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【小説】『ココロ走る』第二章:交わる足跡編 第15話 走りたい

 エコマラソンの翌日、有休を取った。ちょうどいいタイミングだった。昨日の坂道で足をやられ、とても歩ける状態ではなかった。

 今日は、普段から撮りためている動画の編集にあてることにした。昨日の写真は明美が撮ってくれている。まずはその整理から始めた。動画に編集すると、昨日のマラソンの記憶がありありと蘇る。我ながら、会心の出来だ。まさに究極の自己満足。その動画を、個人のYouTubeに限定公開でアップする。家族と共有し、ときどき会社で陽介にも見せたりする。
明日、会社に行くのが少し楽しみだ。

 案の定、翌日、陽介がデスクに寄ってきた。
「森山さん、マラソンどうだったんですか?」
「そうくると思って、動画に編集したで! ほら、見て!」
「すごいじゃないですか。完走したんですか?」
「タイムも60分切ってる。すげー!」
「おかげでもも裏、筋肉痛でしばらく痛いわ」

たわいのない会話だったが、コロナ禍の閉塞感の中で、会社が少し明るくなった気がした。

"完走"という言葉が、心地いい。

でも、これで終わりではない。そう感じた。
しんどかったけど、気持ちよかった。
それが、走るということ。
また、もっと走りたくなった。

陽介が、ぼそっと独り言のように言った。

「なんか、かっこいいな。俺も走ろうかな……」

聞こえないふりをした。
きっとここで「走ろう」と言えば、気のいい陽介のことだから「分かりました!」と即答するに違いない。

陽介が本当に走りたくなったとき、そのときは
一緒に走ってみたい———

誰かと走れたら、もっと前に進める気がする。
もっともっと前に———

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