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うつ病患者の周囲の人に知ってもらいたいこと②

​ 「何か食べないと本当に動けなくなるわよ」

 ベッドから出られずにいると、ドアの向こうで母の声がした。

 誰かの声を聞いただけで、どくんと心臓が跳ねて痛む。

 食べないのではない、食べられないのだ。食べられないから動けないのではない。動けないから食べられないんだ。

 やはり、分かってなんかもらえない。



​ 以前、私は「うつ病患者の周囲の人に知ってもらいたいこと」という記事で、鬱で動けないときは返事すら精一杯になるため、本人には極力干渉しない方がいいと書いた。これはその続編であり、前作へのアンサーでもある。

※ここに記す内容は、あくまで私個人の経験に基づくものであり、医学的根拠や正規の医療的見解を示すものではありません。治療や判断にあたっては、必ず専門の医療機関の指示を優先してください。


どん底の時期の食事

​ うつ病のどん底は、インフルエンザで40度近い熱を出して寝込んでいる状態に近い。何も考えられないほど辛く、眠っているときだけが唯一、その苦しさから逃げられる。

うつ病患者の周囲の人に知ってもらいたいことより


​ しかし、家族にしてみれば心配するなというのも難しい。だから、患者のために食料を用意するだけでも助けになるんだよ。本人が夜中にふらりと起きてきて、誰とも顔を合わせずに食べられるものがいい。顔を合わせると何かしら会話をしなければならないが、鬱のどん底で話すことなどありゃあしない。

​ 食料は決めた場所にまとめて置いておく。メモでどこに何があるか教えるのがいい。例えば、経口補水液(OS-1など)、inゼリー、レトルト粥、アイスクリーム、カップスープなどの胃に優しいものだ。洗い物もさせてはいけないよ。食べ終えて汚れ物があれば、シンクに置いておくようにメモに書いておかねば。  

これだけでも食事という、患者には大きな負担が減りますよ。


 

自傷と過量服薬への構え

​ 手首などを傷つけるカットや、薬を一度に大量に飲むOD(過量服薬)も、無理に止めない方がいいと書いた。自分に痛みを与えることで、一時的に鬱の苦痛を緩和しているからだ。

 その考えは変わらないが、これも心配するなという方が無理なのも分かる。ならば、事後のことを考えようじゃないか。

​ まず、常習的に浅くカットしてしまうのであれば、消毒液と5cmほどの切り傷が隠れる大判の絆創膏を患者の部屋に置いておく。本来はガーゼがいいけれど、一人で処置するには絆創膏しかない。本人もカットはしたいが、その後でベッドを汚すのは本意じゃあないんだよ。


​ ODは少々難しい。本来であれば覚える前に止められるのが理想だが、繰り返すようなら対処という方法しかない。もし、大量の薬の空シートと眠っている患者を見付けても、焦っちゃあいけないよ。事前にお薬手帳と薬のシートを照合して、どんな薬が処方されているのかを把握しておくのがいい。それが分からなくても空シートを集めて何錠飲んだのかを調べてから、病院へ電話をして医師の指示を仰ぐ。薬を何錠くらい飲んだかだけでも、医師には貴重な判断材料になるんです。

​ 現在の向精神薬の多くはかつてのものに比べて安全性が高く、数十錠で即座に命に関わるケースは以前より減っているという医学的な傾向もあるので、まずは落ち着いてください。


 いきなり救急車を呼ぶのは心理的ハードルが高い。でも、一刻も早くどうにかしたい時は、#7119(救急安心センター事業)に電話をすれば、救急車を呼ぶべきか迷ったときに専門家が判断してくれる。

 あとは、事前にAIで対処方法を確認するのもいい。医学的判断は不可能だが、色々な状況を想定したアドバイスはためになる。おすすめはGoogle検索とリンクしていて最新の情報を提供してくれるGemini(ジェミニ)がいい。でもね、必ずしもAIが正しいとは考えずに、参考程度と思わなくちゃあいけないよ。


 もしODを防止するのであれば、処方薬を「一包化」するのがいいね。飲むタイミングごとに薬をビニールの小袋でまとめてもらうんです。医師や薬剤師と相談して一包化してもらい、これを家族が管理すれば、日付や「朝・昼・晩」の印字で「いつの分がないか」が一目瞭然となり、患者が薬を抜き取りにくくなるんだよ。

​回復期の「静かなる予兆」


 ベッドから起きられるようになり、行動範囲が広がり始めた時期には別の注意が必要だと以前に書いた。身体は動くが、心はまだ不安定である。この段階では、衝動的にふらりと姿を消すことがあり、絶対無事に帰ってくるという保証もない。

 これは自分の意思でどこへでも行けるということだ。「駅のホーム」「交通量の多い通り」「高所」など、これがどういう意味か分かるでしょう?

​ 体は動けても、心が依然として「消えたい」と強く願っている時期というものがある。私の経験では、無意識にホームへ滑り込んできた電車に吸い込まれるように体が動き、すんでのところで我に返ったこともありましたよ。

​ これはもう予防しかない。本人が急に明るくなったように見えても、どこか作られた笑顔に感じる、そんな違和感があればそれは「計画」を隠しているかもしれないし、饒舌なときもカモフラージュと考えていい。もし外れても、それは嬉しい外れじゃあないか。

​ あとはね、外出時の持ち物をチェックするのがいい。


 バッグ、スマホ、財布が揃っていれば「計画実行」の可能性は低い。そこから、スマホと財布だけ、スマホと財布のどちらかだけ、手ぶらというように可能性は高まるんだ。荷物というのは目的に合わせて持つのが当たり前でしょう。それが少なくなれば、その荷物は「目的」に必要ないということになるんだよ。

​知られていない、知ってもらいたいこと

​ ある人に「うつ病患者の周囲に知ってもらいたいこと」をもっと具体的なパターンを例にして深掘りしてみては、とアドバイスをされて筆を執ったが、いやはや考えていた以上に書かねばならないことばかりで参ってしまった。しかも、これでも各章で書きたいことを大きく削っている。

​ 患者の目線で周囲の人へのメッセージを書くなら、一冊の本にはなるね。それほど「知ってもらいたいのに知られていない」ということは多いんです。

​ この記事が少しでも参考になれば嬉しく思います。




↓①になります。





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山下静希 自分の記事の価値を知りたいと思っています。 いただいたチップで一杯の美味しいコーヒーを飲ませていただきますので、応援よろしくお願いします。