挟陣開発記 第17話|長すぎる終盤を変えるため、「終陣」を考え始めた話
※この記事は、盤上ゲーム「挟陣」を開発していた当時の記録です。
記事内には、現在の挟陣とは異なる検証用ルールや、最終的に採用しなかった案も登場します。
現在のルール説明ではなく、
「どう試して、何がダメで、そこから何を考えたのか」
という開発の過程としてお読みください。
2対2の94.784%が循環する
前回、第16話では、
石が2個対2個まで減った終盤について、
可能な状態を全部調べました。
その数、
706,860状態。
結果はかなり極端でした。
手番側が強制的に勝てる状態は、
36,368状態。
強制的に負ける状態は、
504状態。
そして、
双方が負けを避けながら動き続けられる状態は、
669,988状態。
割合にすると、
94.784%。
ほぼ95%です。
ここまで来ると、
「たまたま長い対局が出た」
ではありません。
2対2の終盤そのものに、長く続きやすい構造がある。
そう考えるしかありませんでした。
でも、手数制限には戻したくない
少し前まで、
挟陣には80手などの手数判定がありました。
でも、
80手で終わらせた対局をそのまま続けると、
後から勝者が変わるケースがかなりありました。
だから、
「長くなったら、その時点の数字で勝者を決める」
という方法には戻したくありません。
勝負がまだ続いているなら、
盤上で最後まで決めたい。
でも、
強いAI同士では2,000手を超えることがある。
2対2終盤の94.784%には、
循環できる可能性がある。
では、
どうするか。
ここで考え始めたのが、
終盤だけ少しゲームの性質を変える
という方法でした。
後に、
「終陣」
と呼ぶことになる仕組みです。
最初に考えたのは、もっと動けるようにすること
2対2でなかなか捕まらないなら、
理由は単純なのではないか。
普段の挟陣では、
駒は縦横に、
1マスまたは2マス
動きます。
ならば終盤だけ、
もっと遠くまで動けるようにすれば、
相手を追い込みやすくなるのではないか。
まずは、
この単純な考えから試しました。
3つの案を比較する
比較したのは、
大きく3つです。
A案
今まで通り1~2マス。
これは比較用の基準です。
B案
終盤だけ、
1~3マス
動けるようにする。
C案
終盤だけ、
縦横なら距離制限なし。
途中に駒があれば飛び越せませんが、
空いていれば遠くまで動けるようにしました。
感覚的には、
C案くらいまで動ければ、
さすがに逃げ続けるのは難しくなるのではないか。
そんな予想もありました。
ところが、ほとんど変わらなかった
2対2の状態を解析した結果、
循環可能領域は、
A案、
94.784%。
B案、
93.230%。
C案、
92.023%。
でした。
確かに、
動ける距離を伸ばすほど、
少しずつ循環領域は減っています。
でも、
1~3マスにしても、
93%以上。
直線ならどこまででも動けるようにしても、
92%以上。
思っていたような変化ではありませんでした。
「遠くまで動ければ捕まえられる」は違った
ここで一つ、
かなりはっきりしました。
問題は、
駒の移動距離だけではない。
相手も遠くまで動けるなら、
こちらが追いやすくなる一方で、
相手も逃げやすくなります。
自分だけが強くなるわけではありません。
お互いの自由度が上がる。
だから、
循環できる局面そのものは、
それほど減りませんでした。
C案までやって、
ようやく分かりました。
「もっと動けるようにする」だけでは、終盤の問題は解決しない。
しかも、挟陣らしい動きまで変わってしまう
もう一つ気になったのが、
ゲームそのものの感触です。
挟陣は、
縦横に1~2マス。
その限られた移動の中で、
相手を挟んだり、
あえて飛び込んだり、
次の強制捕獲を読んだりします。
ところが、
終盤だけ3マス、
あるいは盤の端まで一気に動けるとなると、
それまでとはかなり違うゲームになります。
長期戦をなくすために、
ゲームの基本的な動きそのものを変える。
これは、
少し違う気がしました。
1~3マス案も、無制限移動案も採用しない
検証した結果、
移動距離を変える案は、
最終的には採用しませんでした。
現在の挟陣でも、
終陣になったからといって、
駒が3マス動けるようにはなりません。
盤の端まで一気に走ることもありません。
終陣でも、移動は縦横1~2マスのまま。
ここは、
もともとの挟陣を残しました。
せっかく終盤を改善しても、
それまで遊んできたゲームと、
別物になってしまっては意味がありません。
じゃあ、何を変える?
移動距離ではダメでした。
でも、
2対2の循環問題は残っています。
ここで、
考え方を少し変えました。
「どこまで動けるか」ではなく、
「どこへ行ったら相手を取れるのか」を変えたらどうだろう。
移動の基本は、
今まで通り1~2マス。
でも、
終盤になると、
相手を捕まえる方法そのものが少し増える。
それなら、
挟陣の基本的な操作を壊さずに、
終盤だけ盤面を動かせるかもしれません。
この方向で、
もう一度ルールを考え始めました。
終陣は「駒を速くするルール」ではなくなった
最初に考えた終陣は、
単純に、
「終盤だけもっと遠くまで動ける」
というものでした。
でも、
調べてみると、
それだけでは循環領域はほとんど減りません。
A案の94.784%から、
無制限移動のC案でも92.023%。
ここまで試したことで、
終陣の方向が変わりました。
移動距離を増やすのではない。
盤面の中に、終盤だからこそ生まれる“攻める意味”を作る。
ここから、
現在の挟陣にも残っている、
終盤の新しい仕組みへつながっていきます。
失敗した案にも意味があった
1~3マス案。
直線無制限移動案。
どちらも、
最終ルールには残りませんでした。
でも、
この検証をしなければ、
「もっと動けるようにすれば解決する」
と思ったままだったかもしれません。
実際に調べると、
そうではなかった。
だから、
次の案を考えることができました。
挟陣を作っていて何度もありましたが、
採用しなかったルールも、次のルールを作るための材料になります。
今回も、
まさにそれでした。
今回分かったこと
2対2終盤の長期化を減らすため、
まずは移動距離を変えてみました。
通常の1~2マスでは、
循環可能領域、
94.784%。
終盤1~3マスでは、
93.230%。
直線移動無制限でも、
92.023%。
距離を伸ばすだけでは、
根本的な解決にはなりませんでした。
そして、
終盤だけ移動方法を大きく変えると、
挟陣そのものの感触まで変わってしまいます。
だから、
移動は1~2マスのまま残す。
次に考えるべきなのは、
移動距離ではなく「取り方」でした。
次回予告
終盤の駒を速くしても、
循環はほとんど減らなかった。
では、
相手の陣地へ踏み込むこと自体に、攻撃の意味を持たせたらどうなるのか。
ここから、
現在の挟陣にも残る新しい捕獲ルールへ進みます。
次回――「敵陣へ入ることを、攻撃に変えてみた話」
終陣の形が、
少しずつ見え始めます。
挟陣は現在、
Google Playでの公開に向けて準備中です。
まず遊び方を知りたい方はこちらから。
▼動画で分かる 挟陣の遊び方
そして、
「そもそも挟陣はどうやって作り始めたの?」
という方はこちらからどうぞ。
▼挟陣開発記 第1話|開発の始まりはこちら
