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【小説】『人生ラーメン』| 第6話 待っとたんや、あんたが来るんを

2001年4月陽春の頃。
1人になった雨の日の午後。気持ちも天気も晴れずに悶々と過ごしていた。時折、メールで清美から「ごめんなさい」「もう一度、やり直したい」と来たり、雄司から「一度だけでも、会ってやれよ」と来たりした。さらに、自殺未遂までされた日には流石に驚いた。けれど、そうなればなるほど、気持ちは戻らない。「裏切り」だけは、許せない。

ある夜、雄司を行きつけの居酒屋に呼び出し、
事情を細かに説明した。

「それは、しゃあないな」
「清美ちゃんが悪いわ」

雄司は正義感が人一倍強いせいか、怒り出した。

「真希も真希やわ、俺も別れようかな」
「何でこんな大事なこと黙ってるねん! 」

と、彼女にまで飛び火が飛んだりした。
そもそも、清美の紹介で真希と雄司は付き合った。

「まあまあ、そこは関係ないやん」
「自殺未遂までされたのは驚いたけど」
「もう心は離れてるから……」

と、雄司に言った。
これで、雄司も真希ちゃんと一緒になって、「清美と復縁しろ」とは言わない。

家に帰る途中、TSUTAYAでビデオを借りた。「北の国から」を借りれるだけ借りた。
そして、家へ帰り、部屋を暗くして朝まで見続けた。富良野の雄大な景色、さだまさしの挿入歌が心にしみた。歌詞のないあの名曲。こんなに富良野に合う曲はない。まるで自分が、富良野の広大な景色の中に投げ出されているような気がした。内容は全然入ってこないが、なぜか涙が出てくる。一人でビールを飲みながら、横になり、一枚の風景画のように見続けた。

———

仕事は順調だった。
教える仕事も社会も子供も大好きだから、そこは問題はない。
しかし、家へ帰ると1人。急にやって来た喪失感と孤独な日常。そして、こんなときに限って、色々起こる。

止めていた駐車場で、車上荒らし。朝、車の鍵を開けると、既に開いている。CDデッキごとなかった。

会社で乗っているバイクでの事故。完全に相手が悪い。指示器を出さずに左折。そこに僕のバイクが突っ込んだ。派手に転んだ。お金の被害は少ないが、打ち身や捻挫で大変な事故だった。

加えて、清美の何度目かの自殺未遂……。今度は手首を切ったようだ。メールが何通も届く。

「ごめんなさい」
「今まで、ありがとう」
「さようなら」

返事は……できない。

私に不幸が連続で襲いかかってくる。
その後も、明け方まで「北の国から」を見る日々が続いた。そして、毎晩あの曲を聴き、酒を飲んでは涙した。

———

桜満開の4月の中旬、体調もすぐれない中、
体力不足もあったので、スタミナをつけに「人生ラーメン」へ昼飯を食べに行こうと前まで来た。定休日の札がかかっていた。定休日は水曜日のはず。今日は金曜日。不思議に思ったが、「おっちゃんも体調不良かな」と、気にしてなかった。

しかし、一度気にしだすと、明くる日もまたその次の日も……。
だんだん、本当に心配になってくる。

仕事が遅くなった一週間後の金曜日、深夜の1時ごろに人生ラーメンの前を通った。

———あっ、灯りがついてる!

小走りに走り、格子戸を引いた。

「いらっしゃい。あっ、あんたか」

「おっちゃん、ずっと閉まってたから心配したで」
「それより、今日何でこんな深夜に開いてるん」

「待っとたんや、あんたが来るんを」

とぶっきらぼうに答えた。 

「あんた帰りが遅いって言うてたから、開けてたんや」  

「……ありがとう、おっちゃん」
「カレー焼き飯できる? 」

「でけるよ」

鍋の音が、夜の静けさに響いた。


👉第7話 「玄人好みのカレー焼き飯」

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