料理人の仕事は、最後は身体で決まる


— 頭ではなく、手が覚えている —
料理は、考える仕事でもある。
温度を計算し、
状態を見極め、
組み立てを整える。
理論は必要です。
知識もまた、支えになります。
けれど厨房に立ち続けていると、
それだけでは届かない領域があると感じます。
火にかけたときの音。
立ち上がる香り。
わずかな変化の気配。
それらを一つ一つ、言葉にすることは難しい。
けれど身体は、それを覚えている。
もう少し火を入れるか。
ここで止めるか。
あと一瞬、待つか。
その判断は、考えているようでいて、
同時に身体が先に動いていることがあります。
長く繰り返してきたことが、
言葉を経由せずに現れる。
料理は科学であり、
同時に現場の仕事です。
理論が支える部分と、
身体が引き受ける部分。
その両方が揃ったとき、
ようやく一皿が整う。
手に残る感覚。
火との距離。
包丁の重さ。
積み重ねてきた時間は、
身体の中に静かに残っていきます。
料理人の仕事は、最後は身体で決まる。
考えたことも、
迷ったことも、
すべて含めて、
最後にかたちになるのは、
身体を通った判断です。
言葉にできることには限りがある。
けれど身体は、
それ以上のことを覚えている。
だからこそ、
今日も同じように立つ。
繰り返しの中でしか、
辿り着けない場所があると思っています。

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