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6月に読んだ本

6月の初めにオーディブルに加入したら、とんでもなく読書が捗った。
オーディブルで耳で聞く読書をしているうちに、紙の本での読書も捗るようになって、ウハウハしている。

久しぶりに1ヶ月で読めた本が10冊を超えたので今月読んだ本として感想をまとめておく。『セルフケア』を取り扱う小説に縁があったり、江戸川乱歩にはまったりした6月だった。

読了した本 12冊

♦︎【小説】イン・ザ・メガチャーチ(朝井リョウ)

本屋大賞受賞作をついに読んだ。
朝井リョウ作品を初めて読んだが、嫌な気持ちにさせてくる&人間観察の天才だと思った。
これが本屋大賞とったって!? みんなどれだけ嫌な気持ちになりたがっているんだ!!

登場人物たちは皆、共感できる部分もあれば、『おいおい……』と呆れるような気持ちにさせてくる部分もある。だからこそ彼らが堕ちていく姿は読んでいて自分がそうであるような、嫌な気持ちになる。

序盤の物語が動くまでの内面描写は純粋に読みづらい。なかなか乗れなかった。乗れたら面白いけどひたすら嫌な気持ちになる。
『そらお前、そんなことしたらそうなるだろ』の連続で、アッと言わせるような展開はほとんどない。人間観察が鋭いからこそ為せる技だろう。

お前が思う本質ってなんだ?
お前が冷笑する物事は本当に本質じゃないのか?
ほら、お前と、お前が冷笑するこいつらは一体何が違うんだ?
みたいな圧をひしひしと感じる。

作中で言う『視野』を強制的に狭くしたり広くしたりさせられている感じだ。
「へっ」と冷笑しながら読んでたら、突然共感できること・正論・納得できる理屈を言ってくるから怖い。

これが本屋大賞取ったって!? みんなどれだけ嫌な気持ちになりたがっているんだ!!??と思いながら最後まで読んだ。

面白かった。時間をあけて朝井リョウ作品チャレンジしたい。

♦︎【小説】魔性の子 十二国記(小野不由美)

かねてから読みたかった十二国記についに手を出した。エピソード0ということで、物語はまだ始まっていない感じがする。
それでも『魔性の子』だけでも、どんどん悪くなっていく状況があまりにも辛い。打ち手のない絶望的状況の中で高里と広瀬の絆にほっこりする。

誰も彼もが魅力的な人物。
その分、嫌な奴を嫌な奴に書く力もすごい。でも『いくらやな奴だってそんなのはあんまりじゃん!!』な目に遭っていく。

人が人であることはこんなにも汚い。
ってテクストが良かった。

引き続き十二国記読んでいく。

♦︎【小説】黒蜥蜴(江戸川乱歩)

宝塚歌劇団宙組公演を観劇したので、とても良かったので原作に手を出す。原作と宝塚版の間に三島由紀夫による戯曲版が挟まるらしいという知識のもと読み始める。

明智小五郎名探偵に初めて触れた。年齢の設定がよく分からないけれど、イケおじとして脳内補完。
人物から受ける印象は原作と宝塚版でそれほど変わらない。雨宮潤一を除けば。
原作の雨宮の方がキャラが立っている気がする。宝塚版では二番手さんの役だったが、原作ままの方が二番手さんっぽい感じがしたのだけれどそんなことはないのかしら。この改変は、宝塚によるものなのか三島由紀夫によるものなのか。

明智小五郎、名探偵のわりに結構危ない橋渡りすぎな気がするのは気のせいだろうか。無茶するなぁ!失敗したらどうすんの!?みたいな気持ちになる。
黒蜥蜴の複雑な心情のわりに名探偵の心情はあまり見えてこないのがなお良い。かっこいい。ミステリアス。

軽快さ、おどろおどろしさ、エログロ描写、昭和初期?ごろの日本の華やかさと闇。
江戸川乱歩の世界に魅了された。

♦︎【戯曲】黒蜥蜴(三島由紀夫)

満を持して三島由紀夫による戯曲『黒蜥蜴』を読む。
宝塚版で『詩的〜〜!!』とメロついたセリフは全部三島版の段階で加筆されていた。通りで詩的で美しくてじっとりしていると思った。さすが三島由紀夫。

