【連載】僕たちの正解はまだ途中:第1回「正論という鎧が、彼女を傷つけた日」
40代。
大手メーカーの現場で20年以上働き、それなりの責任とプライドを背負って生きてきた。
「正しいことを言えば、人は動くし、物事はうまくいく」
そう信じて疑わなかった僕の価値観が、音を立てて崩れたのは、ある日の彼女とのドライブ中だった。
「今それじゃないねん」に隠された温度差
その日、隣に座る彼女は体調を崩して少し辛そうにしていた。
心配でたまらなかった僕は、よかれと思って精一杯の「正解」を言葉にした。
「こういう時こそ、お互いに支え合っていこう。それが二人の未来のためやから」
自分なりに考え抜いた、誠実で前向きな言葉のつもりだった。
けれど、返ってきたのは感謝ではなく、絞り出すような一言。
「今それじゃないねん。大丈夫?とか、熱あるん?とか、そういうのがほしい」
絶句した。
論理(ロジック)で未来を語る僕と、感情(共感)で今を共有したい彼女。
僕は彼女を救おうとしていたのではなく、立派な正論を吐くことで、自分を安心させていただけだったのだ。
「見定め」の始まり
そこから、僕たちの間に小さな、でも深いズレがいくつも見えてくるようになった。
かつては勢いで結婚の話さえしていたけれど、あの日を境に、彼女の言葉が少しだけ慎重になった気がした。返信が少し遅くなった。笑い方が、どこか測るようになった。気のせいかもしれない。でも、僕には分かった。彼女は僕を、静かに「見定め」始めていた。
「これからのために、聞き方や話し方、自分軸と相手軸について勉強してみてほしい」
彼女からそう提案された時、僕は衝撃を受けた。
自分はちゃんとやっているつもりだった。
でも、愛する人から見て、僕は「学び直さなければならないほど、相手を見れていない人間」だったのだ。
僕は彼女を失いたくない一心で、一冊のノートを手に取った。
40代、不器用な男の「自分アップデート」の旅は、こうして始まった。
次回予告:第2回「『相手に合わせる』という名の思考停止」
「彼女の計画表を開いた瞬間、胃のあたりがぎゅっとなった。そこには、僕が一度だけ『行ってみたいな』と呟いた店の名前があった。僕は、彼女の話をちゃんと聞いたことが、あっただろうか……」
僕が旅行の計画表を見て震えた日の話をしようと思います。
あとがき
この連載は、完璧じゃない僕が、大切な人と向き合うために日々もがいている現在進行形の記録です。
もし、同じように「一生懸命なのに空回りしている」と感じている方がいたら、ぜひコメントで感想や皆さんの体験を教えていただけると嬉しいです。一緒に歩んでいけたら、僕にとっても励みになります。
