【VOL.44】ハザードマップを"使いこなす"ための3つのポイント|週末30分でできる「防災散歩」のすすめ
このたびの地震で被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
不安なニュースが続く中で、家族の安全についてあらためて考えられた方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「避難経路」と「家族のルール」という、ご家庭で話し合いやすい基本のポイントだけをやさしくまとめました。
心が少し落ち着いたときにでも、ゆっくり確認するためのメモのようなものとして、そっとお役立ていただければ幸いです。


はじめに|「マップは見たけれど…」で止まっていませんか?
ニュースで地震や豪雨の映像を見るたびに、「うちは大丈夫だろうか」と不安になる方は多いと思います。
その一方で、具体的に何から手をつけて良いかわからず、なんとなくハザードマップを眺めただけで終わってしまう…。
そんな声もよく聞きます。
内閣府の調査によると、ハザードマップを「見たことがある」人は57.7%にとどまります。(内閣府「防災に関する世論調査(令和4年)」)
さらに、避難場所や避難経路を家族で決めている人は、そこからさらに少なくなる傾向があるとされています。
つまり、多くのご家庭で、
マップを開いて場所を確認したところで止まっている
「とりあえず一度見たから大丈夫」と安心してしまう
というギャップが生まれている可能性があります。
この記事では、ハザードマップを「見たことがある」状態から、「家族の命を守るために"使えている"状態」に一歩進めることを目標にします。
次の3つのポイントに絞ってお話しします。
「安全地帯」は存在しない?ハザードマップの死角を知る
最短ルートが"最善"とは限らない理由
週末30分でできる「防災散歩(シミュレーション)」のやり方
「難しい防災の話」ではなく、週末の散歩や家族会議の延長で取り組める内容に落とし込んでいきます。
ぜひ、保存していただき、ご家族と一緒に読み返しながら使ってみてください。
第1章|「色がついていない=安全」ではない
1-1. ハザードマップには種類がある
一口にハザードマップと言っても、実はさまざまな種類があります。
たとえば、
河川があふれる「洪水」のリスクを示したマップ
土砂災害の危険箇所を示したマップ
地震の揺れや液状化の可能性を示したマップ
などです。
自治体や国のサイトでは、これらが別々の地図として公開されていることも多く、「どれを見ればいいのか分からない」という声が出やすいところです。
1-2. 見落とされがちな「内水氾濫」というリスク
特に見落とされやすいのが、「内水氾濫」というタイプの浸水リスクです。
外水氾濫:大きな川や用水路があふれて、周囲に水が広がる
内水氾濫:雨が下水道の処理能力を超えて、道路や住宅地に水があふれる
多くの人がイメージしやすいのは「川があふれる洪水」ですが、国土交通省は、都市部などで内水氾濫の危険性が高まっていることを指摘し、専用のハザードマップ作成を推進しています。
(国土交通省「内水浸水想定区域図(内水ハザードマップ)作成の手引き」)
また、水防法の改正により、2025年度末を目標に小規模河川の洪水浸水想定区域の指定完了が目指されており、今後ハザードマップの拡充が一層進んでいく見込みです。
舗装された道路や駐車場が多い地域では、雨水が土にしみ込みにくくなり、短時間で水位が上がりやすくなります。
川から離れた場所でも、雨が行き場を失うことで、床下浸水・床上浸水のリスクが高まる、というわけです。
1-3. 「今まで大丈夫だった」は通用しにくくなっている
気象庁のデータによると、1時間降水量50mm以上の短時間の強い雨の発生回数は、過去40〜50年でおよそ1.5倍に増加しています。
(気象庁「気候変動監視レポート2023」)
さらに、文部科学省と気象庁による最新レポート『日本の気候変動2025』では、短時間強雨の降水量が気温1℃上昇あたり約7%増加する可能性が示されており、この傾向は今後も継続すると予測されています。
これは、「自分が子どもの頃はここまで降らなかった」「前に住んでいたときは大丈夫だった」という経験則が、今の気候には当てはまりにくくなってきていることを示しています。

