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スコアが高いリードと、ランダムに選んだリード。成約率は同じだった

MQLを毎月渡し続けたマーケチームが、ある日、営業から面と向かって言われる——「あなたたちのリードは使えない」。これは人格否定ではない。構造的な必然だ。

結論を先に書く。MQLが機能しないのは設計の問題ではなく、「購買の準備度をポイントで測れる」という前提自体が崩れているからだ。スコア97点のリードが競合の情報収集員で、スコア40点のリードが翌週に稟議を通す——これは例外ではなく、日常だ。


「人間が決めたスコア」の限界

ある企業では、スコアリング済みリードとランダム抽出リードを同じ営業チームに四半期通して振り分け、成約率を比較した。結果に統計的有意差はなかった。月単位で調整してきたスコアリングモデルが、サイコロと同じ精度だったということだ。

スコア97点のリードに営業が即座にアプローチした事例もある。蓋を開ければ、競合分析のための情報収集だった。購買権限も予算もない。スコアリングモデルが「最もホットなリード」と判定したものの正体がこれだ——こうした逆転は珍しくないのではないだろうか。

そもそもスコアリングモデルの設計会議は、しばしば政治劇になる。「ブログDL=5点、ウェビナー=10点、料金ページ=15点」。根拠を問う声は上がらない。CMOが「ウェビナーは20点の価値がある」と言えば、それがデータになる。実態はスプレッドシートを使った当て推量だ。

信頼が崩壊した結果、営業はMQLキューそのものを見なくなる。MQLの半数に営業が手をつけないという調査結果がある(Marketo)。さらに購買プロセスの大半は、見込み客が営業に接触する前に完了している(Forrester)。Slackのプライベートコミュニティ、ChatGPTでのベンダー比較、G2のレビュー——スコアリングモデルの視界にはいずれも入らない。スコアリングが捉えているのは、購買行動全体のごく一部に過ぎない。

実務者が動き始めた3つの方向

1. シグナルスタッキング——複数の兆候を重ねて判断する

単一のスコアではなく、複数の購買シグナルを重ね合わせる。資金調達と新VP着任が重なったアカウントに、48時間以内にパーソナライズドメールを送る——このアプローチのミーティング設定率は40〜60%に達するという報告がある。コールドアウトリーチの2〜5%とは次元が違う。シグナル1つは「偶然」かもしれないが、3つ重なれば「意図」になる。

2. スピード>スコア——来た瞬間に判断する

リードを何日もスコアリングパイプラインに寝かせるより、5分以内にコンタクトする方が成約率は大幅に高い(MIT / InsideSales.com)。スコアリングを完全に廃止し、フォーム送信の瞬間にミーティングを自動設定する仕組みに切り替えた企業では、設定数が5倍に達した事例もある。スコアリングの精度を上げるより、スピードとルーティングの精度を上げるほうが成果に直結した——この割り切りは示唆的だ。

3. アカウントの購買ステージで判断する

個人のスコアではなく、アカウント全体が購買ジャーニーのどこにいるかを追う。6senseはこれを「6QA(6sense Qualified Account)」と呼び、決定・購買ステージに入ったアカウントだけを営業に渡す。前回書いたバイインググループの「面」を、購買ステージという時間軸で捉える発想だ。

ただし、インテントデータには構造的な欠陥もある。競合他社も同じデータフィードを購入しているため、同じ週に同じアカウントに同じピッチが届く。6sense自身の調査によれば、買い手は初日に平均4社をショートリストに入れ、95%はそのリストから購入する。シグナルが届く頃には、もう手遅れかもしれない。年間6〜12万ドルの投資に見合うかは業界次第で、テクノロジー/SaaS以外ではデータの正確性に課題が残るという声も多い。

AQL——Forresterが名付けた「名前のない概念」

Forrester(旧SiriusDecisions)は2012年にDemand Waterfallを改訂し、MQLの前段階にAQL(Automation Qualified Lead)を設けた。MA(マーケティングオートメーション)に取り込まれた問い合わせを自動で洗浄・スコアリング・ルーティングするステージだ。

しかしForrester自身が「最も誤解され、不適切に運用されているステージの1つ」と認めている。実際のCRM設定やSlackチャンネルでAQLという言葉を見かけることはまずない。そして今、Forresterは「B2B Revenue Waterfall」に進化させ、MQLそのものの廃止を提言している。問い合わせからクローズまでの転換率は1%未満だと指摘して。

6QA、シグナルベース・セリング、オポチュニティ・ベース・プロセス——呼び名は定まっていない。しかし方向は共通している。「人間がルールを書く」から「機械がパターンを検知する」への移行だ。

Gartner予測と、冷静に見るべき現実

Gartnerは2025年10月、「2028年までにBtoB購買の90%がAIエージェントによって仲介され、$15兆がAIエージェント経由で動く」と予測した(Gartner Top Predictions 2026)。

しかし同じGartnerが2025年6月に、「エージェンティックAIプロジェクトの40%以上が2027年末までにキャンセルされる」と予測している。11月には「AIエージェントは営業の10倍の数になるが、生産性が改善したと報告する営業は40%未満にとどまる」とも。

興味深いのは、ABMを導入した企業の80%近くが依然としてMQL件数で成果を報告していることだ(6sense / RevBuilders)。ABM固有の指標で測定しているのはわずか29%。MQLを手放せない理由は、そのKPIでCMOが取締役会に報告しているからだ——代替指標への移行は予算の根拠を失うリスクと同義になる。

90%という数字だけを見て飛びつくのは早計ではないだろうか。テクノロジーへの期待ではなく、自社のデータ基盤とプロセスの成熟度で判断する——それが実務者の姿勢だろう。


MQLが死んだあと、代わりになる「1つの指標」は存在しない。あるのは方向性だ——人間の思い込みでスコアを付ける時代から、シグナルで自動判断する時代への移行。まだ名前すら定まっていないこの変化を、過大評価も過小評価もせず見極めていく。教科書に載っていないBtoBマーケの次の現場原則を、引き続き掘り下げていく。

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出典:

Forrester / SiriusDecisions: Demand Waterfall (2012改訂) — AQL定義

Forrester / SiriusDecisions: "The AQL — A Missed Opportunity With Lead Scoring?" — 「最も誤解され、不適切に運用されている」

Forrester: Revenue Process Alignment Series — MQL廃止提言、問い合わせ→クローズ1%未満

Gartner (2025-10): "Top Predictions for 2026 and Beyond" — 90%がAI仲介、$15兆

Gartner (2025-06): エージェンティックAIプロジェクトの40%以上がキャンセル予測

Gartner (2025-11): AIエージェントは営業の10倍、生産性向上は40%未満

6sense: 6QAモデル / Buyer Experience Report 2025

#マーケティング #BtoB #リードスコアリング #デマンドジェネレーション #SaaS

MIT / InsideSales.com: Lead Response Management Study

Marketo: MQLの半数に営業が未対応

6sense / RevBuilders: ABM導入企業の80%がMQL件数報告

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