輪廻は廻る 〜異世界、アンジェの奮闘記〜
第一部 子爵領幼女編
第二話 情報収集と残念アンジェ
翌朝から、アンジェは本に嚙じり付くように眺めた?
俺は、頭を抱え込みそうだった、こっちの言葉はアンジェ頼みで、そのアンジェが読み書きが不完全なのである。
(・・・こんなん読めるかーい。ハァハァハァ。ダメである、アンジェは、残念な子だった。)
仕方ない、お父様に誰か専属教師を付けて貰える様にお願いしてみよう。貴族令嬢なのだから、そのくらいの我儘は良いだろう。
俺は、書室を出て部屋へ戻ると、アニーがやって来た。
(あ~、駄目だ。わたくし・わたくし・わたくし、女の子として言葉も直していかないと、怪しまれるわ。『グフッ』)
「お嬢様、本日は如何されますか?」
と聞いてきた。
アンジェは、
「何か、字や計算の勉強をしたいのだけれど、本はないかしら。」
すると、アニーは
「どうなされたのです。あれだけ嫌がっていたのに・・・。」
嬉しいのか、驚いているのか、アニーは涙ぐみながら笑うと、小走りに部屋を出ていった。
結果、今までのアンジェは勉強の時間を遊び、甘やかされ、カマッテちゃんの残念令嬢だったと推察する。
再び、アニーがやって来た。
「お嬢様、旦那様がお呼びです。」ドアの横へ一歩下がり頭を下げるアニーを見て、
「どうしたのかしら?急な用事でも出来たのかしら。」
と呟きながら、執務室へアニーと向かう。
アニーが、扉の前でノックをすると中から
「入れ。」
とお父様の声が聞こえた。
アニーが扉を開けて、私を先に通すと後に続いて中に入る。
お父様は
「して、詳しく説明してくれ。」
アニーは、私との先ほどの部屋でのやり取りを説明する。
そんなに大事な事なのか?と思いながら熱心に説明するアニーを待つ、待つ、松?
「真か!」
お父様の一声でビクッと背筋が伸びる。おめでたいと喜ぶ姿に、アンジェは自分の推察は間違っていなかったと思った。
「それで、何時から始めようか?」
お父様の言葉に、
「出来るだけ早く始めたいですわ。文字、計算、国や領地の事、たくさん教えて頂きたいのです。」
と答えると、
「しかし、何故急に心変わりをしたんだい。」
背筋にヒヤリと汗が流れる。
「昨日のお父様のお仕事の話を聞いて、私も淑女の嗜みとして出来る事をしないといけないと、そう思ったのです。」
私の言葉に、お父様は笑顔になる。
「そうであったか、アニーとミリーはアンジェの教師にと留め置いていたのだよ。2人からしっかりと学ぶと良い。」
アニーも笑顔になり、
「一年間、お待ちしたかいがありました。」
(おおう。本人を目の前に、ポンコツ宣言されたよ。本気か本気なのか?本気ですよね〜。)
アニーは、泣いてらっしゃるよ。お父様も目尻抑えている。今日は赤飯かと、残念アンジェに期待が増していく。
(そこまで、喜ばれると後には引けない!背水の陣で追い込まれている様な気がする。)
ヒュ〜ッ、崖っぷちである。
「お父様、お仕事のお邪魔をして申し訳ありませんでした。部屋に戻り、アニーとミリーと一緒にこれからの事を話してくるわ。」
語尾に(わ)を付ければそれらしく聞こえるのかしら?と思いながら執務室を出た。
「アニー、ミリーは何をしているのかしら?」
と聞くと
「奥様へ付いていらっしゃるのではないかと。」
私は
「なら、今から呼びに行きましょう。早く始めないと、日が暮れてしまうわ。」
と言うと、お母様の私室へ向った。
今度は、私がドアをノックした。 「どうぞ、お入りになって。」
とお母様の声がした。
私は、アニーと共に入るとお父様とのやり取りを説明した。
お母様も笑顔になると
「ミリー、良かったわね。」
と侍女の手を握りしめて涙する。
(どんだけ、期待を裏切ってたんだよ!と心で叫ぶ。そして、このポンコツアンジェめ。と罵った。)
「お母様には、ご迷惑をおかけします。アニーとミリーを先生として私の下へお貸し下さい。」
私の言葉に、
「そんな事、気にしなくていいのよ。しっかり学ぶのですよ。」
とお母様から励ましの言葉を貰った。
