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【小説】『ココロ走る』第三章:風を継ぐ者たち 編 第37話 KRT、ココロひとつに

 KRTメンバーが走る「大阪城チームラン」。淡路島玉ねぎリレーマラソンを目前に、それぞれの“ココロ”が、静かに、そして確かにひとつになっていく——。

———

 淡路島玉ねぎリレーマラソンまで3日を切り、メンバーたちは「やれることは全部やっておきたい」と焦りにも似た気持ちを見せ始めた。

金曜日は桐谷、陽介、水嶋がチームランに参加した。1キロを3回に分けて大阪城を走る。途中、豊国神社に参拝し、完走祈願をする。陽介は誠に信心深い。1番長く手を合わす。

さあ、本番想定の1キロランだ。

 天気は晴れ、空気も乾いている。こんな日は体が軽い。風を自分で、起こして切る。そんな感覚。息もしんどくない。よし、PB出してみるか!という気持ちで、蹴り足に力を入れた。

———4分15秒 PB更新!

実際のGarmin記録。全力でした!

やった!

流石に最後は、100メートル走並みに走った。息が苦しいが、気持ちいい。
この1本が今までのベストだ。

「はぁはぁ、ずるいですよ!急に飛ばし出して」
「大会前やから、控えめにって、言ってたのに」

と、20秒ほど遅れて到着した陽介が怒る。

「…っとに、ホンマですよ。中学のときの、『昨日勉強した? してない〜』詐欺ですよ! 」
と、上手く喩えた顔をした水嶋が言う。

「体が軽くて、思わずベストを狙ってしまった」
「申し訳ない」
と、軽く頭を下げる。

「やめてくださいよ〜」と笑う2人。

その、とき桐谷が、息絶え絶えに到着した。

「しんどーー! 」と桐谷が言う。

そう、この瞬間がたまらない。

走ってるときは苦しいが、走り終えた達成感や充実感はえも言えないほどのものがある。

1キロのインターバル休憩のとき、ふと

水を一口飲み、ふうっと息を吐いた桐谷が、ふと静かに口を開いた。
「森山さん、誘ってもらって……ありがとうございます」

「何を急に言いだすねん?」と私が言うと、その先の言葉を言う前に、

「オレも、前から言おうと思ってた」と、陽介

「急に、なんやなんや…」と私が茶化しに入ると、

「正直、何にも自信がなくて、水泳はできるんですが、走るとかも自信がなくて…。でも、こうやって、走り終わって休憩してるときに、『走って良かった』と思うんです」

水嶋が珍しく真顔で
「分かりますよ。僕も、走った後一日中しんどいかな?って思ったら、頭の回転もいつもよりいいし、体もキレてるんです。走って良かったです」と言う。

「ありがとう、何か訳の分からない間にチームできて、走らされてる気になってたら嫌やなって、思ってたから、本当に嬉しい」と私が言うと、

「走らされてるとか、そんな気はないです。目標があるんで! 」と陽介。
「な、桐谷! 水嶋! 」と、2人のお尻を叩く。

「何をするんですか」とムキになる桐谷、お尻をさすりながら次の攻撃に備える水嶋。私は微笑ましく、その光景を見ていた。


朝の陽光が若葉の間から差し込んでくる。

「淡路島が、俺たちを待ってる」

そう思うと、胸が少し熱くなった。さあ、いこう。KRT、いざ出陣だ——!

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