短編:「DESTINY LAND」
その夢の国に着いたのは、ゴールデンウィークが終わりかけた、ある朝のことだった。
入場口では、マスコットキャラクターが明るく元気な声で呼びかけていた。
《さあ、みなさん。DESTINY LANDへようこそ。アトラクションに入ったあとは、なにが起こるかわからないよ?Let's check your fortune!》
僕たちは一度は来てみたいと思っていた。そしてそれが今日だった。
「あれ?」
「どうしたの」
「ああ…いや、いま一瞬 DESTINY が DEATH にみえただけ」
前日からの薄曇りで、あまりパッとしない天気ではあった。
それでも僕たちは、ここに来ていた。
みんながみんな、愉しむためにいるはずだった。
僕たちはなるべく行列の少ないものから順番に、いくつか体験することになった。
ひとつ、気になるアトラクションがあった。
それは楕円形の白い建物で、出入口には『未来飛行』と書いてある。
入ってみると空間になっていて、明るい。
小さな四角い乗り物に乗って内部を回るのだが、なぜだか、あの「トロッコの話」が頭をよぎった。
何もしなければ五人が死ぬ
レバーを引けば一人が死ぬ
それから、僕たちは外に出た。
お腹が空いてきた。
ふと目についた、“W”の頭文字のバーガーショップで買うことにした。
「なんかさ、居心地いい?ここって」
「なんで?」
「聞いてみただけだよ」
◆
だんだん日も暮れてきた。
夕方からはパレードがあるらしかった。
やがて、夜に近づく闇がかった空の下で、光と音のイベントがはじまった。
哀愁のある曲が流れてきた。どこかで聴いたことのあるメロディーの気がしたが、思い出せなかった。
──そうだ。
彼女と出会った日にも流れていたはずだ。
あれは確か…、旅行先の店だ。
僕たちはお互いに一人旅の途中だった。
彼女は落とし物をした。
僕はすぐに気がつき、追いかけた。そしてなんとなくお礼も兼ねながらか、泊まっていた同じホテルのバーで、二人で飲んだ。
「なんか綺麗ね」
「え。ああ、うん」
「初めてって感じがしない」
「そうかな」
「あの光がね、なんか懐かしいの」
「曲じゃなく?」
「曲じゃないわ。光のほう」
目の前をカラフルな乗り物が通っていき、さまざまなキャラクターが手を振っていた。
「そう…。旅行先よ、確か」
「どの?」
「あなたと会った時の」
「光なんてあったかな」
「ちがう、たぶん星よ。一緒にみた」
「星」
パレードは終演に近づいていた。
僕たちはそれを眺めながら、なにも見てはいなかった。ただ二人でいた。
そして、通りすぎた夏のような花火が上がった。
《さあ、みなさん。そろそろおかえりの時刻が近づいてきましたよ。本日の DESTINY はどうだったかな?Let's play back!》
遠くでマスコットキャラクターの声が、霞んだ静寂のなかにひびいていた。
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