私は、
「ですが、お母様のお付きの侍女はどう致しましょう。」
「そんな事は気にしないで、ロッテがいるわ。ずっと傍にいたのはロッテなのよ。アンジェが逃げ回ってお勉強をしない物だからアニーとミリーも私達のお手伝いをして貰っていたのよ。」
と微笑むお母様。
(親バカである。ここに来るまで、何本の矢が胸に突き刺さったか。)
「お母様、有り難うございます。(グズっ、嬉しくて涙が止まらない。)」
私達は、お母様の私室を後にしてアンジェの部屋へ移動した。
私は、
「アニーとミリーは一年も待っていてくれたのよね。特別なの?どうしてなの?」
と聞くと、二人の自己紹介から始まった。
アニーは、長い青髪を1つに結んだ美人さんだ。リヒタル子爵領に二つ有る男爵家の一つカスタール男爵の次女アニール15歳だった。
ミリーは、緑の髪を2つに分けて結んだ美人さんだ。そして、もう一つのエンドール男爵の三女ミリーネ15歳であった。
元々、アンジェの教師にとお父様が頼んでいた。
(ん〜、アンジェの記憶から何も思い出せない?こいつ、初めから逃げやがったな!あ~あ~、いかんいかん、集中しなくては。)
えっ、家は子爵なの?知らんかった〜。今さら聞けないし助かったよ。
それから、字や計算は、二人とも出来るので交代で問題ない。
国の事はアニーが詳しいそうだ。
ダンスに刺繍はミリーが得意だそうですって。ちょっと顔に出たのかミリーから
「ダンスや刺繍は淑女の嗜みたしなみ意中の男性と、もしお相手が出来ないとなれば社交界に出ることも、お慕いしている方へお渡しする物も無いではありませんか!」
『ガ~ンガ~ンガ~ン』叱られた。
思考復帰します。
(んっ?意中?男性?いやいや無い無い無い。)
あれっ、アンジェリカは女の子、相手は男、現実を突きつけられて『ウプッ』、レロレロレロと脳内でちびアンジェがもどしている。
隣で、アニーも
「うんうん」
と相づちを打つ。
3人で話した結果、朝からは文字の読み書き、午後から日替わりで計算、ダンス、刺繍をすることが決まった。
文字の読み書きが出来るようになれば、国や子爵領の事を追加していくそうだ。私は聞く担当で殆ど二人が決めていった。
(お〜、目が燃えている。)
いつもと違う二人を見ながら、日が暮れていった。
夕食の時間になり、アニーとミリーを連れて食堂へ向った。
(残念、赤飯はなかったよ。)
だが、用意された料理は、昨夜と比べても豪華であった。
何のお祝いやらと、心の中で笑うしかない。
しかし、食べ切れるのだろうか?赤いスープ(血ではない、ミネストローネっポイ。)焼き魚にお肉(何の肉かはわからないけれど。)サラダにパンが添えてあった。
貴族バンザイだ。どれも美味しいとガツガツ食べていると、お父様とお母様が残念な一言を
「やる気になったことは、素晴らしいことだが、先ずはテーブルマナーを早く覚えなさい。」
と続けて言われたものの、二人とも笑顔だったので頑張って食べたのだった。
食事を済ませて、部屋に戻るとお腹を擦りながら
「食べ過ぎた〜『ケプッ』」
とベッドへ転がり込んだ。
程なくして、アニーがお風呂の案内にやって来た。
おや、毎日お風呂?下水もないのに、上水があるはずがない?
そんなに裕福なのか、と思いながらアニーの後をトテトテトテとついて行く。
服を奪われ脱がされていく、何事も慣れである。そこに言葉の矢が飛んできた!
「アンジェ様、食べ過ぎです。」
と言いながら、ポッコリ出たお腹をツンツンされる。
「お父様とお母様たちが、持て成してくれたのだから、勿体ないじゃない。」
と反論すると、アニーも
「それは、大切な事ですが程々に嗜むたしなむことが最も大切なことです!」
と怒られた。
「アンジェ様は、寄親である、侯爵家に嫁がれるかも知れませんから、小さく痩せてなくては行けませんよ。」
「はっ?何言ってるの?寄親〜侯爵〜。」
お湯に浸かりながら、温まる体に顔もホヤ〜と崩れる。
アニーは、右手を頬にあて困った様に見ている。
そう、アンジェは、まだまだ残念な女の子なのであった。