よくある勘違い
「この地域は昔から大きな災害がなかったから大丈夫」 → 実際には、雨の降り方そのものが変化してきており、過去の記憶だけで安心するのは危険です。
1-4. 「色がついていない=絶対安全」ではない理由
ハザードマップは多くの場合、「想定される最大規模の災害」を前提に作られています。
しかし、それはあくまで「現時点での想定」であり、
想定を上回る雨量
複数の要因が同時に重なるケース
インフラの老朽化や工事の影響
など、地図の外側にあるリスクも存在します。
そのため、本当に安全な場所を探すというよりも、
「どんな種類のリスクが、どの程度あり得るのか」を知り、「その前提で、どう備えるか」を考える
ための資料としてハザードマップを使う、という意識が大切です。
第2章|最短ルートが「最善」とは限らない
2-1. 紙の上では正しい「最短ルート」の落とし穴
多くの方が、避難所までの道順を考えるとき、 「一番近い道」「いつも通勤や通学に使っている道」を自然と選びます。
ただ、災害時には、次のような要素が重なります。
地震直後:ブロック塀や看板の倒壊リスク
豪雨時:冠水して側溝や段差が見えなくなる
夜間:停電で街灯が消え、足元が見えない
普段は問題のない細い道や近道が、非常時にはかえって危険になる可能性があります。
2-2. 危険になりやすいポイントの例
一般論として、次のような場所は、災害時にリスクが高まりやすいとされています。
古いブロック塀や石垣沿いの道
揺れで傾いたり、崩れたりする危険があります。
大きな看板・自動販売機・街路樹の多い道
強風や揺れで倒れた場合、通行を妨げたり、下敷きになるリスクがあります。
側溝や用水路のふたがない場所・段差の多い道
豪雨で水があふれると、足元の状況が見えず、転落する危険があります。
暗くて見通しの悪い裏道
夜間や停電時には、足元だけでなく、周囲の状況も把握しづらくなります。
避難ルートを考える際には、「最短距離」だけでなく、このような危険箇所の有無もあわせて確認しておきたいところです。
2-3. 家族の体力・年齢によって「安全な道」は変わる
小さなお子さんや高齢の家族がいる場合、階段や急な坂道が続くルートは、平時でも負担が大きいものです。
災害時にはさらに体力が奪われ、緊張や不安で普段よりも歩くスピードが落ちることが考えられます。
ベビーカーを押せる道か
車椅子でも通れる幅があるか
足元が滑りやすい場所がないか
こうした観点も含めて、「その家族にとっての安全な道」を考えることが大切です。
第3章|週末30分でできる「防災散歩」のすすめ
3-1. 机上の確認から「歩いて確かめる」へ
ハザードマップや地図アプリでルートを引くだけでは、実際の危険箇所をすべて把握することは難しいものです。
そこでおすすめしたいのが、防災散歩(シミュレーション)です。
防災散歩とは、
「実際に家族で避難所まで歩いてみて、危険になりそうな箇所や、時間・距離感を体感する」取り組みです。
特別な道具は必要ありません。
週末の散歩や買い物のついでに、少しルートを変えて歩いてみるイメージで始められます。
3-2. 防災散歩の3ステップ
ステップ1|ルートを2〜3本決める
まず、ハザードマップと地図を見ながら、避難所までのルートを最低2本考えます。
いつも使っている最短ルート
少し遠回りでも広い道・大通りを選ぶルート
川や崖沿いを避けるルート など
1本の道が使えなくなったとき、代わりの道があるかどうかが、その後の行動に大きく影響します。
ステップ2|実際に歩きながら「危険箇所」をチェックする
家族と一緒に歩きながら、次のポイントを意識してみてください。
古いブロック塀や高い塀の有無
大きな看板や自動販売機、電柱など、倒れると危険なもの
用水路や側溝、急な段差や細い路地
夜間に暗くなりそうな場所
車の交通量が多い交差点や見通しの悪いカーブ
気になる場所があれば、スマホで写真を撮ったり、地図アプリ上でピンを打っておくと、後から家族で共有しやすくなります。

