失注の理由は競合ではなかった。購買チームの74%が、社内で揉めている
2025年5月、Gartnerは637名のB2Bバイヤーへの調査結果を公表した。B2Bの購買チームの74%が意思決定プロセス中に「不健全なコンフリクト(unhealthy conflict)」を経験しているというものだ(Gartner, 2025年5月)。
商談が進まない理由を、マーケターは競合製品の優位性や価格差に求めがちだ。だがGartnerはより本質的な構造を指摘する。B2B商談が失敗するケースの80%は、外部の競合要因ではなく、購買組織内部でのコンセンサス形成の失敗に起因する。「良いコンテンツを作り、社内推進者(チャンピオン)を育てれば商談が動く」という前提は、今や再検証が必要だ。
購買委員会は9〜11人に拡大している
Gartnerの2025年調査によれば、B2B購買における平均的な購買グループは9〜11名で構成されており、2017年時点の5〜7名から大幅に拡大している。Forresterの「State of Business Buying 2024」はさらに踏み込み、平均的なB2B購買には社内13名・社外9名が関与すると報告した(Forrester, 2024)。
構成の多様性も増している。購買グループは最大4つの機能部門にまたがり、各メンバーが異なる優先事項と評価基準を持つ。CFO承認が必要なケースは79%に上り、CEO直接関与も38%の案件に及ぶ(Attainment Labs, 2025)。こうした多層化が進む中で、単一のチャンピオンとの関係構築だけで商談を前進させようとするアプローチが、購買委員会内の未接触層を放置し、内部対立の温床になっているのではないだろうか。
合意に達した購買グループは高品質な意思決定を2.5倍多く報告する
Gartnerの同調査(2024年8〜9月、632名)は、コンセンサスに到達した購買グループが、高品質な意思決定を報告する確率が2.5倍高いことを示している。「コンフリクト」は単なる社内の摩擦ではなく、成約品質と直結する変数だ。
Forresterも「State of Business Buying 2024」で86%の購買プロセスが途中で停滞し、81%のバイヤーが最終的に選んだプロバイダーに不満を抱くと報告している。商談が「止まっている」と感じられる状況の多くは、ベンダー側の問題ではなく、購買組織の内側でコンセンサス形成が機能不全に陥っているのではないだろうか。
コンテンツがチャンピオン1人に最適化されている構造問題
Forresterの2025年バイヤーズジャーニー調査によれば、B2B購買の73%が3部門以上にまたがり、購買グループは営業と接触する前に17以上のタッチポイントを経由する。さらに、購買プロセス開始時点で68%のバイヤーがすでに特定ベンダーを筆頭候補として持っており、そのDay One候補が最終的に選ばれる確率は80%に達する(Forrester, 2025)。
マーケティングがチャンピオン向けのコンテンツに集中するほど、経済的バイヤーや技術評価者・コンプライアンス担当者には届かず、彼らが内部で「反対票」として機能してしまうのではないだろうか。コンテンツが特定の役割にしか対応しない設計になっているとすれば、86%の購買停滞はその構造的帰結である可能性がある。
マルチスレッディングが示す2.4倍のクローズ率
ZoomInfoのパイプライン調査によれば、1商談あたり3名以上に接点を持つマルチスレッドの取り組みは、シングルスレッドと比べて2.4倍のクローズ率を記録している。
購買委員会に参加する各役割が求めるコンテンツは異なる——チャンピオンにはROI・導入事例、経済的バイヤーにはTCO・財務インパクト、技術評価者にはアーキテクチャ文書・セキュリティ仕様、実務ユーザーにはワークフロー動画。購買委員会の役割別に設計されたコンテンツが届いていれば、74%のコンフリクトの一部は事前に解消できるのではないだろうか。
実務示唆
① 役割別コンテンツマッピングの実装
経済的バイヤー向けにはTCO・ROI計算資料、技術評価者向けにはアーキテクチャ文書・セキュリティ仕様、実務ユーザー向けにはワークフロー動画と、役割ごとにコンテンツを分けて整備する。
② 「社内説得用資料」の明示的設計
チャンピオンが社内の反対役(Blocker)を説得できるよう、競合比較・リスク反論テンプレートなど、チャンピオンが使うコンテンツを明示的に設計する。
③ 早期マルチタッチ施策の優先
ABMキャンペーン・ウェビナー招待・技術ブリーフィングなど、1商談につき複数の役割に同時接触できる施策を、リード育成の上流から組み込む。
出典
・Gartner, "74% of B2B Buyer Teams Demonstrate Unhealthy Conflict During Decision Process," 2025年5月(637名調査)
・Forrester, State of Business Buying 2024(86%停滞・社内13名関与・81%不満)
・Forrester, Buyers' Journey Survey 2025(68%フロントランナー・80%勝率・17タッチポイント)
・ZoomInfo Pipeline Report(マルチスレッド2.4倍クローズ率)
・Attainment Labs / Gartner 2025(CFO承認79%・CEO直接関与38%)
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