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​うつ病患者しか知らない日常の毒と薬




季節の華やぎが刃に変わる時


​ 朝の情報番組が始まる頃には、眠気が疲れたまぶたを下ろそうとした。

​ 「やっと眠れる……」

​ 『さて、ゴールデンウィーク前半は絶好の行楽日和となりそうでーー』

​ アナウンサーの言葉に、指が反射的にテレビをオフにした。そのままベッドへ潜り込み、今日も眠れない一日が始まる。


※ここに記す内容は、あくまで私個人の経験に基づくものであり、医学的根拠や正規の医療的見解を示すものではありません。治療や判断にあたっては、必ず専門の医療機関の指示を優先してください。 

 世間で言われる鬱の症状というのは、根を見て枝葉を見ていないのと同じで、苦痛のほとんどは言語化されていないんだよ。しかも、幹から枝分かれした苦痛は患者の数だけ別の症状を見せる。

    これを私の主治医は「個性」と呼んでいるけれど、全く同じ症状で悩んでいる患者はいないんです。だからね「死にたいと口にしなくなったから快方に向かっている」とか「食欲がないから悪化してる」なんて勝手に判断しちゃあいけないよ。

​ しかし、あまり知られていなくても、多くの患者に共通した症状というものもあります。


​祝祭日の「光」が照らし出す孤独



​ うつ病患者の気分が沈んでしまう時期というのがあるのはご存知かな。

​ それはね、正月、桜の季節、ゴールデンウィーク、夏休み、ハロウィン、それとクリスマスだ。普通は逆だと思うだろう。めでたい日や気分が高揚する時期ばかり。気分が沈む余地などないと思われてしまう。

​ でもね、未来に一点の光すら見えない患者は、これらの時期を迎えると社会との乖離をより強く感じてしまう。「自分はこれほど辛いのに、皆はこの世を謳歌せんとばかりに楽しんでいる。こんな不公平が許されていいのか」ってね。だから、テレビの中継もネットニュースも見ていられなくて、ベッドに一人避難するんだよ。

​ それでも、それはそれで「皆は季節のイベントを楽しんでいるのに、外に出ることすら辛い自分が情けない」と一人の世界で自分を責める。ほら、本人に非はないのに自分を責めてしまうのは鬱の症状でしょう。

​ でも、これはイベントという情報から本人を避難させ、悪い波が凪ぐのを待つしかない。周囲の人には、この期間は本人に不要な声掛けをしないことを徹底することをおすすめする。患者が能動的に外に出るのはいいけれど、そうでなければあれこれ楽しませようなんて思ってはいけないよ。


​一億円という名の特効薬

​ 
「一億円あれば鬱は治るんだよ」

​ これは、うつ病を抱える友人との冗談だ。

​ 冗談だけどね、治療の本質でもある。ほかのうつの知人と話しても皆、首を縦に振る。

​ うつで気分が沈んだときに、大きな不安の要素に「金銭面」の心配があるからだ。特に、親元を離れた学生や社会人、夫婦共働きの家庭は、笑い事じゃあない。働いていて手当が支払われても、鬱の治療は寛解までが長い。そもそも鬱というのは「心が壊れるまで働いた代償」であり、患者は社会への不信も拭わなければ治らない。治療は数年単位と考えて、半年、1年で職場復帰できれば御の字と思い支えるべきだ。

​ それでも、単身世帯だと家賃や光熱費だけでも負担が大きい。


​ そんなときはね、可能な限り家族が支援してくれることで、どん底から抜け出すのも早くなる。その後で、実家へ帰る話し合いなどをすればいい。働けないからすぐに実家に戻れとなれば、必ず悪化するよ。住み慣れた場所で社会から隔離されていた方が患者はなにより安心するんだよ。

​ 健常者だって住み慣れた家を引き払って、すぐに新しい生活に慣れるわけじゃあないでしょう。

​ 可能な限り、という前提にはなるが、お金の心配が緩和されるだけでも気持ちが上がるんです。

​ あとはね、患者本人が回復してきて買い物に行きたいと思うようにでもなったら、いくらか包んでね、それで気分転換してきなさいと背中を押してあげるのもいい。世知辛いけどやはりどんな病気もお金の心配がなければ、心の負担が大きく減るものですよ。


不安を増幅させる心の鏡


​ どちらの問題も「言われればそうか」と思うかもしれない。しかしね、本人はこれらのせいで健常者の何倍も不安が大きくなる。一年を通してすべてのイベント時期は休日なしで働けと言われたら納得できないでしょう。そんな「楽しみたくても楽しめない」日々を患者はずっと生きているんだ。

​ お金だってね、例えば「家賃と光熱費を払ったら毎月1万円しか残らない」、それほどの絶望に感じるんです。

​ いずれにせよ、鬱というのは「不安ばかりを極端に増幅させる心の鏡」だと思って下さい。それでも、今回はまだ理解しやすいテーマにしたほうだ。反響があればまた何か書きたいと思う。


↓申請しておきたい障害年金の話です。


↓うつ病患者の周囲に知ってもらいたいこと①


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山下静希 自分の記事の価値を知りたいと思っています。 いただいたチップで一杯の美味しいコーヒーを飲ませていただきますので、応援よろしくお願いします。