あと雨宮の改変は全部三島によるものだった。
死にたがっている者の美しさみたいな描写を入れたかったのだろうか。生と死の対比として。そこで雨宮が抜擢されたのだろうか。
松吉に雨宮の見せ場がだいぶ食われている印象だった。乱歩の原作の雨宮の方が好きだな。三島版の雨宮はヤンデレみがあってそれはそれでメロい。乱歩の雨宮はヤンチャな感じだった。可愛い感じだ。人殺しだけど。そこを黒蜥蜴に弱みとして握られているのも含めて犬っぽかった。

とにかく雨宮の改変が気になる。
三島によるセリフが詩的で良すぎる。昔『金閣寺』や『春の雪』を読んだけれど、また読み直してみたい。

♦︎【小説】BUTTER(柚木麻子)

世界的大ヒット作に手を出す。世界でベストセラーになるの分かるな。

ケアの問題がトレンドなんだろう。
セルフケア、ゆるやかな連帯を描いていて、それにまつわる女性性/男性性への洞察、男性らしさ/女性らしさからくる生きづらさとか、セルフケアのジェンダーによる差異とか。
面白いというより示唆に富んでるなあと思う。
『イン・ザ・メガチャーチ』にもケアの問題は出てくるけど、よほどみんな関心を寄せている話題なんだろうな。

『イン・ザ・メガチャーチ』『魔性の子』とどんどん悪い方へ向かっていく話を立て続けに読んでいたから、この作品も最悪のエンディングを迎えるのかとハラハラしながら読んでいた。そこそこほっこりな終わり方で、安心した。

もうこれで展開としては終わりかな、と思ってもまだ続く。食事シーンと料理シーンが長くて多い。途中ちょっと飽きてきていた。
でも全体としては面白かった。また読み返したい。

♦︎【小説】D坂の殺人事件(江戸川乱歩)

『黒蜥蜴』でまんまと江戸川乱歩にはまったので、明智小五郎が出てくる作品を順番に読んでいくことに。
トリックが、展開が、心理描写が、面白いというよりは『明智小五郎かっこいい〜』って感じだった。あと、語り手もいいキャラしている。
殺人の動機はそれでいいんか!?と思った。案外エログロ。

江戸川乱歩の文章の明朗快活な感じがとても好き。

♦︎【小説】心理試験(江戸川乱歩)

引き続き明智小五郎。
犯人とその方法が最初にわかっている倒叙ミステリだった。
引き続き明智小五郎がかっこいい。

♦︎【小説】アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(フィリップ・K・ディック)

サイバーパンクを読むのはこれが初。
『人間ってなんだろう?』がテーマっぽい。同族以外へのエンパシーがあるかないかが重点置かれている感じがする。

サイバーパンクの金字塔なだけあって、設定とか、展開がいい意味でどこかでみたようなものが多い。後世に模倣されまくってる。面白さの証。

近未来の描写に時代を感じる。
映話に交換手がいたり、娯楽がテレビしかなかったりと近未来描写にえもいわれぬレトロさがある。なんか良い。
あと当時の核戦争や冷戦に対する恐怖が伝わってくる。

造語や独自ガジェットの説明をほとんどしないのに世界観で押してくる。見た目とか使い方とか説明ないけど日常描写で想像がつく。

面白かった。

♦︎【小説】アルゼンチンババア(よしもとばなな)

初よしもとばなな作品。ゆる読書会ラジオ課題本。

不思議な大人が孤独な子どもの助けになってくれる『西の魔女が死んだ』と同じような感覚になる。

よしもとばなな、汚いものの描写がうますぎる。
アルゼンチンビル絶対入りたくない。でもそこが不思議と魅力的。汚さの中で見出される温かいもの、素敵なものが詰まっているからかもしれない。
読書会で『世界は変わりゆく。諸行無常。でもアルゼンチンビルは変わらないという対比を描いているんじゃないか』っと言われてハッとした。曼荼羅と、人間の願いのくだりもとても印象的。仏教要素の入れ込み方に納得。

奈良美智の絵が可愛い。

ほっこりする、あたたまる、童話みたいなお話。

♦︎【人文】会話の0.2秒を言語学する(水野太貴)

ゆる言語学ラジオ、水野さんの本。
いい意味で物足りない。言語学の入り口の門にやっと辿り着いた感じ。もっと知りたくなる。

やっぱり好きなことを突き詰めた人というのは面白い。水野さんみたいに話せる/書けるようになりたい。

♦︎【人文】物語化批判の哲学 <わたしの人生>を遊びなおすために(難波優輝)