ステップ3|家族会議で「もしもの時のルール」を決める
散歩から帰ったら、できればその日のうちに、簡単な家族会議を開きます。
一番優先するルートはどれか
そのルートが使えないとき、次に使うルートはどれか
家族が別々の場所にいるとき、どこで合流するか
夜間や雨のときはどうするか
こうしたルールを、紙にメモして冷蔵庫や玄関ドアの裏など、家族全員が目にする場所に貼っておくと安心です。

第4章|ハザードマップを「家づくり」と「今の暮らし」に活かす
4-1. 住まいの専門家が必ずチェックしているポイント
住宅の設計やリフォームを行う際、専門家は必ずと言って良いほど、ハザードマップを確認します。
洪水・土砂災害の想定エリアかどうか
浸水した場合の深さの目安
避難所までの距離と経路
こうした情報は、間取りの考え方や設備の計画にも影響してきます。
たとえば、
浸水リスクがある場合は、電気設備や給湯機の高さを検討する
土砂災害のリスクがある場合は、斜面側の窓の位置・大きさを慎重に考える
避難所まで距離がある場合は、自宅内で「一時的に安全を確保する場所」を設計する
など、設計段階でできる工夫があります。
4-2. すでに住んでいる家でもできること
すでに暮らしている家であっても、ハザードマップの情報を活かしてできる工夫は多くあります。
浸水想定がある場合
重要書類や非常用持ち出し袋を、床から高い位置にまとめておく
コンセントタップや延長コードの取り回しを見直す
地震リスクが高い場合
家具の固定状況を点検する
寝室や子ども部屋からの動線上に、倒れそうな家具がないか確認する
避難所まで距離がある場合
近所で頼れる人・情報交換できる人をリストアップする
自宅を一時避難場所として使う前提で、備蓄の場所や量を見直す
ハザードマップは「家を選ぶときだけの資料」ではなく、「今の家で安全に暮らすためのチェックリスト」としても活用できます。
おわりに|今週末、「防災散歩」を予定に入れてみませんか?
ここまで、ハザードマップと避難経路の確認について、
ハザードマップの死角と種類
最短ルートが最善とは限らない理由
週末30分でできる「防災散歩」のやり方
という流れでお話ししてきました。
ハザードマップは、ダウンロードして一度見るだけの「チェック項目」ではなく、
家族で話し合い、実際に歩きながら、「自分たちの暮らしに合わせた防災の形」を考えるための道具
として使っていただくのが良いのではないか、と考えています。
もし、この記事を読んで「一度ちゃんと見直してみようかな」と感じていただけたら、 まずは今週末、30分だけ時間を取って「防災散歩」を予定に入れてみてください。
ハザードマップを印刷するか、スマホに保存する
避難所までのルートを2〜3本考える
実際に歩いて、危険になりそうな場所を確認する
帰宅後に、家族で「もしものときのルール」を紙に書いて貼る

この4ステップができれば、防災の一歩としては十分すぎるくらいです。
こうした備えは、一度に完璧を目指す必要はありません。
思い出したときに少しずつ見直していくことが、いちばん現実的で続けやすい方法だと思います。
この記事が、みなさんのご家庭で「防災を話題にするきっかけ」になればうれしく思います。
この記事が役に立ったと感じていただけたら、ぜひ保存やシェアをしていただけると励みになります。
また、「うちの避難経路、大丈夫かな?」と不安な方は、住んでいる地域のハザードマップを見ながら、一項目ずつ一緒に整理してみませんか。
プロフィール欄から、お気軽にご相談ください。
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