吉田が書いています。
それでは、どうぞお読みください。
■切手換金で1200万。大田区議会の政務活動費不正はなぜ10年も続いたのか
先日の7月13日東京都大田区は、元区議会副議長を詐欺の疑いで刑事告訴しました。10年間にわたって区政リポートの発行・郵送に関する架空経費を計上し、制作業者に領収書を偽造させ、購入した切手を換金するという手口で、計約1190万円の政務活動費を不正に受給したとされています。
今回は、この事件を入口に「政務活動費とは何か」「なぜ不正が起きるのか」を整理した上で、官民連携に関わる皆さんに知っておいてほしいことをお伝えします。
(本当は福岡県議会のことも話したいですが、まだ「渡した」「もらってない」の言い合いの段階なので・・・(苦笑))
■そもそも「政務活動費」とは何か
政務活動費とは、地方議員が調査研究・広報・研修などの議員活動を行うための経費の一部として、自治体から支給される公費です。
金額は自治体によって大きく異なります。都道府県や大都市の議員では年間数百万円規模にのぼる一方、町村議会では実態がかなり異なります。全国926町村のうち政務活動費に関する条例を制定しているのは約21%にとどまり、交付している自治体でも約半数が月額1万円に満たないというのが実状です。つまり「全議員が多額の政務活動費を受け取っている」というイメージは正確ではなく、規模の小さな自治体の議員の大半は、そもそも支給されていません(なので不正も、もちろんありません!)。
■今回の手口——なぜ10年も続いたのか?
手口は単純です。区政リポートの発行枚数を水増しした領収書を業者に作らせ、大量郵送を装って購入した切手を換金する、というものでした。ではなぜ10年も続いたのか。まず、政務活動費は議会が自律的に管理することになっています。これは、議会の独立性を守るための設計であり、一概に「悪い仕組み」とは言えません。ただ、行政側が費用対効果を検証したり、不正をチェックしたりするインセンティブが働きにくい構造なわけです(今回も発端は党都本部の内部監査でした)。
■多くの自治体では厳格化が進んでいる
念の為に申し上げておくと、政務活動費をめぐる不正は10年ほど前に全国で相次いで発覚し、多くの自治体でその後、領収書のネット公開、第三者機関によるチェック、後払い制の導入などの改革が進んでいます。今回の大田区の事例は、そうした改革の潮流の中でも旧態依然とした運用が温存されていたケースと見るべきで、全国の議会がおしなべて同様というわけではありません(監査委員等による第三者機関の年度ごとのチェックが、私は必要だと思っています)。
■もう一つの論点——区政リポートは「政治活動」ではないのか
今回の不正の舞台となった「区政リポート」ですが、実はここには別の論点もあります。区政リポートとは、議員が有権者に配布する活動報告のようなものです。これは本来、選挙・後援会活動に近い「政治活動」と見なされ、政務活動費の対象外とすべきという議論が以前からあります。
実際、政務活動費の使途として不適当なものには「政党活動・選挙活動・後援会活動」が挙げられており、区政リポートの位置付けは自治体ごとのグレーゾーンになりやすいのです(実際に、区政リポートの多くには政党名が記載されていることがあります)。今回の問題は、架空経費・領収書偽造という明確な不正ですが、その「舞台」として区政リポートが使われた背景には、この使途の曖昧さもあります。
■官民連携に関わる皆さんへ——政務活動費を「読む」技術
最後に、実務的な視点をお伝えします。
政務活動費の収支報告書は、多くの自治体でウェブ上に公開されています。これは単に不正チェックのためだけでなく、「その議員が何に関心を持っているか」を知る手がかりにもなります。調査研究費として何を調べているか、視察先はどこか、どんな資料を購入しているか——これらは議員の政策関心を映す鏡です。
官民連携を推進する上で「どの議員にアプローチするか」を考えるとき、政務活動費の使途はその判断材料の一つになります。これも正当なGRの情報収集のあり方です(ひどい議員の炙り出しにも使えます(^o^)/)。
議員を正しく知り、正しく関わる。今回の事件はその重要性を、改めて問い直す機会だと思います。
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