物語批判、ゲーム批判、パズル批判、ギャンブル批判と続いて最後はおもちゃ批判の哲学。

SNSで『イン・ザ・メガチャーチ』と一緒に読むといいという人が多かったけど確かに納得。
物語にのめり込んでいく人間や、物語というフォーマットでしか自己も他者も理解ができない人間に対する批判に満ちている。
その後、ゲーム、パズル、ギャンブルと批判は続くけれどどれも頷くところの多いものばかり。
語り口の割に読みやすい文体。なぜだろう。

一回読んだだけでは落とし込みきれなかった。再読必須。

♦︎【短歌】夜なのに夜みたい(岡野大嗣)

帯に書かれた短歌

アディショナルタイム あなたが雑踏に紛れて粗い画素になるまで

に心をぐわっと掴まれて、歌集を読む。

『改札前でお別れして、見送って、姿が見えなくなるまでの余韻』だと解釈しているけれど、実際のところはわからない。

歌集の他の歌もみんな良かった。

名歌と言われる短歌とそうでもないものの何が違うのかを最近考えている。何かのフレーズを導出するための喩えが31音の大半を占めてしまう短歌にはあまり心惹かれない。逆に『アディショナルタイム』のように言わんとすることが伝わってくる表現を持ってこられると説明的にならない。

ということは一般的に言われているだろうけれど、ここの違いと感覚を自分の中に落とし込みたいと思いながら、岡野さんの世界観に浸った。

△【人文】プラネタリア(佐藤航陽、渡邉賢一)

本当に申し訳ないことに、4割くらい読んで挫折した本。
プラネタリア(地球人として生きる)という考え方には共感していたが、『物語』に対する考え方が議論が周回遅れのように感じてしまった。

国境やさまざまな枠組みを外して、地球人として生きることを提唱しているようだけれど、提唱されている社会構造の中に貧乏な人をはじめとした弱者が見えてこない。あまり実践的な内容だとは思えなかった。いや、実践的な内容じゃないことはいいとしても、理想像としても不完全な気がする。
空想的社会主義者を批判したマルクスの気持ちになれるかもしれない。

なんでこんなに絶賛されてるんだろう。レビューを読んだけどあまりピンとこなかった。
読んだ方、どなたか『もう少し先まで読めば実践的な内容になるよ』などのポジティブな感想を教えてほしい。


ここからは今読んでいる本を並べていく。

読みかけの本

♢A Little History of Philosophy(Nigel Warburton)

読みやすい英語で書かれた哲学史の入門書ないかなと思って探していたらあった。ギリ辞書なしでいける。
網羅性は低いけれど、英語で哲学史をざーっと見るには良さそうで、ぼちぼち読んでいる。
以前『いっきに学び直す教養としての西洋哲学・思想』を読んで、同じレベル感でもう何冊か読みたいと思っていたので、この本がものすごくちょうどよくニーズを満たしてくれている。

♢若い読者のための経済学史(ナイアル・キシティニー)

A little history of philosophyのシリーズの経済学史の邦訳。
いろんな文学作品を引用しながらその時代時代の空気感と共に経済学史を概覧できる。

西洋思想・哲学の入門書を読んだら、経済学も知りたくなって読み始めた。邦訳も結構読みやすい。

♢春にして君を離れ(アガサ・クリスティ)

冒頭で、主婦の主人公が『家族がうまく回っているのは自分の手柄』みたいに語っているあたりで一旦休憩中。大丈夫か?悲しい目に遭うんだよね?とハラハラしてしまって心の準備中。

♢本とは何か(難波優輝)

『物語化批判の哲学』の著者の新作。
ものすごく発見が多い本。読み進めている真っ最中なので、すぐ読み終えられそう。

♢創作者のための読書術

翻訳の問題なのか、元の文の問題なのか、やたら読みづらくて、何度も中断しながら読んでいる。
サンクコスト効果のようなものでなんとしても読み通したい。

♢世界が問いであるとき答えるのは私だけ(谷川俊太郎)

ぱらぱらとめくっては、読むのがもったいなくて本棚に戻している。美しい言葉を最大限楽しみための読み方を知りたい。

♢なぜあなたの感想は普通なのか 独自の視点で語る技術(大島育宙)

平易な文で読みやすい。
本当はこの記事書く前に読み通したかったけど、6月が終わってしまったので、叶わず。


6月は以上の本を手に取った。

買った本は他にもまだある。積読が解消される日は来るのだろうか。

7月が終わったらまたこうした記事を書きたい。

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