あの夢のことを、あのときのあなたはまだ知らなかったね。
正夢を見たことが、一度だけある。
妊娠がわかるよりもずっと前に、
双子の男の子のママになっている夢を見た。
あの日のわたしへ。
あの夢のことを、あのときのあなたは
まだ知らなかったね。
あれは未来からの、やさしい予告だったんだよ。
「双子ですね」と先生が言った瞬間、
あなたはびっくりして、思わず声を上げていたね。
喜びよりも先に、驚きがあふれて。
でも「きっと、あの子たちだ」と思ったでしょ。
その日から、買い物リストも、想像する未来も、
すべてがふたり仕様に変わっていったね。
世界が、ふたつ分の光を持ちはじめた瞬間だった。
そして「男の子ふたり」と聞いた夜、
あなたはそっと思い出していた。
あの夢の中で見た、笑って走るふたりの姿を。
名前の候補を並べて、服の色を考えて、
通りすがりの兄弟を見ては
「こんな感じになるのかな」と、未来を探してた。
少しずつ、あなたの心にも色がついていった。
いちばん悩んだのは、名前。
響き、漢字、意味。どれも大切で、どれも選びがたくて。
でもその悩む時間のすべてが、
ふたりへの「祈り」だったことを、いまのわたしは知っている。
ふたりの名前を並べて書いたとき、
あなたはもっと楽しみになったよね。
ああ、母になるんだなって。
あの夢を見た日も、
「双子ですね」と言われた日も、
名前を決めた日も。
どれも、あなたが「母になった日」だった。
生まれた瞬間だけが、はじまりじゃなくて
その前から、少しずつ母になっていたんだよ。
ふたりに出会う前から、
ふたりに育てられていたんだね。
あの夢を見た日から、
あなたはもう、母だった。
ありがとう、あの日のわたし。
あなたが信じた「未来の気配」は
ちゃんと現実になったよ
いいなと思ったら応援しよう!
読んでくださって、ありがとうございます。
余白の中に、そっと応援を置いていただけたら、活動費にさせていただきます。